STAGE3

研究員の森

生活総研の研究員による調査データを元にしたコラム

こんにちは。「子ども調査」の対象年齢だったのは今から20余年前…上席研究員の三矢です。今回のコラムは「子ども調査」の一環として行った「未来の道具調査」を題材にお届けします。

この調査は子どもたちに「未来の理想の道具を自由に作ることが出来るとしたら、どんな道具がほしい?」と質問し、解答用紙に自由に道具の絵を描いて、その名称と機能の説明を書いてもらうもの。どんな道具を考えるのかと楽しみにしていたのですが、結果を見ると実に多種多様、ユニークな道具のアイデアが集まりました。用紙一枚一枚から子どもたちの色々な思いが見えてきて、ずっと眺めていられそうな気がします。

本当は道具一つずつ紹介したいのですが、さすがにそんなわけにも行かないので…(笑)、気になった点にポイントを絞ってお伝えしようと思います。

気になったこと①:発想にもデジタルの影響

道具の形態・機能を見ていると、デジタルデバイスが身近な「タダ・ネイティブ」らしさを随所に感じられ、興味深いものがあります。以下、一例を紹介しますと…

「タブレット鉛筆」(小5・女子)
タブレットに入力した字を、付属の鉛筆が自分がふだんかく字と同じように、紙などに文字を書いてくれる。色鉛筆もあるので、すごく万能。
※道具の説明は子どもの文章をそのまま生かしています(以下も同様です)

自分がタブレットで入力した文章を、道具が鉛筆書きしてくれるという発想。
どちらの方法が彼女にとって身近で楽なのか、意識が垣間見えます。

「ジッサイカメラ」(小4・男子)
人がそのどうがなどをみると、そこにいくときボタンをおせばじっさいにいけます。かこにももどることができるので、あえない人などにもあえます。

「行きたい場所に行ける道具」のイメージ。我々であれば、「どこでもドア」となりそうなところですが、彼の発想は「端末で動画を見て、行きたい場所を選択する」。これもデジタルデバイスの身近さを感じさせます。

「プロフェッショナルメモリー」(中2・男子)
体にメモリーを入れるとそのメモリーに書いてあることがプロ並みに上手になる。

「能力強化=USBのようなメモリーを挿して、必要な力をインストールする」というイメージでしょうか。最近の特撮ヒーローやゲームでもこのような形の能力強化の描写は散見され、その影響もあるのかもしれません。

「ネットの守護神」(小6・女子)
ネットに関係するトラブルを解決してくれる スマートフォンなどにある個人情報を守る道具 みためのがらはたくさんある

「大人こそ、こんな道具がほしい!」と思ってしまいそうな「ネットの守護神」。デジタルに身近であるがゆえ、ネットにまつわる悩みとも無縁ではない「タダ・ネイティブ」たち。柄が色々選べるというのが女の子らしいですね。

気になったこと②:制約条件

今回道具を考えてもらうにあたり、上述のように「自由に作ることが出来る」と、特に条件は設けなかったのですが、道具の説明を読むと「これこれができる。ただし・・・」という具合に、何らかの「制約条件」のついた道具の多さが気になりました。一例を挙げますと・・・

「満点pen」(中1・男子)
一回書いただけで何でも覚えてしまう。でもいたずら書きをしたらそれも覚えてしまう。試験前に一度書くと覚えられる。まちがえた字をかくとそのまま覚えてしまう。

何でも覚えられる便利さと裏腹に、いたずら書きや間違いも覚えてしまうという制約が。
ミスの多いうっかり屋さんには、逆にリスクの方が大きそうなペンです。

「大好きボックス」(小5・女子)
外から見ると、ふつうの箱だけど、その箱の上で、ほしい物やとってきたい物の名前と説明を箱の上で指で書くと、名前と説明にあったものが箱の中にいつのまにか入っている。ただし、その箱の大きさで、たのめる物が決まって、1ケ月に1回までしか使えない。10円で使えて、その10円は親にとどく。

こちらは1ケ月に1回までという回数に制約があるパターン。費用の10円が親に届くとしているのも興味深いところ。

「巻き戻しコンパクトボックス」(中2・女子)
普段は消しゴムほどの大きさの箱が、使うときに付属のボタンを押すとあるていど大きな箱になる。その箱の中に、どうしても直してほしいものを入れて決定ボタンを押すと、良かった状態の時に直してくれる。ものだけではなく、人間関係や、病気、家、なくしてしまったもの、紙に書いて箱に入れれば元にもどる。(良い状態にもどる)。ただし、7回しかつかえない。つかいおわると無くなってしまう。

本当にあったら実に便利な道具ですが、こちらも回数制限あり。「7回」という具体的な数字にこめた思いは何なのか。

「∞財布」(小6・女子)
名前のとおりに無限に金がでてくる財布。でも、財布の有効期限は一カ月のみ。(永久にだと色々と問題がおきそうだしね!!)

こちらは有効期限つき。「色々と問題がおきそう」・・・まったくその通りです!(笑)

「制約条件」のついた道具から感じるのは、現実をクールに受け止めている子どもたちの姿です。デジタルデバイスを使いこなし、インターネットを通じて様々な情報に接している「タダ・ネイティブ」。子どもだけの世界に閉じておらず、世の中との接点を多く持つ彼ら・彼女らは、「現実はいろいろなことがある」「世の中うまくいくことばかりではない」という認識を、かつての子どもたちよりも持ちやすいのではないかと考えられます。そんな意識が、道具の制約という部分に滲み出ているような気がして、興味深く感じられるのです。

いかがでしょうか。ここで紹介した以外にも、興味を惹く未来の道具は盛りだくさん。特設サイトTOPページの「本日の未来道具」にて日替わりで更新している他、「未来道具博物館」で一覧できるようになっておりますので、気になった方はぜひアクセスしてみてくださいね!

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