みらいのめ

さまざまな視点で研究員が「みらい」について発信します

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2018.05.17

第19回

宮城の高校生は、みらいのめ。

from 宮城県

生活総研 客員研究員
東北博報堂

武田陽介

いま、高校生が熱い

突然ですが、みなさんは、どんな高校生活を送ってきましたか?自分は、とにかく毎日ハラペコで、ろくに勉強もせず部活に明け暮れ、失恋して丸坊主にしたり、自転車を4回も盗まれたり、罰ゲームか何かで某ハンバーガーショップの店員さんに「スマイルください」と言って困らせたり(ちなみに「売り切れです♪」と返されました)・・・とにかく、くだらなくて、痛くて、いま思い出しただけでも顔を赤らめて、恥ずかしくなってしまうような日々を過ごしてきました。そんな自分と比べるのはお門違いかも知れませんが、いまの高校生って次元が違うと思うんです。スマホであらゆる世界とつながれるし、海外旅行だって当たり前に行く。選挙権だってあるし、中には起業する強者だっています。そんな進化系10代の凄さを、目の当たりにした瞬間がありました。それは、「河北みらいプロジェクト」という事業に参加した高校生たちを見てのことでした。

河北みらいプロジェクトとは

まずここで、「河北みらいプロジェクト」について簡単にご紹介させていただきます。このプロジェクトは、宮城の新聞メディア・河北新報社と博報堂DYメディアパートナーズ&東北博報堂が共同で立ち上げた事業で、高校生が企業の協力を得ながら、地元・宮城の地域課題に向き合い、自分たちにできるアクションを展開するというもの。地域課題に対峙する中で、高校生の知識やスキルの向上を促し、地域の未来を担う人材の育成を目的として2016年度からスタートしました。

このプロジェクトでは、これまで様々な地元企業とのコラボレーションを実施しており、私は昨年の10月から今年の3月まで、若者の米離れを食い止めるために「おにぎり」をフックとした高校生のアクションを農業系の企業とサポートしました。参加した高校生が経験した、“学び”→“企て”→“実行”のプロセスは、大人でも難しいと思えるようなカリキュラムでしたが、悩んだり、もがきながらも、オリジナルのおにぎりを開発し、販売・配布まで走り切った生徒たちのチームワークやポテンシャルには、本当に脱帽でした。

そこで、このプロジェクトに参加してくれた高校生が、プロジェクトに参加して何を感じたか、みらいに向けてどんなことを考えているのかとても興味がわき、インタビューすることにしたのです。取材に協力してくれたのは、仙台二華高校の斎藤萌佳さん・横田りかさん、東北学院高校の齋藤優太郎くん・西口新之助くんの4人です。


左:仙台二華高校 作 (受験応援!さくらにぎにぎ) 右:東北学院高校 作 (学ランにぎり)

教室の外で高校生が手に入れたものとは?

― まず、「河北みらいプロジェクト」に参加した感想を聞かせてください。

萌佳さん:おにぎりのレシピを考える過程も濃密で、それが売切れたこと、見た目や味を褒めてもらえて、取り組んだ意味があったと実感しました。
りかさん:私は、パッケージを担当したんですがイメージ通りにできて嬉しかったです。それに、お米には脳を活性化させる働きがあることを知り、朝、ご飯を食べるようにもなりました。
優太郎くん:募集したおにぎりのアイディアを食堂の方の協力を得ながらカタチにして、野球部のみんなに食べてもらったんですが、「おいしい!」と言ってもらえてうれしかったです。
新之助くん:アイディアを出し合うのが楽しくて、会社でもこんな風に企画を出しているのかな?と社会人を疑似体験できました。おにぎりを改良していく過程は新しい体験で、気持ちがアガりました!

― (高校生にとっては、何かを考え、それを具現化していくということは、ありそうでない経験だった模様。アクティブラーニングが推奨されているいま、今回の経験は有意義なものになったみたいで、よかった、よかった。)

― みなさんは、今回の経験を通して、どんな点が成長できたと思いますか?

萌佳さん:成長というか、反省点なんですが、人の意見をまとめたりしたことがなかったので、案を出しやすい環境をつくることがとても難しかったです。自由に発言できるような雰囲気をつくれるようになりたいです。
りかさん:個人的には、みんなで案を出し合って、カタチにするチカラが高まったと思います。
優太郎くん:ワークショップの時、他校の人と話をしたりするのが緊張しました。男子校なので、女子とのコミュニケーションはいい経験になりました(笑)。
新之助くん:僕も、成長より、プレゼンがうまくできなかった悔しさの方が強いですね。

― (達成感より反省意識の方が高いだなんて…。自分の足りないところを認識できただけでも成長の第一歩だと思うよ、おじさんは!)


左:斎藤萌佳さん 右:横田りかさん (仙台二華高校 調理室にて)

地元への想い ある? ない?

― 今回のプロジェクトは、宮城の課題と向き合うものでしたが、みなさんの地元意識や進学や就職先として「地元」をどう考えていますか?

萌佳さん:私は、人より地元意識がないと思います。私の住んでいる仙台は、整い過ぎてるという感覚があり、それが逆に居心地が悪く感じることがあるんです。私は、自然への憧れが強いので、大学は、北海道に行きたいと思っています。
りかさん:私も、地元には残らないですね…。東京に行ってみたいです。やっぱり、憧れるし、一度は住んでみたいと思うので。
優太郎くん:僕は地元を離れたくないです。東京とか、いっぱい人がいるじゃないですか(笑)ストレスがかかりそうで、あまり環境を変えたくないです。就職も地元でしたいですね。
新之助くん:僕も、地元で進学と就職を考えています。東北学院高から東北学院大に進学する予定なんですが、OBの方が宮城にはたくさんいらっしゃるので、そのネットワークを活かして働けたらと思っています。

― (地元になんの未練もない女子たちと、地元LOVEな男子たち。たまたまだけれど、不思議と価値観が分かれたのは面白いなぁ。自分も地元から出たい派だったので女子たちの気持ちがとてもわかるなぁ。まぁ、地元を離れてはじめてふるさとの良さがわかってきたりもするのだけれど…。)

― ちなみに、どんな職業に就きたいか、なりたい自分のイメージはありますか?

萌佳さん:獣医師になりたいです。そして、ゆくゆくは、ニュージーランドで生活してみたいです!羊や牛などの動物の近くで、自然の恵みを享受しながら仕事に没頭してみたいです。
りかさん:私は保健師になることを目標にしています。仕事をちゃんとして、だれかに必要とされて、友だちがいて、普通に買い物を楽しんだり、充実した日々を送りたいです。
優太郎くん:自分の仕事で地元に人を呼びたいという想いがあるので、例えば、イベントプランナーになるのもいいかもと思っています。企画することを仕事にしたいという考えが、河北みらいプロジェクトに参加して強くなった気がします。AIに負けないように、想像力を駆使するというか、アイディアで世界をつくれたらいいなと思います。
新之助くん:漠然としているんですが、お金を動かす仕事がいいですね。お金を管理するような職業に携わりたいです。計算がするのが好きだし、お金を貯めるのも好きなので。

― (一人ひとりの未来がとても個性的で、聞いているこちらもわくわくしました。高校生の段階で、ここまで将来のビジョンを語れるのは、自分の世界観や意志を持っているからこそ。未熟の中に、成熟した部分が育っている証だと思います。余談ですが、こんな私でさえ、「言葉」に携わる仕事に就きたい!と思っていたら、コピーライターになれたんですから、みんなならきっと、自分の目標を叶えられるはずっ!)


左:齋藤優太郎くん 右:西口新之助くん (東北学院高校 正門にて)

リアル「みらいのめ」、スクスク成長中

そして、最後に、7年前の“震災”が今の自分にどのような影響を与えているか質問してみました。すると、4人からは、「あまり、“震災”の影響はないように思う」という回答が返ってきました。その理由としては、直接的な被害がなかったこと、小学生の時のことでまだその出来事を行動に変えるような段階になかったことなどを挙げていました。宮城の高校生は、“震災”を特別なものとしてとらえているイメージがあったので、その回答は少し意外でした。これは、“震災”が風化しているということではなく、“震災”の次のステージに、宮城が、世代が、移行している表れのようにも感じました(もちろん、まだまだ復興は道半ばですが…)。

4人にインタビューしてみて感じたのは、宮城や日本、はたまた世界を動かす「みらいのめ」がしっかり育っているということ。課題だらけで、先行き不透明な世の中ではあるけれど、この先の未来はなんだか期待できそうだ!決して、暗くはない!と思えました。そして、彼・彼女たちがつくるこれからの世界で、自分はどんな風に生きているのだろうか?と、自分の将来を考えるいい機会をもらった気がします。ありがとう、萌佳さん、りかさん、優太郎くん、新之助くん。あと数年後は社会人になっているであろう4人。「みらいのめ」が花ひらく時、ぜひ、一緒に、社会を面白くしていきましょう!

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