みらいのめ

さまざまな視点で研究員が「みらい」について発信します

第1回

明るい無縁墓

from 和歌山県

muenbo

生活総研 客員研究員
博報堂 関西支社

福井 良應

ぼくの実家はお寺です。
和歌山県紀の川市の、ゆったりと流れる紀の川を見下ろす高台の上に、お寺はあります。

お墓についてあれこれ取り沙汰される昨今、うちのお寺の墓地にも変化が出てきています。分譲しているお墓スペースに、いくつか空きができています。以前なら空きが出ればすぐ買い手が現れたのに、です。また、個人墓(おひとりさまのお墓)や集合墓(みんなで相席するお墓)の問合せが増えています。よその墓地でも似たようなことが起こっているようです。

これまでお墓は「◯◯家之墓」といった家族墓が中心でした。しかし、過疎化や人口減少、イエに縛られない価値観の広まりなどによって、お墓が引き継がれないとか扱いに困るといった問題が出てきています。そして、個人で墓を立てたり、合葬を選んだり、散骨したり、あるいは大学病院に献体するなど、葬られ方の選択肢が増えています。

家族墓に入らないことは、以前であれば無縁になるということで、どちらかというと良いイメージをもたれないワケあり状態だったはずですが、樹木葬、海洋葬、宇宙葬などに見られるように、むしろ積極的な個人の理想や主張がこもっているように感じられます。

網野善彦は『[増補] 無縁・公界・楽』のなかで、本来「無縁」とは、「あらゆる関係から自由で平和で理想郷にあたる世界」であった旨を書いています。人口減少をリアルに自分事として感じる人が増える今、「無縁」化を積極的に明るいものとして捉えたいという欲求が表面化してきたように思います。

新潟に妙光寺という、承継者を前提としないお墓の先駆となったお寺があります。ここでは年に1度、普遍性の高いテーマで語らう会があり、首都圏からも人が多く訪れるそうです。もともと10年かけて墓地を販売する計画が4年で達成され、ニーズに応えるために新規区画を増設されています。

個人墓や集合墓へのニーズが高まるなか、都市部で墓地を拡大することは難しく、しきたりが多いと思われがちな地方のお寺のなかから、新しい取り組みの芽が出てきています。
今後そういう流れのなかで、明るい無縁化を背景として、お墓を中心とする様々な死者のコミュニティが生まれるんじゃないかと想像します。

死生観を共有するコミュニティだけではなく、もっとラフに、音楽の愛好家、車やバイクの愛好家、お酒の愛好家など、趣味人向けの墓地。宗教や家族とは別の、その人らしいこだわりと温もりを感じさせる墓地。そんな不思議な明るさをもった墓地が地方にうまれ、そこに人が集まる光景を妄想しています。

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