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暮らしをなんとか安定させたい

~「生活定点2008 レポート2」生活総研が着目する価値観変化~

博報堂生活総合研究所 上席研究員
南部 哲宏
夏山 明美

 先月号では、生活総研が2年ごとに実施している定点観測調査「生活定点2008」の結果から、時系列変化の大きかった項目を中心に速報として紹介しました。今月号からは、「生活定点2008」を詳細に分析した結果を報告します。
 生活総研では、時系列データが描くグラフを「生活波形」と呼んでいます、生活波形は、過去から現在にかけて生活者がどのように変化し、どのように生きようとしているのかを示してくれます。まさに「暮らしのうねり=変化潮流」を知ることができるものです。
 生活波形から生活者の変化の方向やニーズを読み取り、より良いサービスを提供できれば、皆さんも生活者も幸せになれるはずです。


変化が多すぎて先を見通せません。お先真っ暗とはこのことでしょうか。 (グラフ1)

 「今の世の中は変化が多すぎると思う」「世の行く末:悪くなる」「自分の将来イ メージ:暗い将来だと思う(暗い+どちらかというと暗い)」が上昇を続けている。日本の金融破綻が相次いだ1997~1998年、小渕政権→森政権→小泉 政権と政治が迷走した1998年~2001年を上回る結果だ。
 2001年からの小泉構造改革。企業も社員への給与を抑えて筋肉質な経営体質を作り、日本の経済システムを再構築してきた。その結果、2002年2月か ら景気は回復し始め、「いざなぎ越え」と言われるように緩やかだが戦後最も長い経済成長を遂げたにもかかわらずである。実感なき経済成長がこのような結果 を招いたのであろうか。
 過半数の人たちが「変化が多すぎ」「世の中が悪くなる」と感じ、20代では男性の3人に1人、女性の4人に1人が「自分の将来が暗い」と感じている状況は、世の中の雰囲気がかなり不安定になっていることを示唆しているのではないだろうか。

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じわじわと、家計が緊迫しています。 (グラフ2)

 2000年から2006年にかけて「現在の経済的余裕:余裕のない方だ(まったく+やや)」「今後の暮らし向き:悪くなっていく」には変化が見られず、「現在の暮らし向き:苦しくなった」と思う人は減少。緩やかな経済成長ゆえか、生活者の景況感は改善したようだった。
 しかし、2007年のサブプライムローン問題、ガソリンなどのエネルギーや資源の高騰から状況は一変。1997年の金融破綻に匹敵する「暮らし向きの悪化」ぶりだ。生活定点の調査は隔年5月に実施しており、今年の調査時にはリーマンブラザースに端を発する世界同時株安はまだ起きていない。せいぜいガソリンが高騰し、ゴールデンウィークに車で旅行をする人が減ったというニュースが流れていた直後の調査だったのである。下半期に調査をしていれば、暮らし向き評価はもっと悪化していたであろう。

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環境、食品安全、税金問題・・・暮らしの基盤を考えざるを得ません。 (グラフ3)

 振り返ってみると2006年下期~2008年上期にもさまざまな出来事やニュースがあった。BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国の4カ国の頭文字をとった造語)の台頭、環境問題の深刻化とこれに絡む食料・エネルギーの高騰や危機、食品の安全問題と改善されない自給率、高齢化と少子化が複雑に絡みあう医療問題と年金問題など、暮らしの基盤を揺るがす問題が次々と生活者を襲った。
 その結果、直近の生活波形を見ると「地球環境保護生活:考えて実行する」「関心のある情報:環境問題」「食品やその素材に不安がある」が急伸。逆に「多少、税金が高くなっても福祉を充実させるべきだと思う」は急落している。
 生活者は、嫌が応にも暮らしの基盤について考えざるを得ない状況を迎えていると言えよう。そして、基盤整備のための税金はそれ相応の金額を負担してもやむを得ないと覚悟し始めたようである。

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世の中への怒り・悲しみ・不安が止まりません。 (グラフ4)

 先を見通せない、家計が緊迫、危機的な暮らしの基盤など、暮らしを取り巻く環境はかなり深刻と言える。そのため「世の中への感情」での「気がかりなこと・不安なことが多い(多い+やや)」が過去最高に。「いやなこと・腹のたつことが多い(多い+やや)」「悲しいことが多い(多い+やや)」は過去2番目の値になった。これらの生活波形を見ていると、世の中への怒り、哀しみ、不安が一向に改善されず、苛立つ生活者の姿が浮かび上がってくる。

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夢や希望が持てません。身の回りでもマイナス気分が蔓延しています。 (グラフ5)

 「身の回りへの感情」についても、やはり「気がかりなこと・不安なことが多い(多い+やや)」が過去最高に。さらに、身の回りの感情に関する生活波形を分析して、最も気になることがあった。「夢や希望が多い(多い+やや)」が過去最低を記録したことだ。世の中に夢や希望が感じられないのは理解できる。だが、身の回りで夢や希望が感じられないということは、家族や会社・住んでいる地域で夢を持ち、明るい未来を語るなど、人間として前向きに生きていこうとする姿勢を持てない状況に追い込まれていることを意味する。この暗雲はいつまで、生活者の心に影を落とせば気が済むのだろうか。

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あぁ、安定した暮らしが欲しいのです。 (グラフ6)

 生活者の心に立ちこめる暗雲。生活者が望んでいるのは「安定した暮らし」「ほっとしたい」「安心して暮らしたい」・・・、これらの言葉につきるようだ。

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(掲載 : JRガゼット・2008年12月号・株式会社交通新聞社)



調査概要

「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。 

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