生活者の暮らしに定着しつつある中古品市場の今後
~物が使われ続けることを可能にする中古品市場の新システム~
博報堂生活総合研究所 主任研究員
小原 美穗
環境問題への意識の高まりもあり、リサイクルショップやお直しのお店は、街でもすっかり馴染みのある存在になっています。衣類だけでなく、雑貨や家具、家電製品などありとあらゆるカテゴリーのお店が増えました。最近では、単に中古品を集めたり修理するだけではなく、ファッションやインテリアなどのデザイナーが中古品に一工夫加えてリメイクした商品を扱うお店も出始めています。
今回はそういったリサイクルショップなどで扱われている中古品にフォーカスして、人と物の関係を探ってみたいと思います。
中古品購入の実態と意識の推移
中古品。辞書で調べてみると「一度使った品物。少し古くなった品」と出てくる。つまり、自分や他の人が使った品物ということだ。まず、この中古品購入についての生活者の実態と意識を見てみよう。「最近1年間でリサイクルショップ、フリーマーケットなどで中古品を買ったことがある」と答えた人は、1998年には15.3%だったが、2008年には21.6%と増加している。また「今後(も)買ってみたい」と回答した人も、1998年の18.6%から2008年には22.2%に増えた(グラフ1)。急激な変化は見られないものの、この10年間でゆるやかに伸びていることから、中古品購入が生活の一部として定着しつつあると言えるだろう。

また、同じ中古品を扱うサービスとして、インターネットオークションに対する行動や意識の状況を見てみた。「利用したことがある」と答えた人は、2006年の17.8%から、2年後の2008年には19.8%に増加している。さらに「今後(も)利用したい」と答えた人も、2006年の34.3%から2008年には35.9%となっている(グラフ2)。最近2年間の推移だが、利用経験、利用意向ともに増えている。また、注目したいのは経験と意向の数値の差だ。「今後(も)利用したい」の回答数から「利用したことがある」の回答数を引くと、2006年は16.5ポイント、2008年は16.1ポイントのひらきがあった。意向が経験を上回っており、今後もこのサービスの利用者拡大が予測できる。このように、前述のリサイクルショップ、フリーマーケットに加え、インターネットオークションも含めた中古品の買物行動は、生活のなかに着実に定着し、今後もその利用が進むことが予想される。

物を修理すること、捨てることへの意識変化
次に、自分が使っていた品物との関係を見てみよう。生活定点では「修理」という視点からも調査している。「家電製品や家具などが壊れれば、修理して長く使う方だ」と答えた人は、2000年には46.4%だったが、2008年には37.3%と10%近く減っている。また、「自分で家や家具などの修理、修繕をする方だ」と答えた人は、1998年の33.2%から2008年には27.4%と3割を切った(グラフ3)。中古品の購入が定着しつつある半面、品物を修理することへの意識は徐々に薄まっているようだ。

さらに、人と物との関係には「捨てる」という行為も含まれる。生活定点の調査で「物を捨てる時、処分費用を個人が負担するのはしかたないと思う」と答えた人は、2008年で48.6%だった。10年前の1998年の57.4%から約10%ダウンしているが、いまだにおよそ二人に一人は費用負担を「しかたない」と思っている状況だ(グラフ4)。

このように現状から見ると、生活者は「一度使った品物」を修理する傾向は低下し、費用を負担しても廃棄処理する傾向がまだまだ強いと思われる。しかしながら、修理をすれば使える品物を、廃棄処理させずにリサイクルショップやフリーマーケット、インターネットオークションといった中古品市場へ流通させることができれば、生活に定着しつつある中古品購入という行動は、今後もより拡大することが見込まれる。では、どうすればこのような流れが活性化されるのだろうか。
中古品が循環する新しいシステム
中古品市場の活性化を図るために、生活者の二人に一人が「負担するのはしかたない」と思っている廃棄処理の「費用」に着目してみた。捨てるための費用負担から、修理の費用負担へと発想を切り換えるのだ。
たとえば、生活者が壊れた本棚を処理したいと思ったとする。処理費用がかかる粗大ごみに出すのではなく、リサイクルショップやインターネットオークションなど中古品を扱っているお店へ供出する。本棚は壊れているので、正規の買い取り価格から修理費用を差し引いた金額を生活者に支払う仕組みにするのだ。こうすれば、修理費用は実質的に生活者が負担することになる。しかしながら、生活者にとっては、受け取る金額が多少減額されても収入であることには変わりない。買い取る側にとっても、これまで処分されていたであろう中古品の品数が豊富になるため、十分なメリットとなるはずだ。そして結果的には、商品が多ければ多いほど、生活者の選択肢が増えることになる。中古品の提供者である生活者と、買い取るお店の双方にメリットがあれば、中古品の流通が活性化し、中古品市場は今後も拡大することになるだろう。
(掲載 : JRガゼット・2009年10月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。
今回はそういったリサイクルショップなどで扱われている中古品にフォーカスして、人と物の関係を探ってみたいと思います。
中古品購入の実態と意識の推移
中古品。辞書で調べてみると「一度使った品物。少し古くなった品」と出てくる。つまり、自分や他の人が使った品物ということだ。まず、この中古品購入についての生活者の実態と意識を見てみよう。「最近1年間でリサイクルショップ、フリーマーケットなどで中古品を買ったことがある」と答えた人は、1998年には15.3%だったが、2008年には21.6%と増加している。また「今後(も)買ってみたい」と回答した人も、1998年の18.6%から2008年には22.2%に増えた(グラフ1)。急激な変化は見られないものの、この10年間でゆるやかに伸びていることから、中古品購入が生活の一部として定着しつつあると言えるだろう。

また、同じ中古品を扱うサービスとして、インターネットオークションに対する行動や意識の状況を見てみた。「利用したことがある」と答えた人は、2006年の17.8%から、2年後の2008年には19.8%に増加している。さらに「今後(も)利用したい」と答えた人も、2006年の34.3%から2008年には35.9%となっている(グラフ2)。最近2年間の推移だが、利用経験、利用意向ともに増えている。また、注目したいのは経験と意向の数値の差だ。「今後(も)利用したい」の回答数から「利用したことがある」の回答数を引くと、2006年は16.5ポイント、2008年は16.1ポイントのひらきがあった。意向が経験を上回っており、今後もこのサービスの利用者拡大が予測できる。このように、前述のリサイクルショップ、フリーマーケットに加え、インターネットオークションも含めた中古品の買物行動は、生活のなかに着実に定着し、今後もその利用が進むことが予想される。

物を修理すること、捨てることへの意識変化
次に、自分が使っていた品物との関係を見てみよう。生活定点では「修理」という視点からも調査している。「家電製品や家具などが壊れれば、修理して長く使う方だ」と答えた人は、2000年には46.4%だったが、2008年には37.3%と10%近く減っている。また、「自分で家や家具などの修理、修繕をする方だ」と答えた人は、1998年の33.2%から2008年には27.4%と3割を切った(グラフ3)。中古品の購入が定着しつつある半面、品物を修理することへの意識は徐々に薄まっているようだ。

さらに、人と物との関係には「捨てる」という行為も含まれる。生活定点の調査で「物を捨てる時、処分費用を個人が負担するのはしかたないと思う」と答えた人は、2008年で48.6%だった。10年前の1998年の57.4%から約10%ダウンしているが、いまだにおよそ二人に一人は費用負担を「しかたない」と思っている状況だ(グラフ4)。

このように現状から見ると、生活者は「一度使った品物」を修理する傾向は低下し、費用を負担しても廃棄処理する傾向がまだまだ強いと思われる。しかしながら、修理をすれば使える品物を、廃棄処理させずにリサイクルショップやフリーマーケット、インターネットオークションといった中古品市場へ流通させることができれば、生活に定着しつつある中古品購入という行動は、今後もより拡大することが見込まれる。では、どうすればこのような流れが活性化されるのだろうか。
中古品が循環する新しいシステム
中古品市場の活性化を図るために、生活者の二人に一人が「負担するのはしかたない」と思っている廃棄処理の「費用」に着目してみた。捨てるための費用負担から、修理の費用負担へと発想を切り換えるのだ。
たとえば、生活者が壊れた本棚を処理したいと思ったとする。処理費用がかかる粗大ごみに出すのではなく、リサイクルショップやインターネットオークションなど中古品を扱っているお店へ供出する。本棚は壊れているので、正規の買い取り価格から修理費用を差し引いた金額を生活者に支払う仕組みにするのだ。こうすれば、修理費用は実質的に生活者が負担することになる。しかしながら、生活者にとっては、受け取る金額が多少減額されても収入であることには変わりない。買い取る側にとっても、これまで処分されていたであろう中古品の品数が豊富になるため、十分なメリットとなるはずだ。そして結果的には、商品が多ければ多いほど、生活者の選択肢が増えることになる。中古品の提供者である生活者と、買い取るお店の双方にメリットがあれば、中古品の流通が活性化し、中古品市場は今後も拡大することになるだろう。
(掲載 : JRガゼット・2009年10月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。