「圏づくり」へ
これからの人とのつながりは、テーマや目的のもと、幅広い人たちが自発的に集まる
博報堂生活総合研究所 上席研究員
夏山 明美
博報堂生活総合研究所では毎年、年末から年始にかけて「生活動力」と名づけた生活の未来予測を発表しています。最新版のタイトルは「圏づくり」。ボランティアや趣味の会など多種多様なテーマや目的のもと、性年代・地域・職業などを越え、幅広い人たちが自発的に集う、新しい集まり・つながりに着目しました。当研究所では、こうした新しい集まり・つながりを「圏」と呼び、それを創り出す人々の行動を「圏づくり」と名づけ、全国の15歳から69歳の男女3348名を対象に実態調査を行いました。
今回から3回シリーズで、①これまでの縁やネットワーク、コミュニティと「圏」との違い、生活者の「圏」の所有状況や今後の意向状況、②「圏」の特性、③「圏づくり」をする人たちのプロフィールなど、調査から発見したことを順に紹介していきます。
「圏」の3大特徴は、「テーマがある」「オープンである」「流動的である」こと
東日本大震災後、絆、利他、がんばろうなど、人とのつながりが注目を集めた。こうした生活者の集まり・つながりについて調査したところ、これまでの縁やネットワーク、コミュニティとは異なる、新しい集まり・つながりの「圏」が生まれていることが分かった。
生活者が創り出す「圏」の具体例を挙げてみよう。「大学での就職活動を目的としたつながり(20歳男性・神奈川県)」「知能指数が人類上位2%の集まり(25歳男性・静岡県)」「将来バンクーバーで暮らしたい人の集まり(31歳男性・福岡県)」「里山再生に取り組む集まり(38歳女性・大阪府)」「特養老人ホームでのボランティア(57歳女性・東京都)」「ハーレーのタンデム走行の会(64歳女性・神奈川県)」など、大小さまざまなテーマや目的のもと、老若男女を問わず、幅広い人たちが自発的に集まっている。
こうした新しい集まり・つながりを分析すると、次の3つの特徴が見えてきた(図)。

①テーマがある
地縁・血縁やネットワークのような既存の枠組み、私的・公的事情、損得によるつながりでは
なく、特定のテーマへの興味関心で主体的に人が集まっている
②オープンである
縁やコミュニティのように、メンバーが変動しにくいクローズドな集まりではない。特定のテーマ
のもと、人々は集まり、自由に出入りしている
③流動的である
集まるメンバーのみならず、開催の頻度や場所も流動的である場合も多い。テーマでさえも
移行することがあり、すべてが臨機応変に変化する
では、こうした「圏」を現状、どれぐらいの人が持っており、今後、どれぐらいの人たちが持ちたいと思っているのだろうか。
圏を持つ人は2人に1人
調査における「圏」の定義を「自ら創ったり関わったり、もしくは自発的にそこにいる人と何らかの体験をともにする、テーマや目的を持った集まりや人とのつながり」として、圏の所有状況を質問したところ、圏を持つ人は48%、ほぼ2人に1人にのぼることが分かった(グラフ1)。

また、圏を持つ人の割合は、性別で見ると男性よりも女性が約5ポイント高く、特に30代以上で顕著(グラフ2)。

性年代別では、男女とも10代、20代、60代が全体平均を上回り、その中間の30代、40代が少ない"U字型"を示している。男女とも30 代、40代は、仕事や家事、子育てなどで忙しく、圏づくりに費やせる時間が少ないためだろうか。それでも、圏を持つ人が最も少ない男性40代でさえ、3人に1人(34%)は圏づくりをしている。
今後、圏を増やしたい/持ちたい人は2人に1人
次に、圏の意向状況を見てみよう(グラフ3)。

圏を持つ人には今後の"増減"意向、圏を持たない人には今後の"所有"意向を質問した。
圏を持つ人のうち、今後、圏を「増やしたい」人は全体の21%。「いまのままがよい」とする人は26%で、「減らしたい」人はわずか1%にすぎない。圏を持つ状態を維持、あるいは積極的に増やしたい人の多さが明らかになった。また、圏を持たない人のうち、今後、圏を「持ちたい」人は29%で、「持ちたくない」の22%を7ポイントも上回っている。
さらに、今後、人々が新たな圏をどれぐらい創り出そうとしているのかを把握するために、「増やしたい」「持ちたい」を足してみると、49%となった。現在の所有状況と同様、圏の拡張意向者は2人に1人となっている。
今後の圏の拡張意向を性年代別で見ると、20代女性を除き、男女ともに加齢に伴い低くなる"若高老低型"を示している(グラフ4)。

さらに、すでに圏を持つ人が多い女性と男女50代、60代を除くすべての性年代で、圏の拡張意向が圏を持つ人の割合を上回ることも分かった。圏を持つ人が現状では34%と最も少ない男性40代でさえも、今後の拡張意向は43%と9ポイントも上回るほどだ。
これからの人とのつながりは「圏づくり」へと向かう
社会貢献のような大きなテーマから、個人的な趣味の集まりなどの小さなテーマまで、さまざまなテーマへの興味関心のもと、人々は無理のない等身大の「圏づくり」を始めている。既存の枠組みを越えた、一人ひとりの生活者による主体的かつ新たな生活圏の再編の動きは、今後ますます広がり、消費や市場、社会にも影響を与えていくだろう。人々の「圏づくり」への理解をさらに深め、ビジネスに役立つヒントを見出していただくために、次号では人々が創り出している「圏」の特性について報告する。
(掲載 : JRガゼット・2012年1月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「圏の構造」調査
調査地域:全国47都道府県
調査対象:15歳から69歳までの男女3,348名
※全国を8地区に分割し、エリア別人口構成に応じて割付
※ 性年代は10歳刻みで均等割付。ただし、10代は15~19歳のため、その約半分
男性:1,674名(10代男性 154名/20~60代男性 各304名)
女性:1,674名(10代女性 154名/20~60代女性 各304名)
調査方法:インターネット調査
調査時期:2011年10月14日(金)~17日(月)
今回から3回シリーズで、①これまでの縁やネットワーク、コミュニティと「圏」との違い、生活者の「圏」の所有状況や今後の意向状況、②「圏」の特性、③「圏づくり」をする人たちのプロフィールなど、調査から発見したことを順に紹介していきます。
「圏」の3大特徴は、「テーマがある」「オープンである」「流動的である」こと
東日本大震災後、絆、利他、がんばろうなど、人とのつながりが注目を集めた。こうした生活者の集まり・つながりについて調査したところ、これまでの縁やネットワーク、コミュニティとは異なる、新しい集まり・つながりの「圏」が生まれていることが分かった。
生活者が創り出す「圏」の具体例を挙げてみよう。「大学での就職活動を目的としたつながり(20歳男性・神奈川県)」「知能指数が人類上位2%の集まり(25歳男性・静岡県)」「将来バンクーバーで暮らしたい人の集まり(31歳男性・福岡県)」「里山再生に取り組む集まり(38歳女性・大阪府)」「特養老人ホームでのボランティア(57歳女性・東京都)」「ハーレーのタンデム走行の会(64歳女性・神奈川県)」など、大小さまざまなテーマや目的のもと、老若男女を問わず、幅広い人たちが自発的に集まっている。
こうした新しい集まり・つながりを分析すると、次の3つの特徴が見えてきた(図)。

①テーマがある
地縁・血縁やネットワークのような既存の枠組み、私的・公的事情、損得によるつながりでは
なく、特定のテーマへの興味関心で主体的に人が集まっている
②オープンである
縁やコミュニティのように、メンバーが変動しにくいクローズドな集まりではない。特定のテーマ
のもと、人々は集まり、自由に出入りしている
③流動的である
集まるメンバーのみならず、開催の頻度や場所も流動的である場合も多い。テーマでさえも
移行することがあり、すべてが臨機応変に変化する
では、こうした「圏」を現状、どれぐらいの人が持っており、今後、どれぐらいの人たちが持ちたいと思っているのだろうか。
圏を持つ人は2人に1人
調査における「圏」の定義を「自ら創ったり関わったり、もしくは自発的にそこにいる人と何らかの体験をともにする、テーマや目的を持った集まりや人とのつながり」として、圏の所有状況を質問したところ、圏を持つ人は48%、ほぼ2人に1人にのぼることが分かった(グラフ1)。

また、圏を持つ人の割合は、性別で見ると男性よりも女性が約5ポイント高く、特に30代以上で顕著(グラフ2)。

性年代別では、男女とも10代、20代、60代が全体平均を上回り、その中間の30代、40代が少ない"U字型"を示している。男女とも30 代、40代は、仕事や家事、子育てなどで忙しく、圏づくりに費やせる時間が少ないためだろうか。それでも、圏を持つ人が最も少ない男性40代でさえ、3人に1人(34%)は圏づくりをしている。
今後、圏を増やしたい/持ちたい人は2人に1人
次に、圏の意向状況を見てみよう(グラフ3)。

圏を持つ人には今後の"増減"意向、圏を持たない人には今後の"所有"意向を質問した。
圏を持つ人のうち、今後、圏を「増やしたい」人は全体の21%。「いまのままがよい」とする人は26%で、「減らしたい」人はわずか1%にすぎない。圏を持つ状態を維持、あるいは積極的に増やしたい人の多さが明らかになった。また、圏を持たない人のうち、今後、圏を「持ちたい」人は29%で、「持ちたくない」の22%を7ポイントも上回っている。
さらに、今後、人々が新たな圏をどれぐらい創り出そうとしているのかを把握するために、「増やしたい」「持ちたい」を足してみると、49%となった。現在の所有状況と同様、圏の拡張意向者は2人に1人となっている。
今後の圏の拡張意向を性年代別で見ると、20代女性を除き、男女ともに加齢に伴い低くなる"若高老低型"を示している(グラフ4)。

さらに、すでに圏を持つ人が多い女性と男女50代、60代を除くすべての性年代で、圏の拡張意向が圏を持つ人の割合を上回ることも分かった。圏を持つ人が現状では34%と最も少ない男性40代でさえも、今後の拡張意向は43%と9ポイントも上回るほどだ。
これからの人とのつながりは「圏づくり」へと向かう
社会貢献のような大きなテーマから、個人的な趣味の集まりなどの小さなテーマまで、さまざまなテーマへの興味関心のもと、人々は無理のない等身大の「圏づくり」を始めている。既存の枠組みを越えた、一人ひとりの生活者による主体的かつ新たな生活圏の再編の動きは、今後ますます広がり、消費や市場、社会にも影響を与えていくだろう。人々の「圏づくり」への理解をさらに深め、ビジネスに役立つヒントを見出していただくために、次号では人々が創り出している「圏」の特性について報告する。
(掲載 : JRガゼット・2012年1月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「圏の構造」調査
調査地域:全国47都道府県
調査対象:15歳から69歳までの男女3,348名
※全国を8地区に分割し、エリア別人口構成に応じて割付
※ 性年代は10歳刻みで均等割付。ただし、10代は15~19歳のため、その約半分
男性:1,674名(10代男性 154名/20~60代男性 各304名)
女性:1,674名(10代女性 154名/20~60代女性 各304名)
調査方法:インターネット調査
調査時期:2011年10月14日(金)~17日(月)