食の健康志向過去最低

食の健康志向、過去最低

2025.04.14

2025 4 月号

こんにちは。新年度を迎えて、博報堂歴41年目、生活総研歴25年目に入った夏山です。子どもの頃から食や料理に興味があったので、大人になってからは調理師や食品衛生管理者、食生活アドバイザーなどの免許・資格を取りまくり。仕事では担務以外に食生活研究を専門にしており、研究成果はテレビや雑誌などで発表しています。

おなじみの「生活定点」調査をみると……

長い仕事人生のなかで、私が生活者発想を実践し続けるうえで欠かせないのが、博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)が1992年から2年に1度実施する長期時系列調査「生活定点」。東日本大震災の翌年2012年からは、生活総研にできる社会貢献のひとつとして一般公開。今ではみなさんにおなじみの生活者発想ツールとなりました。

健康ブームといわれるけど、データは減少

「生活定点」調査に限らず、自分たちが実施した調査の結果が出ると、私は結果を予想しながらデータ分析に入るわけですが、予想が外れる場合もあります。その一例が、生活定点の「健康に気をつけた食事をしている」。長年にわたって健康ブーム/健康志向の高まりなどといわれているので、「今回は増加するだろう」と予想を続けますが、データの減少傾向は止まりません。しかも、最新2024年のスコアは32.3%で過去最低となりました。

食の健康志向過去最低

「健康に気をつけた食事をしている」:32.3%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査

予想外の理由を探る、謎解きの旅へ

そうなると、「予想が外れた、なんでだぁ?」とビックリするわけですが、同時に「ここからが生活者研究の真骨頂だぁ!」とも感じます。そして、謎解きの旅に出るようでワクワクしつつ、再び生活定点に戻り、関連しそうなデータを探しまくるのです。
すると、「健康に気をつけた食事をしている」の減少理由として、いくつかの仮説が浮かび上がってきました。

仮説1:食品への不安が減った

「必要な栄養がとれているか不安」「食品やその素材に不安」「食品を買う時に商品表示をよくみる」「食品を買う時に生産地が気になる」がいずれも減少傾向。食品への健康不安がなくなったから、気をつけなくてもよくなったようです。

「必要な栄養がとれているか、不安に思うことがある」:23.9%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査
「食品やその素材に不安がある」:4.1%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査
「食品を買う時には、商品表示をよくみる」:33.5%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査
「食品を買うときには、生産地が気になる方だ」:28.2%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査

仮説2:手料理離れで外食/中食が増えた

「料理を作ることが好き」「外食よりも家で食べる方が好き」が減少、生活者は家で作って食べるより外食を好むようになってきています。「調理済食品(レトルト、冷凍食品、惣菜など)をよく使う」といった中食志向も高まりました。食のプロである飲食店や企業が作ったものを食べるので、健康など気にしなくても大丈夫という思いがあるのでしょうか。

「料理を作ることが好き」:31.0%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査
「外食よりも、家で食べる食事の方が好き」:40.8%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査
「調理済食品(レトルト、冷凍食品、惣菜など)をよく使う」:32.7%|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査

仮説3:オイリーな料理好きが増えた

好きな料理ランキングをみると、「焼肉」「ラーメン」「鶏のからあげ」「ぎょうざ」といったオイリーな料理が上位を占めます。がっつり食べたい生活者は健康なんて気にしない、あるいは気にしたくないのかもしれません。

「好きな料理ベスト3は何ですか?」ランキング|博報堂生活総研「生活定点1992-2024」調査

「なんでだろう?」に自分なりの仮説を

本稿では、生活定点でみつけた予想外のデータと仮説をご紹介しました。ですが、データ以外でも予想が外れることや違和感を覚えることって、多々あると思いませんか。例えば、生活のいちシーンをとらえた写真、誰かが発したなにげないひと言、街で見かけた人の様子など。そんな「なんでだろう?」に出会ったとき、「〇〇といわれがちだけど、実は△△では?」「こんな変化も関連しているのでは?」「生活者にこんな欲求が芽生えているのでは?」などと自分なりの仮説を立ててみることをお勧めします。それを続けることが、生活者発想の体質強化に役立つと思いますから。