
おば研究、始めました。
2025.06.16
みなさんこんにちは。研究員の近藤です。今回は、世の「おばさん」イメージを明転させるべく、研究員の田山さんと取り組んでいるおば*研究(おばさん研究)についてご紹介したいと思います。
*私たちは「おばさん」への親しみと愛情をこめて「おば」と表現しています。
「おばさん」は43歳から。
いきなり年齢の話で恐縮ですが、これは1992年から2年に1度実施する長期時系列調査「生活定点」の最新調査で「おばさんとは何歳からをさすと思いますか?」と聞くと「43歳から」という結果になりました。(首都圏・阪神圏20~69歳男女の平均値。)
私は現在45歳。世の中的には立派なおばさんです。自分でもその自覚はあるんですが、娘の友だちを前に自らを「おばさん」と称するときも、周囲から「おばさんと思っていると気取られてはならない!」とばかりに妙に気遣われている空気を感じるときも、なんだかモヤモヤするのです。自分と「おばさん」がフィットしない感じ。自分に合わない形の洋服を無理やり着せられているような違和感があります。
この違和感をもたらす要因のひとつに、「おばさんのイメージが昔からアップデートされていない」ということがあるのかもしれません。年を重ね、身体的な変化を受け入れられない、ということ以上に「おばさん」という言葉にひもつくイメージが、現代の中年女性の実態と乖離していることが違和感の要因として大きいのではないでしょうか。
「おばさん」イメージを聞いてみた
実際に「おばさん」イメージを聞いてみると、「世話好き、親しみやすい、“おかん”のような包容力」など良いイメージも出てくるのですが、それ以上に「うるさい、自己中、外見に無頓着、女性ではなくなる、くるくるパーマに前掛け(!!)」といった、ネガティブイメージの方がずいぶんと多いのです。こうしたイメージからは、昔のアニメに出てくるお母さん像や、1980年代に登場した「オバタリアン」(図々しく無神経な中年女性を風刺する造語)といったことを想起させます。
そして、こういったイメージの刷り込みもあってか若い女性も年を重ねることに不安や恐怖を感じている人が多く、なんとも切ない気持ちになります。「おばさん」はすべての女性がいつか必ず通る道。であるならば「おばさん」像をアップデートし、おばさんの価値を明転させるような研究をして世の中に発信していきたい。そんな志のもと、おば研究を始めました。
SNSを中心に多くのメディアでも「おばさん(おじさんも)を揶揄するのはやめよう。年齢を重ねることをもっとポジティブに楽しもう!」という流れが徐々に広がっており、「おばさん」を取り巻く環境は変化の過渡期なのかもしれません。今こそおば研究に取り組む必要性を強く感じています。
大幅にアップデートしているおばの実態
おばさんイメージがアップデートされていないように、「おばさんは43歳から」という数値もここ25年間ほぼ変わっていません。でも、おばの実態は違う。以前から大幅にアップデートしていたんです。「生活定点」調査の女性全体(20~69歳)と、43歳という目安の前後にあたる40代おばの時系列比較データをご紹介します。
・美もオシャレも諦めなくなったおば
最近、オシャレで美しいおばを見かけることが増えたなと感じているあなた。その感覚は正しい。「美容にお金をかけている」「ファッションに関する情報に興味がある」という40代おばは、約30年前から大幅に増えています。女性全体と比べても、かつては低い数値でしたが最新データでは逆転しています。
以前から内面磨きはもちろん、美容やファッション感度の高い「美魔女」と言われるような人は一定数存在しましたが、今や半数近くの40代おばが美やオシャレを楽しむようになっているのです。


・高まるおばの「ひとり欲」
「ひとり志向」の高まりは男女含めた世の中的なトレンドですので、全体(20~69歳男女)と比較してみると、全体よりも40代おばの方が「ひとりで過ごす時間を増やしたい」は大幅に増えています。さらに、その上昇幅は20~69歳全体よりも大きくなっており、かつては「家庭第一」の人が多かったおばですが、未婚の人が増えていることも要因としてありつつ、仕事と家庭、そしてひとり時間のどれも大切にしたいおばが増えた結果といえるでしょう。

・デジタルツールを活用するおば
デジタルツールの活用も他の年代同様、おばでも高まっています。特に「ネットで実物を見ずに服を買うことに抵抗はない方だ」は20~69歳の全体平均よりずいぶん多く、仕事に家事育児にと多忙な40代おばに特徴的な購買行動のあらわれかもしれません。

グローバルでも注目を集める「おば」
今年3月に開催された世界最大級のビジネスカンファレンス&フェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で、40~50代女性を中心とする中年女性の市場ポテンシャルやウェルビーイングをテーマとしたセッションがありました。アメリカにおいて中年女性は経済的に非常に強力な存在であり、今後その影響力はますます強くなるとのことで、大手化粧品メーカーではこの市場に目を向け、中年女性のライフスタイルや価値観に合ったアプローチを強化しているなど、海外でも「おば」は注目すべき存在となっているようです。
私たちもこの世界的な潮流に乗り遅れないようさまざまな調査研究を通じておばに光をあて、おばイメージを明転していく情報発信していきたいと思います。そしてマーケティングにおけるおばの価値発見・向上だけでなく、おば真っ只中の人も、これからおばの扉をあける多くの女性たちにも「おばさんになるって悪くない!」という希望を持ってもらいたい。そんな願いを込めて。