α世代が発明した使い方 「塩対応スマホ」とは

2025.08.18

2025 8 月号

生活総研の内濱です。私自身、最近スマホの見過ぎで、ものを考える時間が減っているような気がしているのですが、読者のみなさんはいかがでしょうか? 若者に話を聞くと、SNSなどのアプリに使用上限時間を設定したり、一定時間は物理的に開けられない箱のなかにスマホをしまったりする人がいます。これらはスマホの強い魅力に物理的な制限で抗おうとしているわけです。

しかしそれとは異なるアプローチで、スマホとの距離感をとろうとしている人がいたので、ここで紹介させてください。とはいっても、その人は14歳(中2)の私の娘です。Z世代よりも下のα世代にあたる彼女は、中1になって自分専用のスマホを手に入れました。そして私が最近、そのスマホをふと見ると何かがおかしい……。

白黒画面に自作の壁紙

α世代の塩対応スマホ

そう。画面がモノクロなのです。映画などのコンテンツがモノクロということはあるのですが、スマホの画面自体がそうなっているのを私は初めて目にしました。(ネットで調べると設定方法が解説されています)彼女は食べ歩きの動画を見るのが好きなのですが、このモノクロ画面のメリットをこう言います。

「食べ物がおいしそうじゃなくて、見たい気持ちが削がれるんだよ」

「スマホのゲームもね、色がないとアイコンの区別がつかなくて、すごくやりにくいの」

こうして彼女は、スマホの荒ぶる魅力をしずめていたわけです。そして、お気づきかもしれませんが、画面の壁紙もおかしい。ロック画面で見るとこうなります。

α世代の塩対応スマホ

まだ見るの?」「面白いの?」「やる事やったの?」と、スマホを持ち上げるたびに異なる投げかけが画面に浮かび上がります。このスマホは、本当に今開いて良いのかという問いを、開いてほしくなさそうな態度で繰り出してくるのです。実に「塩対応」。彼女は学業に差し障りのないよう、このような壁紙を自作したそうです。

α世代の工夫にヒント

これを見た私にも、思い当たるところがありました。スマホが面白いからというよりは、仕事をすること、頭を使うことから一瞬でも逃げたくて、ついついスマホを手に取り無為に時間を過ごしてしまうことがよくあると。このスマホは塩対応の顔をしながらも「あなたの時間を安売りしないで」と私たちに語りかけているのではないか。α世代のアイデアが、大人にも問題提起をしてくるのです。

生まれたときからスマホやタブレットが当たり前に存在したα世代は、テクノロジーを崇拝も敵視もせず、適切な距離感でパートナーとしての良い関係を築くことができるのかもしれません。そして、その関係づくりは、自分自身の生き方や時間の使い方を見つめ直すことにもなると気づかされた生活の風景でした。

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