若者30年変化 Z世代を動かす「母」と「同性」 若者30年変化 Z世代を動かす「母」と「同性」

コラム Z世代大学生による「若者論」

当事者ならではの視点で、若者に起きている変化や
新たな潮流を自由にレポートしてもらいました。

​​​​不良は消えた?
新時代の不良の姿とその行方は…​

⽥中 楓

⽥中 楓

「不良」はドラマやアニメだけの
世界になってしまったのか!?

最近、「不良」の存在が減り、校内暴力も低減したのではないかとよく言われます。
ドラマ「今日から俺は!!」やアニメ「東京リベンジャーズ」など不良やヤンキーを題材した作品が話題になることが多いですが、作品に出てくる、昔の不良の象徴である学ランや校内暴力などは現代では作品の中だけの世界になってしまっているように感じます。
この傾向を裏付けるデータとして、2023年10月に博報堂生活総合総研所が実施したアンケート調査(全国20~60代男女3,900人対象)の「10代の頃の自覚:自分は不良だったvs優等生だった」の調査結果を見ても、「不良に近い」と答えた人は年代ごとに割合は徐々に減少しており、優等生の割合が増加しているという結果が浮かび上がりました。

確かに、先ほどもあげた「今日から俺は!!」や「東京リベンジャーズ」に出てくる喧嘩番長のような不良の姿は見かけなくなりました。
一方で、不良という存在は完全に消えたわけではなく、20代でもいまだに1割以上は「自分は不良に近かった」という人が残っています。ということは、元々の不良の意味や、彼らの行動などが時代とともに変わってきているのかもしれません。
現代の不良はいったいどこに、どのように存在しているのでしょうか?
ということで、現代の不良の存在を明らかにすべく、実際に学生当時「不良だった」40代の女性(=昔の不良)と、20代の男性(=今の不良)の、世代が違う2人にインタビューを実施しました。

昔は不良、今は母!Aさんの青春秘話

「最初にインタビューを受けていただいたのは、現在4人の子を持つ母でもある専業主婦の40代の女性”Aさん”です。
学生時代、Aさんは、地元で有名な暴走族の一員で、校内暴力や他校との喧嘩を頻繁にしていました。当時の不良たちの性格について聞くと、基本的に性格や物事に対する当たりが強い雰囲気を持っていたと語っています。ただし、「普段は物静かな人もいた」と答え、「全員が陽キャに分類される訳ではなく、そもそも陽キャ、陰キャという分け方自体が存在していなかった」と語ってくれました。
また、当時の不良には「クラスの顔」と呼ばれる存在もいたとのことで、不良たちがクラス内で一定の影響力を持っていたことが伺えます。ただ、「不良以外にも悪目立ちしていた男子も目立つがゆえにクラスの中心的になることもあった」と答え、不良以外にもクラスを引っ張る存在がいたこともあったそうです。

また「当時不良によるいじめはあったか」という問いに対しては、Aさんの学校ではいじめはなかったとのこと。「不良同士の上下関係はあったけれど、他人を巻き込むいじめはかっこいいと思っている人はいなかった」と答え、当時の不良たちの人間関係において他者を傷つけないことが重要だったことが伝わってきます。

次に、スクールカーストについて尋ねると、「今みたいなはっきりしたものはなかった」ということでした。現代のように、学校の中で生徒たちが互いの関係や地位を意識し明確に位置づけるようなことはなかったようです。

新時代の不良の謎に迫る!
Bさんの挑戦的な学生時代

次にインタビューを受けていただいたのは現在、20代社会人の男性”Bさん”です。
学生時代Bさんは、学校内では特に校内暴力をすることはなく、髪型や服装での校則違反をしていたとのこと。しかし、学校外では飲酒や喫煙をしたり、バイクに乗りながらタバコを吸うなどの危険行為を犯していました。こうしたやんちゃな経験を積みながらも、「根は腐ってなかった」と語ります。自分のことを「陽キャで不良」と位置づけている彼は、当時の不良たちは陽キャの割合が多く、陰キャはほとんど見かけなかったと話してくれました。

クラス内でのリーダー的存在について質問すると、「人気者の一軍男子が引っ張っていたイメージ」と答え、不良が必ずしもクラスを引っ張る、クラスの顔やリーダー的存在ではないと話し、クラス内で昔の不良ほどの強い影響力を持っていなかったことがわかります。

次に、いじめについて尋ねると、「女子内では、目に見えない形でいじめが行われていたが、それを見ていてあほらしいと思っていた」そうです。
また、「不良は上下関係が結構ちゃんとしていた」ということで、昔の不良と似たような行動や意志が、時代が変わっても今の不良に引き継がれていると言えます。

スクールカーストについて質問した際には、「自分たち不良は、スクールカーストの上位層や一軍にはいたが、一軍には色々な層が存在していた」と不良は色々な層の一つとして、一軍に入っていたようです。
昔の不良としてインタビューしたAさんも、現在のスクールカーストについて「一軍や上位層にいる子達全員が不良ではないと思います。普通の子もいれば、不良ではないけれどいじめをしている問題児もいます」と、スクールカースト上位層の中での多様化について話してくれました。
Aさんはさらに、「スクールカーストの地位を気にするがあまり、他人の子供を巻き込んでいじめにまで手をつける問題児までも昔でいう不良と一緒にするのは違うと思いますが、傍から見ると「不良」という言葉で一括りになってしまうのかもしれません」と今の不良と問題児の違いについても語ってくれました。

今の不良は「〇〇化」してしまった

現代の不良はどのように存在しているか確かめる為に、AさんとBさん、それぞれの時代の不良の存在やその行動についてのインタビューをご紹介してきました。不良が時代とスタイルを変えて、ある一定数存在し続けているようです。

「昔の不良」Aさんと「今の不良」Bさんの、2人のインタビューから、昔と今の不良の行動や傾向をまとめると(図2)のようになります。

(図2)

人間関係の持ち方やいじめに対してのスタンスについては、昔の不良も今の不良も同じ意識を持っていることがわかりましたが、それ以外の面では大きな違いがあることがわかります。
Aさんへのインタビューでわかるとおり、昔の不良は学校内では校内暴力、学校外では他校との喧嘩や暴走族への参加など、学校内外のどちらでも明らかな不良行動や違反行為が展開され、それを不良以外の人たちの眼にも触れる状況でした。
一方、Bさんが語ってくれた今の不良は、学内では、クラスの一軍で、かつ陽キャという安定した地位があり、校則違反はするものの、昔の不良が行っていたような校内暴力などの目立つ行動は目につかないようです。が、その一方、学校外では、飲酒や喫煙、危険行為などの明確な不良行動をしていました。このように、Bさんの時代には、少なくとも学内で不良的な存在や行動に触れることは、ずっと減ってきたと思われます。学外では不良行動は展開されていましたが、それは不良以外の学生には目に見えない所でのことだったでしょう。このような変化が起こったことにより、私たちは現代に不良がいなくなったように感じるのではないでしょうか。
Bさんのような不良は現代にもいることはいるのですが、今の不良はクラスの中でも学校内でも不良として見えにくくなり「“透明”化」してしまったのです。
ですから、データで見ると、ある一定数は現代にも不良は存在していると捉えられるのに、私たちはとっては「どこにいった?」と感じてしまうのです。

ここまで、現代の不良の在り方をまとめてきましたが、現代でも「どこにいった?」と感じてしまう”透明な”不良は、今後どのような存在になってしまうのでしょうか?
今後の不良の存在について考えると、今のような学校外などのリアルの空間ですらなく、ネット上など、より目に見えずらい形で現れるのではないかと思います。不良同士の口喧嘩など見る側が面白がりそうなものをSNS上に投稿し、フォロワーなど支持者や注目を集めてネット上での影響力を持とうとする、いわば「サイバー不良」のような存在が現れると予想します。
これは行き過ぎるとバイトテロや外食テロのような迷惑行為や危険行為によって世間を揺るがすことにもつながりかねません。そのような悪質な不良が現れないことを願っています。

コラム Z世代大学生による「若者論」

本論とは異なる視点で、若者たちに起きている変化や
新たな潮流を自由にレポートしてもらいました。