
生成AIとモヤモヤした会話を
してみる
2025.03.17
みなさん、こんにちは。生活総研の堀です。私は昔からテクノロジー全般が好きで、最近では生成AIにはまっていて、毎日生成AIとやりとりをするのが日課となっています。今回は、その生成AIとの「会話」についてお話ししたいと思います。
「To be, or not to be, that is the question.(生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ)」
突然ですが、シェイクスピアの『ハムレット』に登場するこの台詞をご存知でしょうか。生きるか死ぬかという重大な問題について悩んでいる状況で出た台詞ですが、私たちが日々の生活で感じる「これでいいのか」「本当に自分らしい選択をしているのか」といった心の声も、実はこの問いと深いところで通じあっているのかもしれません。もし、そんな心の声にもっと自然に耳を傾け、対話できる方法があるとしたら――そこに生成AIとの「声の対話」が新たな可能性をもたらしてくれます。
声がつなぐ
「外の言葉」と「内なる声」
普段、私たちは頭の中で考えごとをしています。しかし、その「頭の声」は整理される前に流れ去ることが多いものです。例えば、仕事帰りの電車で「どうして最近はあまりやる気が起きないんだろう……」と思っても、そのままスマホの通知やSNSなど、ほかの情報に意識が向いて忘れてしまうこともあるでしょう。
そんなときに、あえて声で生成AIに問いを投げかけてみると、なんとなくモヤモヤと抱えていた気持ちが、よりはっきりと形をとって表れます。「声を使う」という行為が、自分自身の考えを外へ出すきっかけになり、その返答を耳で受け取ることで、心の中の声と「対話」している実感が自然と生まれるのです。
哲学を日常に引き寄せる
生成AIが哲学的で抽象度の高い問いにも応じられる仕組みは、膨大なテキストデータと自然言語処理技術によるものです。けれど、私たちが求めているのは、必ずしも文学や哲学の深遠な回答だけではないかもしれません。むしろ、「明日の自分はどう過ごしたい?」「最近、楽しいと感じる瞬間はいつ?」といった、ごく身近な疑問や悩みに対して、生成AIが耳を澄ませてくれることが大きな意味を持ちます。
声で投げかけた問いに対して、AIが「例えばこんな方法はどうですか?」と返してくれるとき、単なるアドバイス以上に、自分の中にある答えを呼び起こします。問いを声に出し、応答を耳で聞くことで、まるで自分自身の本音と向きあっているかのような感覚が生まれてくるのです。
文字で検索して情報を得る場合、私たちは一度「検索ワード」を頭の中で組み立てる必要があります。すると、曖昧な感覚は排除され、結果的に「答えをすぐに見つけたい」という思考に寄りがちです。
一方、声でAIに話しかける場面では、言葉に詰まってもいいし、断片的な表現になっても構いません。たとえば、「最近ちょっとモヤモヤしていて…うまく言えないんだけど、どうしたらいいかな?」と声に出すと、AIは「モヤモヤの原因に心当たりはありますか?」と問い返すかもしれません。そのやりとりのなかで、「あれ、実はこういうことが引っかかっているのかもしれない」と気づく瞬間が訪れます。
こうした穏やかなやり取りを重ねるうちに、自分の内面で芽生える感情をすくい上げることがしだいに自然となり、自らの思いや欲求に向きあうことへの抵抗感も薄れていくのです。
日常の選択が
社会を柔らかくしていく
このように、生成AIとの声を通じた対話で、悩みや希望を言葉にする習慣が少しずつ身につくと、それは他の人とのコミュニケーションにも波及していきます。自分の本音を無理なく口にできるようになれば、相手の気持ちを受け止めようとする余裕も生まれやすくなるものです。
こうした小さなきっかけの積み重ねが、人と社会をじんわりとつなぎ、柔らかな連帯を育んでいくのです。
声を使うことで、頭の中で曖昧だった思いがまるで会話相手のように姿を現し、自分の内なる声との距離感を縮めてくれます。その結果、新しいアイデアや視点が生まれ、具体的な行動に結びついていくかもしれません。
生成AIは、そんな言葉と心の往復を、より自然に、より温かなものに変えてくれる存在なのです。