
ツカ民の増殖
2025.03.17
普段の生活のなかで見慣れた風景であっても、10分、15分くらい眺めているとちょっとした気づきが生まれることがあります。先日の夕暮れ時、中野のスーパーのレジ前を眺めていたら、買い物カゴを持たずに商品を鷲掴みにして買い物をしている人がやたらとたくさんいることに気づきました。 彼ら彼女らのことを仮にツカ民(掴民)と呼んでみましょう。
スーパーで買い物をする場合、私はまず入口でカゴをピックアップするのが常識だと思っていましたが、ツカ民たちはそれをしません。どうやら、カゴが必要なほどたくさんの買い物をするつもりなく入店しているようです。それでも買い場を回っているうちにあれこれ欲しくなるんでしょうね。ツカ民によっては4、5品を抱えるように持って歩いていて、思わずカゴを差しだしたくなります。

ツカ民は買い物内容から察するに、単身やカップル世帯の方が多いようです。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の平均世帯人員は減少を続けており、2025年段階で2.1人。単身世帯の比率も40.1%と初めて4割超えする予測です。単身やカップルの世帯であれば、そもそもカゴに入れるほどの量の買い物をする機会は少なくなります。世帯の小規模化が進むにつれ、スーパーの買い物スタイルとしてのツカ民は結構増殖しているのかもしれません。
また、一般社団法人全国スーパーマーケット協会によると、東京都のスーパーの店舗数は2014年11月時点で2,384店だったのが、2024年11月には3,041店と約3割増加しています。スーパーとコンビニの中間のような小規模な店も増えたことで、数日分をまとめ買いするより毎日ちょこちょこと買い物をする使い方がより一般的になっている側面もあるでしょう。
この話を研究所内でしたら、「私、ツカ民だ!」という人が何人もいました。あなたが気づかないだけで、ツカ民はすぐそばにいるのかもしれませんよ。はっ、もしかして、実はあなたもツカ民ですか…?
参考統計)
日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和 6(2024)年推計)
http://www.j-sosm.jp/dl/index.html
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