メタバースロマンス

メタバース♥ロマンス

2025.05.19

2025 5 月号

メタバースの可能性をいまいち信じられていなかった、研究員の植村です。流行る流行るといわれつつ、どう楽しんだら良いかわからないし、なかなか身近に感じることがない……。「オンラインゲームをする人たちのもの」の一線を超えない感じが個人的にありました。ところが最近、超身近に「メタバース、来てる」な実例を見つけたんです!

それはメタバース内の恋愛、記事のタイトルにもある「メタバース・ロマンス」でございます。

メタバース・ロマンスとは

私の従兄弟Aくんは、銀座に勤めるバーテンダー。新年会など親戚の行事で顔を合わせるたびに「彼女できた?」「できないね〜」なんて会話を何年もしていたんですが。一昨年急に実家を出て、北海道に住んでいた女の子Bちゃんと同棲を開始しました。急展開なふたりの出会いはそう、ソーシャルVR(バーチャル空間上でアバターを介して複数人でコミュニケーションを取ることができるサービス)だったのです。

メタバースで出会い、メタバースで仲良くなって付きあって、メタバースでデートして。やがて従兄弟が北海道に会いに行き、リアルで初対面。そして何度かリアル逢瀬を重ねた末にBちゃんとともに神奈川に引っ越し同棲開始。オンラインでなければ出会うことすらなかったふたりが、物理的な距離を超えて恋に落ちたのです。胸熱!このままだとただの親戚のニヤニヤ日記になってしまうため、ふたりのエピソードからメタバース・ロマンスの考察をしてみたいと思います。

① アバターは個性の鏡

ソーシャルVR上で撮ったツーショットを見せてもらったのですが、ふたりとも結構キャラクタライズされていました。こっそりBちゃんに「思ってたのと違う!と思わなかった?」と聞いたところ、そんなことはなく「ちゃんとAさんだ!と思った」と幸せそうに語ってくれました。

メタバースは現実ではあり得ないファッションや行動ができるからこそ、何にも縛られずに個性を演出できそうです。Aくんは、場所やシーンに合わせて「こういうときは、こんな自分でいたい!」と思った姿で過ごすのだそう。以下の画像はふたりのメタバース・デートの写真をイラスト化したものなのですが、このときは「この場所の雰囲気に合わせてBちゃんと同じアバターで写真を撮りたい」と思ったのだそうです!

メタバースロマンス

どんな趣味趣向を持っているかひと目で伝えられるから、そもそも価値観が合う人と出会いやすいのかも。たとえ本人より随分イケメンなつくりだったとしても、性別が違ったりもはや人間じゃなかったりしても、見た目以上にその人たらしめる情報がちゃんと伝わってくるのかもしれませんね。

② ふたりの世界は2倍に

ふたりは一緒に暮らす今も、時々ソーシャルVR上でデートをするのだとか。メタバースでしか味わえない世界観やイベントがあったり、共通の友人がいたりするようです。メタバースにはメタバースの、現実には現実の遊び方で、軽やかにふたつの世界を行き来しています。

近所で遊べるところに行きつくしてしまっても、アップデートされ続けるもうひとつの世界で遊べばいい。雨で外に出かけられない日も、一緒に新しい景色を見に行ける。世界は恋するふたりのものですが、その世界がもうひとつあるなんて。ロマンチックすぎる。さすがに本人たちはここまで言っていません、私の妄想です。でもシンプルに、一緒に遊べる場所は多ければ多いほどマンネリになりにくそうです。

確実に、オンラインゲームにも最新技術にも鈍い私の一歩近くに寄ってきたメタバース。これからもウォッチしていきたいと思います。

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