苦しいことはみんなでやろう

苦しいことはみんなでやろう

2025.07.14

2025 7 月号

みなさん、こんにちは。生活総研の堀です。私はひとりで黙々と作業するのが好きなのですが、時には誰かと一緒に作業をしたくなることもあります。今回は、そんな私にぴったりな「ひとりで集まる」という新しい兆しについてお話をしたいと思います。

静かな共同作業が生む集中力

処理しなくてはいけないレシートの山や提出期限の迫る書類を前にすると、誰でもため息が出ます。特に自分ひとりでやらなくてはいけない経費精算などはなかなかやる気が起きません。そんな面倒なひとり作業をなんとかうまくこなすために、あえて同じ作業を抱えた人たちがひとつの場所に集まり、黙々と片づけるスタイルが静かに広がっています。

例えば、 「経費精算をみんなでやろう」ということで、それぞれが領収書とパソコンをカフェに持ち寄って作業をする。そんな集まりがあると聞きます。そこでは、パソコンのキーを叩く音だけが一定のリズムで続きます。会話はほとんど交わされませんが、「みんな今まさに同じ作業をしている」という空気が、背中をそっと押してくれます。作業を終えた帰り道には、気がかりな作業を終えて気分が少し軽くなっているでしょう。

苦しいことはみんなでやろう
(※写真はイメージ)

これに似た光景は子育ての現場にもあります。保育園や小学校の提出書類は記入欄が多く複雑ですが、親同士で時間をあわせ、子どもを遊ばせながら一気に書き上げる会が開かれることがあります。 テーブルに座ってそれぞれが書類に記入をして、必要なコピーを順番にプリントアウトするだけ。誰かと一緒に作業をすることで、同じ締め切りを共有する安心感が緊張をやわらげ、書き損じのストレスをぐっと減らしてくれます。

面倒だからこそ、みんなでやろう

こうした共同行動には「社会的促進」という心理効果が働いています。同じ目的を持つ他者の存在が、集中力と作業速度を自然に引き上げる現象です。誰かと同じ目的を持ち、同じ空気を吸うことで、集中力が自然に高まり、先延ばしにしていたタスクにも手が伸びます。リモートワークで仕事場が分散した現代だからこそ、意識して「面倒を共有する場」を設けることは、働き方と心の両方を整えるひとつの手段になりそうです。

次にレシートや書類の山に気が重くなったら、同じ作業を抱える仲間を探し、場所と時間を決めてみてはいかがでしょうか。話さなくても人がいる。それだけで十分なこともあります。面倒だからこそ、みんなでやる。静かな連帯が、タスクと気持ちを軽やかにしてくれるかもしれません。

「ネタ会」とは?

生活総研では毎月1回、研究員が身のまわりで見つけた生活者についての発見や世の中への気づきを共有する「ネタ会」を開催しています。粒違いの研究員が収集してきた採れたての兆しをご覧ください。