若者30年変化 Z世代を動かす「母」と「同性」 若者30年変化 Z世代を動かす「母」と「同性」

「若者論」座談会
~Z世代TikToker篇~

博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、2024年1〜2月に19歳〜22歳未婚男女を対象とした「若者調査」を30年ぶりに実施しました。本サイトでも公開している調査結果から導かれた「若者像」について、現役Z世代のインフルエンサーである20代前半のTikTokerたちにリアルな印象を聞きました。

ロジャ

ロジャ

2001年フィリピン生まれ、22歳の動画クリエイター兼TikToker(フォロワー約18万ユーザー)。

https://www.tiktok.com/@roja_1218

榴苺(るい)

榴苺 るい

2002年東京生まれ、21歳の元銀行員の地下アイドル兼TikToker(フォロワー約1.9万ユーザー)。

https://www.tiktok.com/@haikagura_rui

間宮けい

間宮けい

1999年神奈川生まれ、25歳の動画クリエイター兼TikToker(フォロワー約41万ユーザー)。

https://www.tiktok.com/@mamiya_kei

誰とでも友だちになっちゃダメ?

まずは今回の「若者調査」で、これは“今の若者の特徴”というよりも“今も昔も変わらない若者の特徴”ととらえるべきなんじゃないか、という結果が示された性質について見ていきたいと思います。例えば、若者が持つトレンドやファッションへの関心は、30年前の調査と今回の調査で数値に大差がありませんでした。このデータを見てどんな印象を持ちましたか。

親世代の数値を見ると映画やファッションについての関心度が下がっていますが、私の父親は古着が好きだったり、映画もNetflix配信でチェックしていたりと割と今風なんです。母親はこの調査通りトレンドにはだいぶ疎いかな(笑)。

僕自身はTikTokなどのSNSを見ていて、みんなオシャレだな、かっこいい髪型だなと感じて、自然と「自分もそうしなきゃ」と感じで興味を持ち始めました。元々ファッションには興味が無くて、髪型や服装は1ミリも気にしなかったんです。でも自分でSNSをやり始めて、いざ人前に出るとなったら「ちゃんとしなきゃいけない」という意識に。3日間だけドレッドヘアにしたこともありましたね(笑)。

確かにSNSをやってると自分のキャラクターとか、映り方とか、「こういうファッションだったらみんなに好かれるよね」みたいなところから服装を考えるようになったかな。自己分析も深くできるようになって、これは仕事向けのファッション、これは自分自身が好きなファッションと切り替えられるようになりました。間をとってアレンジしたりとか…。

「いろいろなものに手を出す方だ」「衝動買いをよくする方だ」「将来に備えるより今をエンジョイする」といった項目では、今の50代より若者のほうがよりアクティブで、それを楽しんでいるという結果になりました。

今をエンジョイかぁ…。私は学校出てとりあえず銀行員になったんですけど、どうしてもアイドルをやりたくて家族の猛反対を押し切って辞めてしまいました。学生時代から、学校行くフリをしてファッション雑誌の読者モデルとして撮影に臨んだり、短編ドラマに出演したりしていて、芸能の世界に興味があったんです。父は「ちゃんと就職して成長して欲しい」と何回も言っていましたが、今しかできないと思って。でも母は応援してくれていました。母は昔モデルをやっていたから理解してくれたのかも。

青春って感じだね(笑)。僕は高校時代すごく根暗で友だちがおらず、散々イジられてきました。でも高校3年生になった時、隣の席が僕よりいじめられていた子になって、ひょんなことから意気投合。彼はSNSが得意だったので、僕も見習ってやってみようと。それがTikTokerになるスタート地点になったんです。

それで、今は友だち(フォロワー)40万人ってすごいよね。

仲間は色々な刺激を与えてくれることがあり、「仲間と行動することが多い」「仲間の溜まり場がある」という交際に関する調査でも、より多くYESと回答したのは今も昔も若者層でした。

確かに、今は仲間と行動することが多いですね。「自分は誰とでも友だちになれる方だ」という項目でも圧倒的に若者層の方が高い数値ですが、20歳前後の頃はそういうマインドを持っていないといけないと思っていました。でも23歳くらいになって、誰とでも友だちになっちゃダメだと気づいた。周りに合わせようとすれば合わせられるけど、自分らしさが無くなっている感じもあって…。

僕は広く深く仲良くなりたいんです。どこ行っても「おお!◯◯!」と言えるような友だちが全国にいればいいなと思って、片っ端から友だちを作っていくタイプ。でも片っ端からダメージを食らっています(笑)。色々騙されて痛い目にあったこともありましたね…。

私はわりと誰でも仲良くなるタイプですが、一人行動も好きで、普段から「仲間を作らなきゃ」とあまり意識していないかも。 どっちかと言えば広く浅く付き合うタイプで、深く付き合ってトラブルに巻き込まれるのはちょっと怖いとすら思ってます。程よい関係性をみんなと保つようにしてますね。

モチベは自分でアゲるもの?

次は“今の若者の特徴”として考えられている特徴が、実は時代とともに変化した“若者だけではなくその他の年代においても共通の特徴”なんじゃないか、という結果が示された性質について見ていきたいと思います。 例えば興味深いデータとして「働き方」に関する調査があります。「自分にできそうなことだけやればよい」「気楽な地位にいる方がいい」「仕事はすべて任される方がいいと思う」というモチベーションに関わる項目では、現在の20代、50代ともにほぼ同一の水準で“あまり肩肘を張らない”的な結果です。

面白いですね。みんな安定志向になっているのかな…。私的には、苦手なことを克服した方が武器になるのでは、と思っていますね。

僕はTikTokなどSNSを始めて7年経っており、正直モチベーションが下がっているという自覚があります。でも下がったままにしてはいけないので、どうやったら上がるか日々考えているところです。新しい風を入れるため、裏方としてロジャくんにスタッフとして入ってもらったのもその一つ。新たな試みを次々チャレンジし、意識的にモチベーションを上げています。

僕はモチベーションというのを意識したことがないんです。以前は自己満足で動画をひたすら出していて、いつしか仕事みたいな感覚になっていったんだけど、やる気の上がり下がりは感じたことがなかった。でもファンが増えて幸せになっちゃったことで、逆にモチベーションが上がらないこともあるだろうなと感じます。

歌って踊れないアイドルもアリ?

調査結果を見ると、「今の若者はこうじゃん」と一般的に思われていることが、実際には違っているということも多く存在しました。例えば「今の若者はベンチャー志向が強い」という推測。実際には6割以上の若者が大企業志向であり、30年前の調査とは真逆の結果になっています。

へぇ〜、意外な結果。「学歴は高いほどいいと思う」という調査で「YES」と回答したのも、昔の若者が高くて、今の若者が低いと考えていたので逆でしたね。地元の友人たちと、我々インフルエンサーだと感覚がちょっと違うのかもしれません。

インフルエンサー界隈は確かにベンチャー志向だよね。みんながっちり縛られるのが嫌いだから(笑)。好きなことをしていきたいのがクリエイター。なので多分、大企業じゃ無理なんだと思う人も多いのかなと感じます。

落ち着いて考えたら絶対大企業だよね。大企業でやって、環境変えたくなったらベンチャー行けばいいんだし。

サステナビリティやSDGsといった言葉が一般化し、環境保護への取り組みも世間に認知されています。そんな令和の若者は30年前の若者より「社会意識が高い」印象もありますが、実際にはどんな結果だったと思いますか?

う〜ん、どうかな。低い印象がありますね。

私もそう思う。

そうなのです。じつは若者の社会意識は低下しているという結果になっています。

そうですね、政治という分野を考えても周りは全然選挙に行っていないと思います。自分たちが投票しないと日本の未来は変わらないと心のどこかで感じていても、誰がどんな政策を掲げているのかわかりにくいし、そんな状態で適当な投票するのも良くない。みんなそんな心境なんだと。

今はネットが普及して知れる情報が複雑になりすぎたから、本当はもっと深い部分を知るべきなんだけど、自分たちの理解が追いつかない部分もあって“手を出せない”という…。

続いて、今の若者は自己肯定感が低いと思いますか? それとも高いと思いますか?

昔と比べたら低いと思う。

私もそう思う!

僕は高くなったと思うな。
そんな不便も無いと思うし、充実しているから…。

30年前の若者とデータを比較してみると「自分の限界というものを知っている」が上昇していながら、一方で「自分のことが好きだ」という項目も同時に上昇しています。つまり、今の若者は自分の限界をわきまえながら、同時にそんな自分を肯定できる人が多い。そんな自分が好き、ありのままの自分で生きたいという風潮です。

SNSで、自分より優れている人や、尊敬できる人、悔しいなって嫉妬できる人をあえて目にすることで、自己肯定感を上げたり下げたり、バランスを調節する人もいるよね。ちょっと自己肯定感が低いくらいの方が、頑張れる気がするんです。

僕は自己肯定感が常に高いですね。なんだかわからないけど普段から絶大な自信を持っています。中学校の頃、「今、ハンドスプリングできそうだな」と思い立って練習無しで成功したことも。なので自己肯定感、つまり自信を持って取り組むことは良いことだと思っています(笑)。

私もアイドル始めてまだ1年ほど。やり始めた頃はダンスも歌も未経験だったんですけど、ある時「歌って踊れないアイドルでも良くない?」とプラスに考えるようになった。会場を一番沸かせる盛り上げ方は無いかなと研究してみたり、見てくれた人に少しでも笑顔になってもらえないかなと考えたり。そんな自分が好きになれるよう日々努力しています。

昨今日本の経済成長は鈍化しており、「今の若者は低成長の時代でかわいそう」という声も聞かれますが、30年前と現在で、若者層における「生活の充実感」はかなり上昇しています。

私も幸せを感じていますよ。昔のバブル期とか知らないので、その時と比べられても「別に…」っていう感じで。

僕も幸せです!

僕もそうですね。SNSでの発信を仕事にできる時代っていうのは幸せなことなのかもしれないねと。30年前は絶対無かった。

恋愛より自分が好きなコトが優先?

続いて男女交際についての調査結果です。「恋愛願望がある方だ」という調査でYESと回答した若者はこの30年で約15%も減っています。「デートする相手がいる」という項目も同じく減少。若者の“恋愛離れ”が浮き彫りになった形です。

恋愛願望は無くはないといった感じ。ただ、今は別に良いかなって温度感です。自分の好きなことができて、相手も好きなことをするという関係性がとれれば良いかなと思いますが。交際ってなると相手を気に掛けることが必要になるので、周りの友だちの話を聞いていると「一人だと気が楽だよね」っていう子も増えましたね。

インフルエンサーという活動も影響しているかもね。恋愛しづらい環境。女の子と2人で動画撮ることも多々あるので、普段から仲良くしなきゃいけない。なのでご飯食べに行ったりとか当たり前のようにするし、この業界内の関係性は濃いので、恋愛で縛られたりすると身動きがとれなくなっちゃうことも。恋愛願望はあるのですが、やっぱりこの仕事が楽しいですし優先順位が高くないという感じでしょうか。

そんな影響か、「一緒にいて楽しい相手」に同性の友人を選ぶケースもより増えているようです。

落ち込んだ時に話す相手は異性が多いのですが、嫌なことを忘れさせてくれるというか、一緒に馬鹿してくれるというか、そういう時は気を使わない同性の方が多い。「今から海に行こうぜ」とかそんなノリでフッ軽で付き合ってくれるような相手ですね。女の子だったら準備があったりするし、やっぱ同性の方が誘いやすい。

僕も一緒で、落ち込んだ時は異性に相談することが多くて、解消する時は同性だね。この前も、急に深夜0時の渋谷に呼び出し「朝までわらしべ長者しよう」と誘ってきた男仲間もいました(笑)。動画は撮らなかったんですが、普段からそんな感じで遊んで「次は動画にしようよ」と話して笑って。プライベートからそんなノリなんです。

私は男性脳なのか、割と一緒。落ち込んだら女性に話すんですけど、女性って悪ふざけとか苦手な人が多いので、はっちゃけるってなったら男性が多いかもしれないですね。

でも病んだ時、毎回僕に電話してくるじゃない。それは僕を女性って見ているってこと(笑)?

いやいや、そうじゃない(笑)。インフルエンサー仲間だから話しやすいんだよ。

僕には連絡無いよね…。

「異性の友だちとHな会話をすることに抵抗がない」という調査では、その数値が下がっています。また「お付き合いしていても他の人ともデートしたい」という項目でも大幅に減少。つまり、現代の若者は性に関するコンプライアンス意識がより上昇していると読み取れます。

動画配信の場ででそういう話や単語を言うと、システムからBANされるケースはありますね…。

自分的にはコンプライアンスは上がっていないんだろうけど、プラットフォームが厳格化しているから、必然的に意識して気にするようになっているんだと思いますね。

異性の友達と仮にそんな会話があっても、相手に「セクハラ」と思うことも無いですね。調査結果にあった誰かと付き合っている時に、別の異性が気になってデートしたいっていう気持ちも無い。ただ、地元の友だちからはよく聞きますね。浮気したとかされたとか。でもインフルエンサー界隈だと「異性と遊びたいなら、そもそも付き合わない」という考えが多いかも。

過去の恋愛でも同時に複数人を好きになったことがない。というか、僕はお付き合いしている人がいないので、その余地すらないのですが…。

今回の取材から若者の考えの裏側にあるものを、より詳しく知ることが出来ました。第二弾も公開予定ですので、ぜひ楽しみにお待ち下さい!

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