若者30年変化 Z世代を動かす「母」と「同性」 若者30年変化 Z世代を動かす「母」と「同性」

「若者論」座談会
~現役大学生篇~

博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、2024年1〜2月に19歳〜22歳未婚男女を対象とした「若者調査」を30年ぶりに実施しました。本サイトでも公開している調査結果から導かれた「若者像」について、現役大学生のお二人に率直な意見を聞きました。

平野城太郎

平野城太郎

慶應義塾大学総合政策学部4年。
大学では防災政策・対策を研究中。
趣味は温泉・サウナ巡り。

大矢健人

大矢健人

慶應義塾大学総合政策学部3年。
大学ではグリーフサポートを研究中。
趣味は筋トレ・人とかかわること。

現役大学生のカルチャーへの意識とは?

まずは今回の「若者調査」で、これは“今の若者の特徴”というよりも“今も昔も変わらない若者の特徴”ととらえるべきなんじゃないか、という結果が示された性質についてみていきたいと思います。グラフからは、今も昔も若者はコンテンツ、ファッション、美容に高感度であることが分かります。お二人はこの結果を見てどんな印象を持ちましたか。

感覚としてはどの項目もこの数値通りのイメージです。ただ、映画においてはアクセスの仕方が相当変わってるような気はしていますね。例えば映画館で映画を見る場合、2時間はかかりますが、今はNetflixとかそういうサブスクサービスがあるので30分だけ見て、後でもう30分だけ見るみたいな形が増え、視聴スタイルは大きく変わってる気はします。

最近映画館で見た映画はありますか?

『名探偵コナン』(笑)。シーズン化されているものなので毎回映画館で見ます。あとは『THE FIRST SLAM DUNK』は見たかな。僕は特に音が好きなので、映画館に行きたいっていうときはそこをこだわって聞きたいときだけ。なので頻度は低めなんです。

ファッションについてのこだわりはありますか?

ブランドものは、着てもワンポイント程度というか。派手なのは敬遠しています。体を鍛えているので、ジム行く際はパンツと靴下はトレーニングウェアで、上だけ着替えるみたいな手軽なケースも多いです。

僕は全くこだわりはなくて、ブランド物にも興味がありません。でも、ちょっと変わった奴に思われたいなというか、デザイン的にオシャレで特徴的な服には興味がありますね。自分らしさを出せるところは出して、みんなに覚えてもらいたいと言いますか……。

日常生活で大切にしてることって?

「いろんなものに手を出す方だ」「衝動買いをよくする方だ」「将来に備えるよりも今をエンジョイする」という項目も昔と傾向が変わりませんでした。

買物はよくしますが、ネット上で衝動買いはしないですね。ECサイトでカートにアイテムを入れるだけ入れて、後々冷静になって「これ本当にいるかな」と思い返すことが多いです。どっちかというとアウトレットなどに行って一気に購入する場合の方がメインかな。

僕も全く一緒です。生活の不満を解決するために買ってる側面はあるなと思いましたね。例えば卒論を書いているときに、もう1台画面欲しいなと思って、モニターと机とアームを買って……。ちょっと高くなっちゃいましたけど、生産性や生活の質は向上したと思います。

ただ単純に今をエンジョイするだけではない感じですね。

今より将来を考えてるって言うわけではないのですが、ちゃんとしてないのが嫌なんですね。グダグダしてたり、優柔不断だったりすると自分を嫌いになりません? 休みの日に1日グダって何もできなかった日って、気分的に嫌じゃないですか。おそらく行動や生活の質を高めることが、自分的なエンジョイに関わってくるのかなと感じますね。

僕は全く異なりますね(笑)。生活の質については、僕はどちらかと言うとだいぶグダグダなので、毎日バラバラのとき間に寝て、毎日バラバラのとき間に起きてたりします(笑)。行動に移すときも、「じゃ、そろそろやるか」みたいな。ただ彼の性格が特別なんじゃなくて、結構同じような考えの仲間は多い。2極化じゃないですけど、だいぶ分かれている気がします。

でも日本全体で見たら僕みたいな性格は少数派なんじゃないですか(笑)。より良い自分でいる方が、自分的にも気分が良いんですよね。

消費の観点では、流行、外観、デザインを重視するのも今と昔の若者層の共通点になっています。

僕は外観より機能重視かな……。パソコンなんかは特に。洗練された結果、デザインが良くなってることはあるのかなと思いますが、周囲にこう見られたいと意識して物を買うことはあまりないかも。

見栄えは自分の価値観的にある程度は気にしますが、流行に関してはむしろ乗りたくないタイプ。髪型でもファッションでも、いわゆる量産型なトレンドは意識しない方だと思います。

浅い友だち付き合いは好まない?!

今も昔も、若者は誰かと一緒につるみたいと思う傾向もあるようです。そこについてはいかがですか。

高校とき代の友だちとかはそう考えているかもなぁ……。友だちと常につるんでいるのが落ち着くみたいな。ただ僕の場合は、大学のサークルとかそういうコミュニティでいろいろな人とつるみたいとは思っていないんです。

うん。僕もほとんど一緒な感覚です。

ただ人には興味があるので、その人はどんな価値観があって、どんな考え方なのか、そしてどんな仕事をしているのか。そんなバックグラウンドを知れることは楽しいと思っています。なので、単純につるむための友だちづくりは求めていないですね。

就職や社会意識における価値観とは?

調査を分析すると、世の言説に見られる若者像と、実際の若者像に大きな「乖離」があることに気づきました。例えば「若者はベンチャー思考」と思われていたがことが、実際は「大企業志向」が強かった。これらのデータを見てどう思われますか。

納得の結果ですね。長期インターンに行く学生も増えていますが、そこで多分ベンチャー企業の様子を知って、「なるほど。じゃあファーストキャリアは大企業で行こう」「性に合うからベンチャーにしよう」と、長い人だと大学の4年間をかけて決める。そのなかで、大企業に行くべきと判断する人は一定数いると思います。
ベンチャー企業は現場で会社の事情を知れることが大きく、元大手メーカーの方など色々な人が集まっているので、学生にとっても色々なことが学べる。でも就労観に関して言うと、もっとマニュアルが整っている方が自分には合ってるかもと考える若者が最近は多いのかもしれません。

それこそベンチャーと大企業でベンチャー選ぶ人って、多分そっちの方が楽しいとか、やりたいことがあるとか、 そういうので選ぶと思うんです。でも僕は、1回大企業入ってある程度安定してからやりたいことを実現する順番もありだと思います。

続いて若者の社会意識についてですが、令和の若者はエコや政治について関心が高そうというイメージがありましたが、実際は30年前の方が高いという数値がでました。

在日外国人の生活支援や文化教育などに取り組んでいる友人は多いのですが、環境問題系はあんまり身近でない気もしています。災害ボランティアとかだったら困っている人がいるので分かりやすいのですが、環境問題は「無形」なのでやっている人が周りにあまりいないかな……。

それこそ、僕らが環境についてちょこちょこ気を付けたところではだめで、何かもっと大きいものを気をつけなきゃ変わんないだろうって思っちゃうんですよね。プラスチックストローを紙にしようという動きがありましたけど、個人的にはもっと他にやるべきことがあるのでは?!と考えちゃいます。

あと、単純に生活に余裕ないからというのもある。割高な物に替えるのが苦しいっていうのが、正直なところなのかもしれない。

今、幸せですか?

自己肯定感が低いと思われがちな若者ですが、むしろありのままの自分を受け入れるようになったというデータも、今回の調査結果から判明しました。高い理想を掲げるのではなく、自分の限界について意識する人も多いようです。

僕はありますね。限界っていう表現はちょっと嫌ですけど、できることとできないことは、すごく分けて考えています。例えば、プレゼンの資料作るのがとにかく苦手なんですね。

そうだよね(笑)

「お前の作る資料、行政資料っぽくて全部詰め込みやがって」とよく言われて……自己嫌悪にはなるんですが、僕はそこを解決するため全部友だちだちに作成をお願いしています。「お願いします……。」と頭を下げて(笑)。その代わり、僕の得意なものをやってあげる。例えば、 一緒に自己分析で手伝うよとか。そういうトレードオフ関係の存在が僕にはいますね。できること、できないことを知っている仲間と交換するみたいな。限界っていう言葉では無い気もしますが、課題は理解しているつもりです。

自分の得意不得意とかそれはちゃんと理解できてますが、まずはその物事をやってから考えますかね。ある程度自分はできんじゃね?! って基本的に思っちゃうんで。やってみてダメなら諦めますが、得意不得意とか好き嫌いとかをどの程度自分が把握しているかどうかで、決まってくるかもしれないですね。

今の若者は低成長の時代でかわいそうと言われることもありますが、むしろ生活の満足感や幸福感は上昇したと回答する人が30年前より多くなったというデータもありました。お二人は今幸せですか?

幸せか不幸かと言われたら幸せと答えると思います。
僕は、たまたま育ってきた環境が恵まれてたんだと思うので、そういう意味では親には感謝しています。

うーん、僕もYesと答えるかも。正確には「マイナスではない」というのが正直なところ。

過去を振り返ると、自分の価値を自分で理解できたときに幸福を感じましたね。例えば何か賞を取ったとか、表彰されたとか、褒められたとか。自分はすごいっていうのが可視化されたとき、自分の価値を自分でみることができて自信がつく。「幸福」っていう言葉より「自信」かもしれないね。

僕は他人の悩みを聞いているとき、相談に乗ってるときがすごく幸せに感じるんですね。信頼されてるんだなと感じますし、これだけ打ち解けて、自己開示してくれてるんだって感じて。そういう信頼に足る人物であるということの証明だなって感じるんです。

確かに頼られたときはそうだよね。人から見たときの自分の価値を認識できるタイミングだもんね。

今回は現役大学生のお二人に独自の価値観をお話していただきました。取材のときに熱心にお応えしてくださったお二人の姿が印象的でした。
インタビューにご協力いただきありがとうございました。

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