進貨論コラム

20代が語るキャッシュレス先進国スウェーデンの状況

キャッシュレス化が生活者の意識や行動にもたらす影響を探るために、 スウェーデンから来日している20代の生活者4人にヒアリングを行いました。

20代はもはや「キャッシュレス・ネイティブ」

4人が自分でお金を扱うようになったのは、12、13歳頃、家から離れた学校に通うようになった時に、親からカードをつくってもらってからだそうです。幼少期から現金なしで買い物などができた、いわば「キャッシュレス・ネイティブ」の世代。20代になった今では、現金を使う機会がより少なくなっているようです。

リンダ:現金を持ち歩くなんてありえない。ATMは最近1年で1回しか行ってない。
リサ:たまに現金限定のパーティがあると、学生がその時しか現金を引き出さないものだから、ATMに長蛇の列ができている。
エーリン:母親はクリスマスプレゼントとしてお金を電子的に送ってくれる。

スウィッシュで、お金のやりとりが活発化

決済・送金アプリ「スウィッシュ」は、公共交通機関での一般的な支払い方法になっているほど普及し、生活のキャッシュレス化を一層推し進めているようです。

ペッテル:友達と外食する時は、ひとりが代表して全員分を支払って、他の人は自分の分をスウィッシュで代表者に送金するのが普通。その場で送金が確認できるから便利。
リンダ:レストラン側もその方法に慣れてしまったので、ひとりずつ払おうとすると混乱してしまう。
リサ:友人とのお金の貸し借りが気軽なものになった。お金を立て替えた時に、現金だといくらだったか覚えているのが面倒だけど、それがなくなった。
ペッテル:立て替えた分を現金で請求する時は端数を丸めて『だいたい50クローナ』と言っていたけど、今はスウィッシュだから『51クローナ返して』ときっちり言うようになった。※1クローナ=約13円(2017年12月現在)

お金に対する感覚が変化

スウィッシュによってキャッシュレス生活がさらに便利になったことは、生活者のお金に対する感覚にも影響を与えているようです。

リンダ:スマートフォンでお金を使えるようになってから、お金は常に自分のそばにあるものになった。『お金を持っていかなきゃ』と意識することがなくなった。
エーリン:自分がお金をいくら使っているかを、はっきり意識できるようになった。スウィッシュは100クローナ送金するなら、スマートフォンに100クローナと打ち込む必要があるので金額に意識的になった。クレジットカードだと、お店に言われるままにカードを差し出すだけなので、使いすぎが心配。
ペッテル:自分の資産は電子的に記録されているという感覚があるので、現金の捉え方が変わった。たまたま小銭があると『あぶく銭』に思えてくる。ポケットに入っていた小銭をゴミと一緒に捨ててしまうこともある(笑)。

お金による助け合いが盛んに

スウィッシュによる送金の手軽さも手伝って、寄付やクラウドファンディングが盛んになっているそうです。

リンダ:団体宛てではなく、困っている人の電話番号宛てに直接送金できるところがいい。難民収容所の支援に関わっている友人が、個人で寄付を集めていた。
リサ:近所でジャケットを持っていなくて寒いって人がスウィッシュで寄付を募っていた。SNSでは『今日は私の誕生日。もしお祝いしてくださる人は、こちらの慈善団体に寄付してください』というメッセージをよく見かける。

お金がコミュニケーション道具に

キャッシュレス化による気軽な送金システムは、スマートフォンで人にメッセージを送るのと同じような気持ちで、お金を送る新しいコミュニケーション・スタイルをも生み出しているようです。

リンダ:スウィッシュはお金にメッセージを添えて送れる。祖父は私にメリークリスマスのメッセージと一緒にお金を送ってくれる。けっこう楽しんでいるみたい。
リサ:仲の良い人とやる『スウィッシュバトル』という遊びがある。最初にこちらから5クローナ送ったら、相手がすかさず10クローナ打ち返してきて、こちらも負けじと15クローナ返すのを延々とやる。
ペッテル:友人からスウィッシュでの入金のお知らせがきて、『今日デートなんだろ? このお金で楽しんでね』とのメッセージが添えてあった。でも金額を確認したら、たったの1クローナ。これも仲良しの間での冗談。
リサ:スウィッシュは個人間送金だと手数料はかからないけど、団体や企業への送金には受け取る側に手数料がかかる。これを逆手にとって、人種差別的な活動団体などにわざと少額寄付することがある。寄付金額を受け取り手数料が上回るので、嫌がらせをすることができる。金額的には小さなダメージにしかならないけど、批判の意思表明はできる。

この記事をシェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加

その他の研究をキーワードから探す