進貨論コラム

【有識者ヒアリング】
個人間送金で日本人の現金主義を変える

仮想通貨やフィンテックなどの技術革新に呼応するかのように、日本で新しいお金との向き合い方を生み出そうとする取り組みが徐々に広がりつつあります。
その先端を行く有識者の方々に、そこにかける思いを聞きました。

第一回は、日本人の現金主義を、個人間送金の敷居を大きく下げることで変えていこうとする
鷹取 真一氏(株式会社 Kyash 代表取締役社長)
にお話を伺いました。

現金のやりとりのストレスをゼロにしたい

Kyash(キャッシュ)は無料で個人間の送金ができるアプリです。LINEやメッセンジャーでつながっている相手とも、webサイトをシェアするのと同じくらいの簡単さでお金を送りあうことができます。送金時点で相手側が「Kyash」アプリを使っている必要もありません。

私自身は、もともと銀行に入行し、転職したコンサル業界でもモバイル決済市場を担当していたこともあって、日本の送金に関する業界構造上の手間や手数料などの不合理をなくしたい、という思いを持っていました。また、ひとりの生活者としても、いろいろなものがデジタルになるなかで、なぜお金だけが時間的・空間的に拘束されているのか、という疑問があったんです。
そのため、私たちがサービスのミッションとしているのは、価値の交換手段としてのお金を、何の障壁もなくスムーズに移動させることです。現在はスマホアプリがメインですが、将来的にはデバイスに依存する必要すらなくなるはずだと考えています。

よく日本人は現金主義だと言われますが、そんなことはなく、単純に圧倒的に便利なものがこれまでなかっただけなのではないでしょうか。利便性を極めれば、キャッシュレス化は進んでいくと信じています。

無料送金アプリ「Kyash」

無料送金アプリ「Kyash」

39(サンキュー)の送金が生まれる

これまでは個人間で現金を渡すにも、銀行に振り込むにも手間や手数料がかかりました。しかし、その敷居が圧倒的に下がると、これまではそのような不合理が邪魔をして立ち消えていた少額の送金が、日常的に立ち現れてきます。

例えば、Kyashユーザーの中では「39円」を送り合うという新しい文化が生まれています。何か人にやってもらった時の、「サンキュー(39)」ということですね。金額の問題ではなく、ほとんどLINEのスタンプのようにコミュニケーションの記号としてお金がやりとりされているのが面白いところです。
何か人に情報をもらったり、頼み事をする時に、Kyashで先に500円とか1000円を送金しながらお願いするような行動も生まれてくるかもしれませんね。

セルフ・クラウドファンディングも容易に

これからは、少額の集金も劇的に変わっていくはずです。例えば誰かの誕生日プレゼント代金をみんなから集金する、というような時にも、集金の手間や手数料がかからなくなりますよね。
これは、誕生日プレゼント代金の集金の例にとどまらず、今までクラウドファンディングなどのプラットフォーム上でしかできなかった少額の出資や支援も、個人がより自由にできるようになるということです。

プラットフォーム上で成り立つ評価経済の一番の問題は、声の大きい人しか享受できず、他の人はやる気を失っていく、ということだと思います。自分のネットワーク上で集金が容易になると、価値を感じる人に対して容易にその価値を送れるのではないでしょうか。
それに、クラウドファンディングは活用できるシーンが限られることもありますが、いつでもどこでも少額の送金が容易になると、企画などは必要なく、瞬間的な人のチャレンジを応援する、という人も増えていくかもしれません。
そうすることで社会全体としても、価値の分配がもっと適切になっていくのではないかと考えています。

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