【有識者ヒアリング】
価値観にそったお金の使い方支援で幸福をつくりたい
仮想通貨やフィンテックなどの技術革新に呼応するかのように、日本で新しいお金との向き合い方を生み出そうとする取り組みが徐々に広がりつつあります。
その先端を行く有識者の方々に、そこにかける思いを聞きました。
第二回は、家計管理を通して、個々の世帯にとっての幸福とお金の関係を新しく結び直そうとする
森裕子氏(株式会社 マネーフォワード PFM開発本部 本部長)
にお話を伺いました。
ミッションは生活者の幸福支援
「マネーフォワード」は、複数の銀行口座やポイント残高、クレジットカード利用履歴などを一元管理できる自動家計簿・資産管理サービスです。お金の使途を自動で分類して家計簿をわかりやすくするなど、様々な機能があります。
現在のユーザー数は550万人(2017年10月時点)となり順調に伸びていますが、そこで満足はしていません。自分の家計簿をみて家計の改善活動をするのは、意識の高いほんのひと握りの人です。私たちは改善活動をする人を増やすことを次の課題と捉えています。
私たちのミッションは、単に貯金の支援ではありません。お金を多く持っていても生活に満足しない人が増えている時代に、生活者が幸福になるよう支援することがミッションだと考えています。
お金のことを考えたくない生活者
ユーザーにお話を聞くと、格差拡大や年金が将来もらえるかなどに不安を感じている方が多いです。にもかかわらず、お金の改善活動に人が動かないのは、人はお金のことで頭を使うのが好きではないからです。趣味などに比べれば、お金は「考えなきゃいけないこと」の範疇に入ってしまうのです。私たちはこの壁を越える方法をいつも考えています。
価値観が近い人の話は聞きたい生活者
アプリで「食費は何%以内に抑えましょう」のような紋切り型のアドバイスをしても、人は動きません。でも、生活者は自分と同じ価値観の人の経験談や失敗談は聞いてみたいものです。例えば「将来子どもを私立学校に入れたい」人は、同じ考えの人が何にお金をかけているのか知りたいでしょう。30代の人にとっては、同じ価値観の40代・50代の話も参考になるはずです。私たちは、もっとデータを貯めて価値観の近い人を選別できるようになれば、もっと人が改善活動をしたくなるようなアドバイスができると考えています。
価値観にそったお金の使い方を支援したい
私個人にも「自分はお金を使い過ぎではないか」と悩んだ時期がありました。そんな時、同じ境遇の人から「子どもが小さい時は借金してでも旅行に行くべき」という話を聞いて、自分を肯定された気がしました。私たちのサービスも個々人の異なる価値観にそって、幸福に直結するお金は使い、そうでない部分を節約するようなお金の使い方を支援するものでありたいのです。
そのために将来的には、入出金履歴や残高だけでなく、お金が動いた時に嬉しかったのか、ストレスだったのかの気持ちまでを記録できるようになるといいと思っています。金額の記録だけでみると趣味に使い過ぎであっても、気持ちの記録をみてその人の幸福につながるとわかれば、それも良しと判定できます。そうして、幸福度を最大化するお金の使い方を提案していきたいです。