育てるデジタル、信じるアナログ
両利き化する生活者
デジタル化が進む中で、アナログ的価値を再評価する兆しを分析。双方に価値を見出し両利き化させる生活者の姿を発表。
デジタル化の利便性の裏で、情報疲れなど新たな問題意識が生じています。データから、デジタル化の現在地と生活者が抱える心のモヤモヤを解き明かします。
| 調査地域 | 全国 |
| 調査対象 | 15~69歳男女 |
| 調査人数 | 5,000人 |
| 調査時期 | 2025年3月3~5日(第1回:2024年3月22~25日) |
| 調査手法 | インターネット調査 |
| 調査機関 | QO株式会社 |
まず、日本におけるデジタル化の歴史を振り返ってみましょう。生活者にとっての「デジタル元年」は、Windows95が発売され、インターネットが一般家庭に広がり始めた1995年と言えるでしょう。その後、2008年頃からiPhoneの登場でスマートフォンが浸透しSNSが拡大。そして2015年以降、コロナ禍を機にキャッシュレス決済やリモートワークなど、生活のあらゆる場所でデジタルは存在感を増しています。

私たちの調査から見えてきたのは、生活のデジタル化が領域によって濃淡をつけながら、着実に、しかしゆるやかに浸透している実態です。30の行動分野のうち、最もデジタル行動比率が高かったのは「料理レシピを見る」(65.8%)でした。これはレシピを見て料理する機会が3回あれば、2回はサイトや動画を見るという平均的な姿です。一方で、「恋愛」や「旅行」といった身体性や深いコミュニケーションが求められる領域では、まだデジタル行動の比率は3割に満たないのが現状です。






























グラフは2025 年調査のもので、平均的な生活者が各分野においてどれくらいの比率で
デジタルな行動とアナログな行動を使い分けているのかを示す。
点線は前回2024年調査時のデジタル/アナログの境界線。具体的な聴取・算出方法は「調査概要」を参照。
デジタル化がもたらした恩恵は計り知れません。「便利になった」「効率が良くなった」と感じる人は約7割にのぼります。


さらに、「情報感度が上がった」「新しい趣味や興味が増えた」という声も3割以上あり、デジタルが私たちの世界を広げ、知的好奇心を満してくれていることがわかります。

1日あたりのメディア総接触時間は2006年から約105分も増加しており、私たちはより多くの情報に触れ、時間を有効に使い、興味の幅を広げているのです。

「行動:デジタルとアナログの使い分け比率」で紹介した行動比率が示すように、生活のデジタル化は少しずつ進んでいます。一方で、自分の中でのイメージとして、デジタルとアナログのどちらが増えたかを生活者にたずねると、ファンイベントや旅行など、「アナログが増えた」と感じる人の比率が1年前の調査より高まっている分野が多く現れます。実際の行動有無とはまた違って、生活者の心の中では、アナログなものの存在感が増しているようです。
矢印の起点は2024年調査、
終点は2025年調査の回答比率を示す

デジタル化が進む一方、生活者は今後も積極的にデジタル行動を増やしたいと考えているのでしょうか。私たちの調査で「これからどちらの行動を増やしたいか」をたずねたところ、意外な結果が出ました。全世代平均で「アナログ行動を増やしたい」(22%)が「デジタル行動を増やしたい」(17%)を上回ったのです。どうやら、デジタル化が進んだ生活に馴染みつつある生活者の中で、ちょっとした「モヤモヤ」も生まれ始めているようなのです。


ネットにずっと繋がってるのが気持ち悪いっていうのがありまして。
スマホから離れたい時があって、この本読んでる時はそのスマホを1回置いても離れなきゃいけないなっていう。
(スマホをスリープさせるアプリは)
つい触っちゃうようなものなので、そのあえてスリープさせることで、スマホ触らなくなるから勉強に集中できるっていうのもあって。
上の子は水泳に行かせてるので、もうスポーツやってると絶対に物理的にそういうデジタルデバイス触らないって、もうそれがありがたくて。
弟が1日に何時間もゲームしてて、本当に怖いなって。どんどん機械化が進んでって、将来どうなっていくのかなって心配がありました。
こうした意識は、定量調査でも現れています。「情報に圧倒されることが増えた」と感じる人は3人に1人。「ストレスが増えた」「疲れやすくなった」という人も4人に1人以上にのぼります。便利さと引き換えに、静かな「デジタル疲れ」が広がっているのです。

デジタル化による購買関連の意識変化を聞いた項目でも、興味深い傾向が見えてきました。情報感度が上がり、新しい興味を持つ機会が増えたにもかかわらず、「よく知られているメジャーな商品を買うことが増えた」「同じブランドや商品をリピート買いすることが増えた」と答えた人の方が多いのです。

その背景には、レビュー情報やレコメンド機能の存在があります。失敗しないためのレビュー、便利なレコメンド。それらは私たちの選択を賢くサポートしてくれる一方で、無意識のうちに行動を「固定化」させているのかもしれません。
洋服を買うときは購入者のレビューを必ずチェックする(30代女性)
趣味の陸上関連の動画が頻繁に流れてくるようになって、さらによく見るようになった(40代男性)
飲んでいるサプリを買ったのは口コミで評価が高かったから(40代男性)
「誰か私を見てる?」と思うほど悩みや興味に合った情報が出てくる(60代女性)
商品は膨大にあるけど結局、高レビューのものを選ぶからみんなと同じ服になってしまう(20代女性)
めんどうくさがりなので前買った店から再入荷のお知らせが来たらつい買っちゃう(30代女性)
レビューの可視化やレコメンド機能はデジタル化のメリットですが、その裏側で、行動が固定化されてしまっていることに生活者は薄々気づき始めています。
接触情報の増大
選択肢は増え、
興味も広がった
咀嚼しきれなく
なってきた
レビューの可視化
“鉄板”がわかり
失敗が減った
無難な選択を
することが増えた
レコメンド機能の発達
先回りした提案で
便利になった
新しい出会いは
減ってきた
デジタル化がもたらした進化は、生活者に新たな葛藤を生み出しています。上記のメリットの裏側で、自分で選びとる喜びや、偶然の出会いに心躍らせるような「充実感」や「自主性」が失われているのではないか? 生活者は、そんな漠然とした危機感を抱き始めているのです。
みえてきたのは、
デジタル化が進むなかで感じた
違和感を出発点に、
自分自身の欲求を進化させ、
新たなデジタル/アナログ行動を生み出す生活者の姿です。