STAGE2
賢者の洞窟
有識者たちは「タダ・ネイティブ」をどう分析するのか?
STAGE 2-2
敢えて、
「いい子」の逆を攻めたい。
和田さんから見た、「最近の子ども」の印象は?
コロコロコミックの読者はほとんどが男子で、特に小4~小6の子どもたちが中心です。今の子って「いい子」ですよね。
今回の子ども調査の結果では、自分はやさしい性格をしていると思っている子が増えているようですが、ホントにやさしくなっているように思います。親の言うこともよく聞きますしね。あまり冒険をしないというか、突飛なことはしない印象です。そういうモチベーションが子どもたちの中で低下してきているのは、それを売りにしている僕達としてはヤバイな、という印象も持ちます。でも、だからこそ、雑誌の方針としては彼らが読んで元気になれるものを作りつづけていかないといけないと思っています。
読んで元気になれるもの、というのは?
男子に関して言えば、本質的な部分、面白いと思う事柄は時代を経ても大きく変わっていないのではないでしょうか。高橋名人、ヒカキンと対象は違えども、「時代の先端」っぽさに「すげー!」となる感じとか。
昔に比べて子どもがいい子になっているからこそ、コンテンツを作る立場としては逆の方向を攻めたいんです。ギャグマンガとかだったら、男子はみんな結局、「うんこちんちん」が好きだし。笑
『でんぢゃらすじーさん』という小学生ならみんな知ってるマンガをずっと連載しているのですが、そういう大人には脈絡がなさすぎて理解できないようなギャグを描ける作者さんは、やっぱり強いですよね。
子どもにヒットしているコンテンツで注目すべきものは?
スマホなどのデバイスはどんどん浸透してきていますし、今回の調査でもそうですがYouTubeはみんな見てますよね。僕たちもコロコロチャンネルという公式チャンネルを立ち上げていて、大変好評です。また、誌面上で毎年調査をしているのですが、テレビはリアルタイム視聴がどんどん減っていて、みんなタイムシフトでアニメなどを見ているようですね。
今を象徴するコンテンツは間違いなくマイクラです。無限に拡がるフィールドで、なにやっても良いんだけど、逆に目的はない。多くの大人は、そのおもしろさが全くわからないと思います。一人でやり込むこともできるし、みんなで一つのものを組み上げることもできる。やっている子どもたちについては、マイクラが生活の一部になっているような感じすらしています。
博報堂生活総合研究所の調査では「自由が欲しい」との回答が増えているが?
勝手な解釈ですが、親に対しても友達に対しても、社会に対しても、今の子達はいい人だと見られたいんだと思うんです。でも、実際には自分が伸び伸びできていないとも感じていて、それが「自由が欲しい」という意識につながっているんじゃないですかね。
今の子供が辛抱強いかというと、実は我慢できなくなっている面も感じています。特に情報接触に関しては、何でも我慢せずに早送りする傾向にある。知りたくない情報や不必要な情報はあっという間にスキップできますし、それが当たり前になっていますよね。YouTubeも一つの動画を最後まで見る、ということは少ないですし。それは親も同じで、我慢して躾をしたり、お小遣い制にしてお金のやりくりについて学ばせるよりも、必要な時に渡してあげちゃう、というような。
その他に誌面を作る際に心がけられていることは?
世の中の好みはどんどん細分化してきていますけど、僕たちは小学生男子を中心とした子どものマス層にアプローチしているので、コンテンツはできるだけ種々雑多なものが入っていなくちゃいけないと思っています。幅広くテーマを扱うことで、全然興味なかった子でも一冊読んでもらうと、「こういう面白いこともあるんだな」と気付いてもらえる。そうして間口を拡げることが、これからの世の中に対する興味をつなげていくことにもなるんじゃないでしょうか。
あとはやっぱり、こちらが伸び伸びとやることでしょうね。それが、今の子どもの窮屈さを和らげることにもなるでしょうから。