「タイムバンク」は、個人の時間を10秒単位で売り買いできるアプリ。売りに出ている時間は「事業の相談ができる」「一緒に食事ができる」など様々で、購入した時間分だけ実際にお願いごとをすることができる。時間単価は売る人の能力と信用で違い、変動もする。買った時間は、使わずにとっておくことも、他の人に売ることも可能。つまり、個人の時間が市場内でお金のように流通する仕組みになっている。
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中国のIT企業アリババが提供する「芝麻信用」は、個人の信用度を950点満点で点数化するサービス。信用を測る基準は、支払い履歴、個人情報(学歴・職歴など)、資産情報、交友関係などだといわれている。信用スコアが高いと様々な特典が得られる。例えば、シェア自転車の保証金が無料になる、婚活サイトで優先的に条件の良い相手を紹介してもらえる、海外旅行のビザが早く取得できるなど。個人が信用を高めることで生活しやすくなる事例だ。
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やりたいことを思いついたら、企画を立て、必要金額を知人などから集められるというフレンドファンディングアプリ 「polca(ポルカ)」。このアプリを使い「ポルカおじさん」と名乗って、これまで100回以上若者たちにお金を渡したという前田塁さんはこう語る。「若い頃、自分ができなかったことを代わりにやってほしいと思います。お金は貯めるより、誰かに回した方が有意義だと思うんです。お金が電子化して、渡す行為に生々しさがなくなったことが大きいのかもしれません。」
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引っ越しや子どもの誕生などのタイミングに合わせて、自分がECサイトで登録している「ほしいものリスト」をSNSに公開し、友人知人にお祝いとして購入してもらう、そんな動きが起きている。しばらく音信のなかった仕事関係の知人から「以前世話になったお返し」としてお祝いが届くケースもあるそう。お金そのものではなく、品物が集まる例だが、人と人との支え合いや協賛、恩返しの形が少しずつ新しくなっていく。そんなことを感じさせる事例だ。
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スウェーデンの送金アプリ「Swish(スウィッシュ)」は、個人間では手数料無料で送金が可能。これを利用した「スウィッシュ・バトル」と呼ばれる遊びが生活者発で生まれている。AさんがBさんに1クローナを送金すると、すかさずBさんが5クローナ打ち返し、Aさんも10クローナの送金で応じる…。仲良しの間で、お金のやりとりを純粋に面白がる行動だ。
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日本の送金アプリ「Kyash(キャッシュ)」を運営する鷹取真一社長は、「ユーザーのなかに39円送金をする人がいる」と語る。「人に何かしてもらった時に、『サンキュー』の気持ちを表す生活者発の行動です。金額の多寡に意味はなく、数字を文字のように使うことで、新しいコミュニケーション手段にしています。」
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モナコインは、日本の掲示板サイトで生まれた仮想通貨で、この掲示板のキャラクター的存在「モナー」をモチーフにした名前やデザインを採用している。このユーザーたちは、モナコインしか使えないサービスを自主開発したり、ユーザーが集まる神社をつくったり、モナコインの使用を訴える広告を自費出稿したりしている。ユーザー自身がモナコインを持ち、普及させることを仲間で楽しんでいるとともに、強いアイデンティティを感じていることがうかがえる。
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東京都の国分寺市には、市民がつくった地域通貨「ぶんじ」がある。形態は名刺大の紙製カード。特徴は、使う時に渡す相手へのメッセージを書くルールがあること。この行為は、仕事をした人とされた人を、匿名の誰かではなく、特定の個人として認識することにつながる。そのため、仕事が売る/買うの冷たい関係ではなく、貢献する/感謝するの温かい関係で結ばれるようだ。「ぶんじ」は単に同じ地域に住む人が使うだけでなく、こうした仕事観・人間観を共有する仲間が使うものとして発展を続けている。
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最高レベルの信用スコアを長期間維持した人は「あがり」となり、ほとんどの取引が顔パス(自力の提供が不要)となる。相手からすれば、その人と取引ができたという記録自体が、十分なメリットなのだ。
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目の前の相手がどんな「自力」を持っているか測定できる専用デバイスが登場。人びとの「できること」は常時オープンな状態になるので、思い立てばいつでも取引が可能に。
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自分の力の市場価値を高めるためには、より魅力的でわかりやすくキャッチーな「肩書」も重要になるだろう。そんな時に人びとが頼るのが「肩書屋」だ。彼らは、入念なリサーチのもと一人ひとりにぴったりな肩書を考案してくれる。
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どんな種類・どんなレベルの能力でも、マッチングさえすれば自力通貨として機能するようになると、むしろ普通のお金を貯め込んでいく「貯金」がムダな行為と考えられるように。その結果、お金を使って「貯力」を行うことがごく当たり前になる。
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「毎週パンを焼いてもらう代わりに月一でヘアカットしてあげる」というように、月極で「自力」を交換するような個人間の契約が始まる。さまざまなバリエーションの人と契約を結べれば、それだけで生活することも可能だろう。
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「自力」が流通し認められるという肯定感の虜となり、自分の能力のキャパシティを見誤る人も後を絶たない。己の限界以上の自力通貨を発行してしまい、全ての取引相手に「自力」を提供できない状態に陥る問題も頻発する。
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それぞれの能力が今の市場だとどれくらいの相場なのか、提供するのに適切なタイミングはいつなのかを教えてくれるAIに人気が集まる。人材の流動性が上がり、ミスマッチによる辞職やストレス減少の手助けにも。
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「かめはめ波を撃ちたい」というような、役に立たないけれど高難易度で夢のある野望に取り組む天才技術者集団が登場。本当にやってのけてしまう実現力の高さで一躍大人気に。「才能の無駄遣い」が、一部の名声だけでなく富も集めるようになる。
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政党の掲げる公約も、いわば「みんなが実現したい夢」。そんな背景から、任意の金額(0〜100円)の「投金」で選挙を行う制度が成立。得票数ではなく、獲得金額で当選者が決定する。集まったお金は、すべて公約実現のために使用される。
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経済的に恵まれないけれど、芸術やスポーツでポテンシャルのある子どもにお金を託せる仕組みが誕生。「新しく孫ができる感覚」と高齢者がこぞって参加するようになる。祖父母が100人いる、なんて子どもも珍しくなくなるだろう。
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魅力的な「やりたいこと」を掲げて協賛金を集めるだけ集めた後、様々な記録ごと姿を消す。そんな「やるやる詐欺」が各所で発生。社会問題に発展する。
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サービス拡充のための資金が不足している分野を行政が公開。直接、市民からの協力を募るように。詳細な収支報告もオープンになるため、自分のお金を何かに役立てたい、地域に貢献したいという人の受け皿となる。
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お金を託した相手が約束を実現できなかった場合に、ある程度の保障が受けられる保険が発売。協賛する側もされる側も、保険がある安心感から更にアグレッシブにお金をやりとりするようになる。
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お中元、お歳暮、年賀状など、季節ごとに品物を贈りあう習慣も大きく変わる。例えば、お金をかけて年賀状を印刷するよりも、メッセージ付きのお金を直接送った方がお互い嬉しいし、楽しい! そんな価値観が当たり前になるだろう。
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見ず知らずの人に「テスト頑張ったから300円ちょうだい!」など、遊び半分でおねだりするいたずらが流行。おねだりされた側もほとんどは無視するが、理由が面白い場合にはノリで送金することも。直接お金を無心することへの抵抗は、どんどん薄れていくだろう。
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やりとりのユニークさやデコレーションの秀逸さを競うコンテストが毎年行われ、様々な通貨がしのぎを削るようになるだろう。中には、受賞目当てで実際のやりとりは行われないハリボテ通貨も生まれるかもしれない。
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気軽に送金を行う対象は、個人だけでなく自治体にも広がる。例えば、市長が良いことをしたら、市民が「おひねり」としてちょっと送金、というように納税のハードルもかなり下がるだろう。首長の発信力によって、各自治体の税収も大きく変動していく。
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「お、あの人いいな」と思った瞬間にサッと送金。そんな、ゆるい送金によるナンパが行われはじめる。いきなり声をかけられたり、好きでもないカクテルを差し出されるよりもよっぽどいいと、ナンパされる側からの評判も悪くはない。
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不特定多数の若者たちの間で、順番に少しずつ送金を積み重ねていき、どこまで大きな金額となるかを訳もなく楽しむ「元気玉ゲーム」が流行。「元気玉」への入出金は自由だがすべてログが残るため、空気を読まずに出金した人の炎上は免れない。
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趣味や嗜好ごとにさまざまな通貨が機能しはじめると、どの通貨をどれくらい持っているかの「ポートフォリオ」が、自分の人となりを表す指標に。はじめましての挨拶時など、あらゆる場面でポートフォリオを見せあう光景が繰り広げられるだろう。
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企業やメーカーにも、連帯通貨と連動する動きが起こる。例えば、特定の通貨だけでしか購入できない限定商品の発売や、「○○通貨でのお支払いのみ割引!」など、さまざまなキャンペーンが盛んに行われるようになるだろう。
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同じ通貨保有者(ホルダー)が一堂に会するイベントが、それぞれに縁のある場所で開催されるようになる。趣向を凝らした限定ショップも出店されるが、その際使用できるのはもちろん連帯通貨のみである。
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普段の買い物でのおつりなど細かいお金は、通貨グループで共有する「貯金箱」へ入金するのが普通に。貯金箱にはメンバーであれば自由にアクセスでき、「常識の範囲内」で出金も可能である。
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各大学も自前の連帯通貨を開始。学食や購買での支払いはもちろん、学生や教授間でのやりとりなど、大学生活全般にわたって広く使われるようになる。青春時代を共に過ごした通貨に愛着を持つ人も多く、卒業してもホルダー同士で強い連帯が継続する。
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さまざまな地域で、連帯通貨のシェア争いが激化。「その土地で一番使われている連帯通貨」の地位をめぐって、住民同士の溝が深まる。次第に、店舗での敵対通貨受け取り拒否やホルダーの買収工作など、その対立行為もエスカレートしていくかもしれない。
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