「4つの信頼」
-2030年の生活展望-

Four Scenarios of Trust:
Outlook for Life in 2030

信頼とは、人と人の間に生まれるものです。
その人たちの関係性やその時の状況、背景に影響され変化します。

ここからは、ある4人の日常的な交友関係を通じて、4つの信頼(「編集」でつくる信頼、「公開」でつくる信頼、「自立」でつくる信頼、「濃縮」でつくる信頼)が具体的にどのような価値を生みだし、人にどんなベネフィットをつくりだすのかをみていきましょう。

ここで登場する4つの信頼関係は、時と場合によって使い分けられるもので、ひとりが一つの信頼関係を毎回選ぶわけではありません。
置かれたシチュエーション、人々のビヘイビア(行為・行動)、それを支えるテクノロジーを通して、それぞれの信頼関係によってどのような価値が享受されるのかをみていきましょう。 登場人物、団体名等はすべて架空のものです。

01 Grow

「編集」でつくる信頼で、
自分が広がる

時と場合に合わせて、複数の個性を使い分け、自分自身を編集し、共有していくことで同時に複数のアイデンティティが生まれます。これらのアイデンティティにはそれぞれ別のコミュニティがあり、交わることなく存在しますが、それらとの関係性によって、自分自身がどんどん拡張され、成長していくようなベネフィットを享受することができます。

ペルソナのイメージ画像
木村結衣 Yui Kimura
日本人 Japanese
23
女性 Female
独身 Single
イラストレーター Illustrator

結衣さんは、東京のデザイン会社で働く23歳のイラストレーター。ロンドンでグラフィックデザインを学び、現在は東京に暮らしながらも、仕事でもプライベートでも、国や言語をまたぐ多様なバックグラウンドを持ちながら活動しています。デザイナーとして常に刺激を受けていたい彼女は多趣味でもあり、それぞれの趣味の分野で、選択したコミュニティと積極的に関わっています。「オンライン」「オフライン」「海外」「国内」など複数のアイデンティティ(パーツ化された自分)を使い分けながら、日々の生活を送っています。

Tangible Benefits アートブックコレクター
としての自分

イラストレーターとして働く結衣さんは、アートブックのコレクターであり、制作者でもあります。本屋やブックカフェのオーナー、付き合いのある印刷会社の人など、本にまつわる関係性の中に存在する彼女の一面です。
 ある週末、書店に足を踏み入れた結衣さんは、自分の知らない作家の本が並んでいるのを発見し、ワクワクします。書店のオーナーが、彼女の好きなスイスの出版社からリリースされたアートブックを仕入れてくれていたのです。
 書店オーナーと結衣さんは、お互いの蔵書、最近の本の購入履歴、ブックフェアで気に入ったアーティストブースの位置情報など、アートブック愛好家としてのアイデンティティを共有しているので、しばらく会っていなくても毎回会話が弾みます。自分の中にある「1パーツである自分」をコミュニケーションとして利用することで、そのコミュニティ内で明確なベネフィットを得ることができるのです。
イメージ画像

Emotional Interpretation ファッションデザイナーとしての自分

結衣さんが注ぐもう一つの情熱は、ファッション。イラストレーターの仕事が片付くと、パソコンではなくミシンの前に向かいます。彼女は「Mio」という名で、オリジナルのファッションデザインをしており、デザインした洋服や雑貨をオンラインで販売しています。ここで彼女の洋服を購入する人は、彼女がイラストレーターであることや、アートブックコレクターであることを知りません。オンライン上、ファッションデザイナーとしての彼女のアイデンティティは、彼女のオフラインでのイラストレーターとしてのアイデンティティとは別ものであり、彼女のファッションデザインを、「イラストレーターとしての彼女」のフィルターを通して判断、評価されたくないからです。このコミュニティでは、彼女のオンラインファッションデザイナーとしてのアイデンティティに惹かれ、その腕を信頼する仲間の中で、関係性が成り立っています。
イメージ画像

Global Citizenship グローバル市民としての自分

イラストレーションの個人的な仕事も増えてきたので、結衣さんは会社を辞めてフリーランスになることを決意しました。彼女のクライアントは世界の様々な場所に存在しています。ここで活躍するのが、彼女のグローバルなアイデンティティです。
 例えば、彼女がロンドンに住居を移しても、このアイデンティティのおかげですぐに銀行口座を開設することができたり、国際免許証を取得する手間もなく、簡単な筆記試験のみでイギリスの運転免許証に書き換えることができます。日本の病院で処方されていた複数の薬についても全てを翻訳することなく、イギリスでも同じ効用のものを医師がすぐに処方してくれます。アレルギー情報なども入力しておくと、新たな国を訪れた際には、その地域でよく食べられる食べ物で気をつけるべきものを瞬時に理解し、公開する場を選んで他人と共有することができます。結衣さんは、このアイデンティティのおかげで、まるで世界中から市民権を得ているような恩恵を得られています。国や地域の文化背景やルールに合わせ、開示する自分を切り替えることで、場所に関係なく信頼を得ることができるようになります。
イメージ画像
「パーツ化された自分」として、時と場合により自分のアイデンティティを使い分けることで、安心してスムーズに様々なグループに参加し、活躍することができます。これらのアイデンティティは、システムによって自動生成されるのでなく、結衣さん自身が意図を持って管理していることが大切になります。結衣さんが共有したい自分を、共有したいときに、共有したい人たちとだけ共有していくのです。相手の目に触れるもの、触れさせたくないものを自ら設計していることで、それぞれのアイデンティティが彼女のかけらとして存在し、彼女らしいものとなります。
イメージ画像
02 Predict

「公開」でつくる信頼で、
暮らしの先読みができる

時と場合に合わせて、複数の個々がお互いのデータを公開し、それらデータの集約から恩恵を受けることで、より大きな基盤となる信頼が生まれます。データの提供は、毎日の生活の中で先読みできるきっかけを与え、どんな人とどのような関係性を築きたいかの指標にもなります。個性を使い分け、自分自身を編集し、共有していくことで同時に複数のアイデンティティが生まれます。これらのアイデンティティにはそれぞれ別のコミュニティがあり、交わることなく存在しますが、それらとの関係性によって、自分自身がどんどん拡張され、成長していくようなベネフィットを享受することができます。

ペルソナのイメージ画像
田端陽介 Yosuke Tabata
日本人 Japanese
42
男性 Male
独身 Single
エンジニア Engineer

陽介さんは、大阪市在住の42歳のエンジニア。シングルファザーとして12歳の娘のカオリちゃんと一緒に暮らしています。2人は最近、地域生活に関するあらゆるデータがオープン化され、活用されるエリアに引っ越してきました。陽介さんも自分たちの情報を開示しながら、同時に周囲のデータにもアクセスできる地域データプラットホームの恩恵を受けて生活しています。まだ引っ越してきたばかりですが、早くこのエリアに馴染み、周囲と良い関係性を築きたいと考えています。

Lowering Barriers 手軽なデータアクセス

ある日、陽介さんは急な仕事を頼まれてしまい、帰宅時間が大幅に遅れることに。娘のカオリちゃんをひとりで長い間留守番させたくないため、近所の公開データを見ながらこの時間帯から依頼できるベビーシッターを探し始めます。すると、近所に住む元小学校教師、美代子さんの時間が空いていることに気がつきます。美代子さんは、自身のベビーシッターに関する職歴のみならず、シッター依頼主からの評価や口コミまでの統計データを公開しています。陽介さんは早速彼女にシッターをお願いすることにしました。
 このように陽介さんが美代子さんのデータにアクセスできると同時に、美代子さんも陽介さんがどのような企業に勤めていて、過去にどのようなご近所さんと接していたかなどを知ることができます。陽介さんはカオリちゃんに、困った時は近くの人を頼るようにと教えています。このように情報が透明化された社会では、データは生活を支えるインフラのような機能を果たし、見知らぬ人との間にも信頼を築くためのツールとなります。このようなコミュニティで、周囲を信頼せず情報を開示しないことは、逆に自分たちを孤立させ、バイアスを加速させる可能性さえ出てきます。
イメージ画像

Contextual Transparency 行動文脈の可視化

このエリアでは、商店街の小さなお店から駅前の巨大な商業施設まで、様々な近所の店舗情報にもアクセスすることができます。商品の在庫から、最新の値段、現状の来店者数や混み具合まで、あらゆる情報を閲覧できる環境が整っています。
 ある日、陽介さんは、明日の朝食のヨーグルトが切れていることに気づき、GPSでちょうどカオリちゃんが下校中だと確認し、メッセージを送ります。スマートウォッチで、陽介さんからのおつかいの連絡を確認するカオリちゃん。さっそく最寄りの食料品店に立ち寄ることにしました。カオリちゃんも陽介さんと同じようにエリアデータにアクセスできるため、どの店舗に行けば2人の好物のギリシャヨーグルトが今安く売られているのか、その店舗は今どのくらい混んでいるのか、などの情報を瞬時に把握できます。カオリちゃんはヨーグルトの次の入荷が少し先になることに気づき、念のため2パック買い足して、自分の個人IDと紐づいた自動支払いシステムで会計を済ませました。
 このような共通のエリアデータへのアクセスがあることで、お互いの行動を可視化し、スムーズに求めるものへのアクセスを得ることができます。これにより、住民は、日々自分たちに合った、より賢い選択をしていくことができるのです。
イメージ画像

Growing Locality ニーズの先読み

陽介さんとパパ友のヒロトさんは、近所の公園に非常時の災害対策用具が備えられるべきではないか、と話していました。公園のベンチが、災害時にはバーベキューグリルにも変化する一台二役の用具になればよいと考えています。この地域では、自治体の財源が何に使われているのか、住民であればすぐに知ることができます。どの程度の予算が公園整備に使われていて、承認を誰がしたかも開示されているのです。
 陽介さんやヒロトさんが公共設備の充実を願う中、市が集めたオープンデータの集計が発表されました。家族連れの転入が加速するこの地域においては、新たな公園遊具の新規投資をすることが妥当であると書かれています。システムが地域データを元に、まるで住民の潜在的なニーズを言い当てるかのように妥当な判断を推奨してくれるのです。地域の人々は、このシステムと、システムによって下される判断を信頼しているからこそ、自らのデータを積極的に開示しています。陽介さんがそもそもこの地に移住した理由は、このような価値観を共有していたこと、そして地域のリーダーたちがこのような取り組みを事前に発信していたことが挙げられます。透明性の高いデータとそれを活用するコミュニティの意思によってつくられた信頼こそが、陽介さんが暮らす生活基盤をより良いものにしているのです。
イメージ画像
情報が公共の便益のために共有され、誰もが民主的にそれにアクセスできることにより、住民はより賢い日々の判断とアクションがとれるだけでなく、誰を信じてどのようなコミュニティを形成するかの指標にしていくことができます。陽介さんが自分にとって重要なフィルターや視点をシステムに入力、提供していくことが、より高度化された地域データの集積につながり、柔軟かつダイナミックな人間関係の構築をサポートしてくれるものになります。都市に自分自身を開放・公開することで、問題に先回りし、個人にとってより良い体験が形作られていくのです。
イメージ画像
03 Achieve

「自立」でつくる信頼で、
目的が達成できる

それぞれが自立した社会の中では、人間関係も自己情報開示もあえて限定していくことで生まれる信頼も存在します。ここでの信頼は、同じ目的やゴールを持った閉じたコミュニティの中で、人々が必要以上に親密になることなく、お互いがコミットできる関係性を築いていくというものです。

ペルソナのイメージ画像
井上りさこ Risako Inoue
日本人 Japanese
68
女性 Female
独身 Single
元会社員 Retiree

りさこさんは、福岡市近郊に住む68歳の元マーケティングディレクター。在職中、多忙により体を壊してしまったこともあり、現在は菜食中心の生活や、サステナブルな農法、循環型社会などのトピックに興味をもち、より健康的なライフスタイルにシフトしました。これによる自身の体へのインパクトを実感できたため、現在は、日本各地を移動しながら、このようなライフスタイルシフトの啓発をしています。多くの国内企業では、従業員がより健康的に過ごすためのサポートや指導がまだまだ必要であると考え、退職後の時間を使って地域社会と関わりながら活動しているのです。

Democratized Opportunity 目的を共有するコミュニティ

りさこさんは、健康的なライフスタイルについて、オンライン・オフラインの多様なコミュニティに参加しながら、知見を深めていきます。これらのコミュニティでは、性別、年齢、出身などの個人情報を共有することなく、皆が健康に過ごしたいという同じゴールだけを共有し、その知見や貢献度についての情報を共有することで、信頼関係が育まれています。りさこさんにとって、このような関係性は、まさに彼女自身の知識や学びを深めるために必要なものです。たとえ年齢が離れていても、遠くに住んでいても、目標に対する情熱や知識によって強い結束で結ばれ、安心して必要な情報だけを共有し、参加する人にとって公平な機会をつくりだすことができます。
 また、りさこさんのように同じ目的の様々なコミュニティを渡り歩くことで、一つのコミュニティでの学びを、また別のコミュニティに伝え貢献していくことができます。同じゴールや目標達成のために、必要最低限の情報だけを共有し、それがそのコミュニティ参加の価値、そして信頼となるのです。
イメージ画像

Filling Gaps テクノロジーを活用した学び

菜食中心の食生活への情熱が強まるにつれ、りさこさんは、シェフ、食品科学者、農家などの専門家と次々に新たな関係性をつくるようになりました。彼らの強い信念に触れながら、得られた気づきをひとつずつ書き留め、自らの学びとしてまとめ、個人的なデータベースを構築していきます。このような同じ目標を共有するコミュニティの中では、偏りがちな視点を持つ傾向が強まるため、全体像を把握するのが難しくなります。そこで、りさこさんはAIと機械学習ツールを利用することで、自身のアプローチを客観的に解析し、一つのトピックに関して全体像が把握できているかを確かめます。これらをまたコミュニティ内の知見として貯めていくことで、網羅的に情報が集まり、各自必要な時に必要な情報を参照し目的達成に向けて動くことができます。
イメージ画像

Targeted Harvesting 限られたデータの共有

りさこさんは、日本全国様々な場所で、より健康的なライフスタイルを推進している企業とつながっていき、従業員が健康的なライフスタイルへとシフトできるようにサポートしています。従業員の健康状況を知るために、りさこさんはスマートデバイスを利用します。これらのスマートデバイスは、家庭やオフィスにおいて日常的に使用されるもので、食事、睡眠データを記録したり、体温や血圧などの異常値を検知したりすることができます。ここから得られる匿名の身体データを元にデータのエコシステムをつくっていきます。
 ある日、従業員の健太郎さんのスマートウォッチから、高血圧の注意が検知されます。すると、そのデータは、りさこさんが作った高血圧の人に向けた食事レシピと自動的に結び付けられます。昼食の時間に、健太郎さんが社員食堂へ行くと、りさこさんが作った高血圧の人向けのランチメニューを購入することができます。りさこさんは多様な個人データにアクセスするようになりますが、これらは健康状態の向上を目指すという目的の中でのみ、匿名かつ離散的なデータとして扱われるため、健太郎さんをはじめとする企業の従業員は、安心して自分のデータを共有することができます。
イメージ画像
りさこさんは、健康的なライフスタイルへの専門性を高める中で、自分と同じライフスタイルの変化を求めている人たちと新たなコミュニティを形成していきます。このコミュニティ内では、目的にそって必要な情報を得るために人間関係をキュレーションしていきます。必要以上に親密にならないことで、目的達成のために実用的な信頼関係を築くことができるのです。このようなコミュニティの中で重要なのは、目標に向けて一人ひとりがどのような価値をつくる意図を持っているのか明確化すること。意図が明確であればあるほど、お互いに目標達成のためにコミットし協力しあうことができます。
イメージ画像
04 Explore

「濃縮」でつくる信頼で、
新たなる冒険ができる

仲が良いからといって、それがすぐに信頼につながるとは限りません。自分の趣味や、興味、哲学、弱みなどを、恐れず、ときにコンフォートゾーンを超えながら共有し、それに強く共感できるからこそ、信頼につながっていきます。信頼できる仲間からの助言は、自己に新たなる冒険を促し、新しいドアを開かせてくれます。

ペルソナのイメージ画像
KIRK SUTHERLAND カーク サザーランド
アメリカ人 American
36
男性 Male
既婚 Married
コンサルタント Consultant

カークさんは、36歳のアメリカ人。3年前に妻と息子のレオくんを連れて日本に移住し、現在は東京でコンサルタントとして働いています。アメリカにいる家族から離れ、言葉のわからない日本で暮らしていくのは大変です。しかし、信頼できる仲間を頼りに、見知らぬ国でも、毎日の小さな冒険を楽しみながら暮らせるようになりました。とうとう今年、カークさんは、都内で家を購入することになります。

Deliberate Adventure 信頼の輪

日本に移住して早3年が経ち、カークさんはいよいよ家を購入することに。しかし、どのように探し始めたらいいのか、言葉もわからず、土地勘のないカークさんは困ってしまいました。そこで、大学時代からの信頼する友人、ヒデさんを家に招待し、アドバイスをもらうことに。
 ヒデさんは、同じくらいの子供をもち、カークさんの趣味、好み、ライフスタイルを深く認識しているだけでなく、彼のおおよその給料や、生活習慣、教育方針、過去の恋愛関係や、苦手な人のタイプ、好きなコーヒーのテイストなど、かなり個人的な情報までも把握しています。プライバシーに関わることや、弱みと思えることもさらけ出せる関係だからこそ、カークさんのニーズやセンスにぴったりの提案をすることができるのです。カークさんは、それぞれの物件の良し悪し含め、提案してくれるヒデさんの話を聞いて、安心して提案を受け入れることができました。
 カークさんがとれる範囲内のリスクまで加味した、絶妙なバランスの提案を得られるのは、「信頼の輪」ならではの強みです。多くを共有し、価値観や感覚を近づけているからこそ生まれる信頼関係なのです。
イメージ画像

Augmented Experiences 日々を共有できる家

アメリカの家族から離れて暮らすことは、カークさんにとって難しい決断でした。家族は、カークさんにとって頼れる存在であり、いざという時には支えとなってくれていたからです。そんな中、離れていても家族間の情報や体験を共有することができるテクノロジーの存在が、カークさんの引っ越しの後押しをしました。
 日本に引っ越して、カークさんはさっそくアメリカの両親の家と自分の家をデジタル上でつなぎ、生活の様子や体験を、海を越えて共有できるようにしました。カークさんの東京の家の壁には、カークさんの実家での両親の様子が映し出され、ご飯を一緒に食べたり、お互いの家族が同じ時間を過ごすことができ、親密なつながりを保つことができます。
 今日は、カークさんの息子レオくんの8歳の誕生日。カークさんはアメリカの両親とデジタル空間を共有し、家族全員で誕生日パーティーを行うことにしました。カークさんの東京の家を実際に訪れているレオくんの友人たちも、デジタル空間を通して、アメリカにいるレオくんのおじいさんおばあさんと挨拶することができました。レオくんのおじいさんは、デジタル空間を通してレオくんと背比べをし、瞬時に空間データが共有されることで、レオくんが自分の身長にまた近づいたことを身体的に感じ、データとしても把握することができました。このような濃縮された関係性をつくりあげることで、お互いの結束、信頼を強め、 たとえ場所が離れていても強いつながりを保つことができるため、いざという時にはお互いをサポートしあうことができます。
イメージ画像

Widened Vision コンフォートゾーンを超えた学び

カークさんは、家族と一緒に日本中を旅行し、新たな小さな発見をするのが好きです。ドライブに出かけたある週末、カーナビを通してリアルタイムに親友や家族と旅の様子を共有することにしました。友人たちは、カークさんがどこにいるかわかるので、カークさんにオススメのランチスポットや地元名物の場所などを瞬時に送ることができます。カークさんの職場の友人レイコさんは、カークさんがランチを食べた場所の近くに、カークさん好みの濃い卵味のプリンのお店があることを知らせます。カークさんの好き嫌いを満遍なく知っている、信頼関係のある友人ならではの助言です。
 カークさんはカーナビを使って、お店の場所を確認します。カーナビは、その日のカークさんのスケジュールを見ながら、どのタイミングでそのお店を訪れるのがベストか教えてくれます。レイコさんの情報なしでは到底たどりつくことができなかった小さな町のお店のプリンは、カークさんも驚くほどの最高のプリンであったのは言うまでもありません。
 カークさんは、自分以上に自分のことをよく知る人たちと、自分の旅を包み隠さず共有することで、自身の限られた知識や世界を飛び出し、その先にある新しい出会いを楽しんでいます。
イメージ画像
カークさんは、日本に住むことに対して最初は不安もありましたが、信頼できる家族や友人といった限られた小さな仲間の中で、自分の情報や、体験を思い切って共有することで、強いつながりをつくり保つことができています。心底共感できる仲間と、自分の弱みや悩みなどを共有することで、カークさんは新しい学びを増やし、共感する友人や親族に守られた中での、安心した冒険をすることができるのです。
イメージ画像

In collaboration with IDEO