消齢化が進む要因となっている3つのベクトル。
ひとつめは、価値観の変化における、「すべき」が減ったというベクトルです。
大きかった“隔たり”
生活総研が最初の「生活定点」調査を行ったのは30年ほど前の1992年。当時、親子・夫婦のあり方や仕事への向きあい方など、生活の基本となる考え方には、 「こうすべき」「こうあるべき」という保守的・伝統的な価値観がまだまだ根強く、個人の自由な生き方が許容されにくい時代でした。
その価値観を比較的強く有しているのが、当時の50・60代。1923〜1942年の間に生まれており、戦前の社会環境に身を置き、戦争という厳しい出来事を経験した世代です。これに対して、個人の自由を重視する考え方を持っていたのは当時の20・30代。1953〜1972年の間に生まれた、戦争を知らない世代にあたります。戦前からの伝統的価値観が支配的な状況下で、戦後生まれの若者たちが自由を求め反発する、親子同士でも考え方に大きな隔たりがある―そんな社会の構図がありました。
世代交代で進む“共有”
しかし時間経過とともに世代交代が進みます。社会から高齢層が少しずつ退出していき、自由な生き方を重視していた当時の20・30代が、今の50・60代になりました。新たに加わった20・30代は1983〜2002年生まれ。上の年代とこの年代には、戦争体験の有無のような大きな隔たりはありません。加えて、みんなが「失われた30年」という、良くも悪くも変化のない時代を長く共有したことが、年代による大きな価値観の変化や対立を生みにくくしているようです。
それらの結果、今では生活者全体が「こうすべき」という伝統的な価値観から脱却していき(=「すべき」が減った)、個人の自由を尊重する生き方へとシフトすることになりました。
「若者は、考え方が進んでいる」
「高齢者は、古い価値観に囚われている」
年代によるそんな価値観の違いや特徴は、消えつつあるのです。