Part.2-1 「時間」の再編がはじまる 1 Part.2-1 「時間」の再編がはじまる 1

再編を促す環境要因

物理的・社会的時間から解放された生活者。
では、何を拠り所にして、自分の時間を再編していくのでしょうか?まずは、時代、世代、技術の側面から、その行方を探っていきましょう。
再編を促す環境要因 物理的・社会的時間から解放された生活者。では、何を拠り所にして、自分の時間を再編していくのでしょうか?まずは、時代、世代、技術の側面から、その行方を探っていきましょう。
時代

「常温社会」の到来

“失われた20年”という激動の時代を経て、2010年前後から、日本という国も、自分の経済状態も「この先は良くも悪くもならない」という認識が広がっています。生活者が、社会や時代に必要以上に熱く怒りを感じることも、悲観して冷え込むこともなく、現状を静かに受け止めている様子を、生活総研は「常温社会」というキーワードで捉えています。生活者が、未来は良くなると信じていた経済成長期には、例えばマイホーム購入や出世といった夢に向かって、今の生活を我慢することもいとわなかったでしょう。そして、バブル崩壊後は、未来の苦境に備えて、やはり今の生活を我慢してきました。しかし、未来の方向感がなくなった常温社会では、生活者の関心は、未来より今の時間の充実に向かうようになります。

日本の方向は
現状のまま特に変化はないと思う

図表

今後の自分の経済状態は変わらない

図表

「生活定点」調査の未来スコア推定
使用データは生活総研「生活定点」調査(1998~2018年の隔年/東阪/15~69歳男女)。
「ベイズ型コウホート分析(中村)」を行い、データの経年変化に対する時代効果、年齢効果、世代効果を導出。それぞれの効果を組みあわせることで、1998~2028年までのモデル値を推計した。例えば、2028年の30代のスコアは[30代の年齢効果]と[2028年に30代になる1989~1998年生まれの層の世代効果]と[2018年の時代効果]をもとに算出。

※2020年以降の時代効果は未知のため、2018年の時代効果で代用。
※1998~2018年も、実際の調査結果の数値ではなく、3つの効果からの推計値を記載。
※ここでは2028年までの推計が可能な男女25~69歳の推計値を掲載。

世代

「未来より今」の思潮

自分の将来イメージの明るさでは世代差が表れます。“失われた20年”に苦い経験をした40~60代は、経済状況が今後変わらないと予感することで、かえって自分の将来は明るいと感じる人が増えていきます。他方、2010年代から社会人となった今の20代では将来の明るさは横ばいとなり、見通しが悪い状況です。また、常温社会の生活者は、現在の身近な出来事を楽しみ、幸せを見つける感性が磨かれるようです。例えば、SNSでシェアするために日常から話題を探し、投稿に対して様々な反応が得られれば楽しさは何倍にもなるでしょう。こうした感性は従来から若い人ほど高く、今後も高まっていくと予測されます。「未来より今の時間を充実させたい」その思いが強い若い世代にリードされて、時間は再編されていくでしょう。

自分の将来イメージは明るい

図表

身の周りで楽しいことが多い

図表
技術

「スマホネイティブ」の台頭

2020年の20代は、2008年のスマホ日本発売時に17歳以下でした。いわばスマホネイティブ世代であり、デジタル技術に関して年長者より自分たちの方が上手に使えると感じてきた人たちです。だからこそ、5GやIoT、AIといった情報技術がこの先日常化し、時間の使い方が合理化されていくことに対しても、特に20代が肯定的な意見を持っています。年表に記載したような2030年までに予測されている技術進化は、20代から起こる時間の再編を後押しするはずです。

「時間」にかかわる
技術・制度・キーワードの年表

図表

未来像についての賛否

生活時間がスマホなどの機器にすべて記録され、
自分の時間の使い方の特徴が数値で厳密に把握できる未来

図表

自分の予定や現在地の情報を提供すると、
AIが最適な過ごし方を教えてくれ、
時間を無駄なく使える未来

図表