「ふつう」マップの読み解き方 「ふつう」マップの読み解き方

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未来事象を3グループに分けて考える

「生活者1万人への未来調査」で生活者に呈示した120項目の未来事象を、実現予想と願望の軸でプロットした、2040年の「ふつう」マップ(part1)。本論での読み解きでは、このマップから未来事象を3グループに分類しました。

グループAは、予想も願望も高い“「ふつう」になりそうな未来事象”。
グループBは、予想も願望も拮抗する“「ふつう」になるかもしれない未来事象”。
グループCは、予想も願望も低いが、年齢差がある
“「ふつう」に偏りが生まれそうな未来事象” です。

マップの図
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多くの生活者の共通意識となっている未来事象から、
“未来の「ふつう」のベース”を確認する

グループAの未来事象は、「将来には実現しそうだし、実現してほしい」という意識が多くの生活者に共有されており、未来においてほぼ確実に「ふつう」のこととして受け入れられているとみることができるでしょう。グループAの要素は、本論で未来の「ふつう」を考える際のベースとします。

グループA

予想も願望も高いもの=「ふつう」になりそうな未来事象 予想も願望も高いもの=「ふつう」になりそうな未来事象

ここから、未来の「ふつう」の基本として押さえておく代表的なことは下記です。
ネット技術の進展と活用に
関するもの

「次世代通信規格『6G』による超高速のインターネット通信が生活の中に浸透している」
(予想82.5%・願望81.1%)

地球環境に配慮した暮らし方に
関するもの

「使わなくなった製品は、捨てずに誰かに売ったり譲ったりすることが主流になっている」
(同75.7%・82.7%)

ロボットやAI 技術による人間の
負担軽減に関するもの

「人間のかわりにドローンやロボットが輸送・宅配をすることが主流になっている」
(同75.1%・76.4%)

消費の利便性向上に関するもの

「支払う動作をしなくても決済が完了する『自動決済』の利用が主流になっている」
(同74.9%・71.0%)

医療やヘルスケアの高度化に
関するもの

「iPS細胞から人工的に生成した臓器や筋肉などを医療移植することが普通のことになっている」
(同69.8%・81.6%)

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生活者の意見が分かれる未来事象から、
“未来の「ふつう」の可能性”を探る

本論では、②のベースを念頭に置きながら、 “未来の「ふつう」はどこまで変わりうるか”、つまり変化する可能性がある範囲を探ることを主眼としました。ロングスパンで未来を考えるためには、現在はまだ明確には想定していない可能性も幅広く視野に入れることが重要だからです。

では、その探索のための手掛かりはどこにあるのでしょうか。 生活総研では今回、生活者の実現予想と願望の意見が分かれている未来事象に着目しました。今後そうした領域では、賛否両論が百出しながら関心が高まり、現在はまだ想定していない未来の「ふつう」が練り上げられていくと考えられるからです。

グループB

予想も願望も拮抗するもの=「ふつう」になるかもしれない未来事象 予想も願望も拮抗するもの=「ふつう」になるかもしれない未来事象

この要素は実現予想と願望の両方で、肯定と否定が同程度の割合で存在し意見が分かれています。この未来事象での生活者の議論の行方しだいで、未来の「ふつう」の可能性の範囲は変わってくるでしょう。本論で具体的には「実現してほしい」スコアが40~60%の範囲にある未来事象を抽出しています。

グループC

予想も願望も低いが、年齢差があるもの=「ふつう」に偏りが生まれそうな未来事象 予想も願望も低いが、年齢差があるもの=「ふつう」に偏りが生まれそうな未来事象

グループBよりも実現願望が下にある未来事象の中から、未来の「ふつう」の可能性に関わりそうな潜在力のあるものを抽出しました。着目点は若年層(15~39歳)と高年層(40~69歳)の意見が分かれているところです。具体的には、実現予想および願望について、若年層が高年層より反応が高い要素(10ポイント差目安)を抽出しています。これらは、2040年時点では30~50代と60代以上の年代間で、「ふつう」に偏りや違いを生むかもしれません。30~50代は社会的な存在感も高く、「ふつう」への影響を強めるとも考えられます。

暮らしの中での判断や行動の前提となる価値基準としての「ふつう」。2040年のそれは、“「ふつう」になりそうな未来事象”をベースとしながら、“「ふつう」になるかもしれない未来事象”や“「ふつう」に偏りが生まれそうな未来事象”の行方しだいで大きく揺らぐはずです。

図

では、「ふつう」は2040年にどこまで変わりうるのでしょうか。ここからは、その揺らぐ範囲を考えるための8つの問いをご紹介していきます。
さて、20年後のあなたの「ふつう」は、どこまでを“あり”と感じるのでしょうか。