私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

「生活定点」で振り返る平成 第4回

20代4人が語る「平成の恋愛」への強烈な違和感

生活総研 上席研究員

三矢正浩

こちらは「東洋経済オンライン」からの転載記事です。

新しい元号も発表され、「平成」がいよいよ終わりに近づいてきました。この「平成」はいったいどんな時代だったのか、生活者にどんな変化をもたらしたのか。
生活定点」などのデータを用いながらご紹介していきます。

恋愛・結婚の意識、変わったもの・変わらないものは?

4回目となる今回のテーマは「恋愛観・結婚観」について。平成初期から末期にかけてどんなことが変化し、どんなことが変化しなかったのか。「生活定点」から恋愛や結婚に関する意識・行動の長期時系列データを見ていきましょう。


■1990年代から減少傾向にあるもの(一部を紹介)

「友達なら男も女もないと思う」
1994年 59.7% → 2018年 45.3%
「いくつになっても恋愛していたい」
1998年 49.9% → 2018年 29.3%
「離婚はハンディキャップになると思う」
1998年 31.6% → 2018年 24.7%
「好きなら不倫な関係でもしょうがないと思う」
1994年 18.0% → 2018年 10.3%

減少幅が目立つのは「いくつになっても恋愛していたい」の項目。20年でほぼ継続的に20ポイント以上スコアを落としています。

「好きなら不倫な関係でもしょうがないと思う」の減少とも相まって、恋愛に対してドライな感覚の人が増えている印象です。

また「離婚はハンディキャップになると思う」は多少上下しつつ現在が過去最低となりました。平成を通じて離婚にいたるカップルの割合は増加しており、だんだんと離婚への抵抗感が薄れているのではないかと推察されます。


■1990年代から増加傾向にあるもの

「外国人と結婚することに抵抗はない」
1994年 20.2% → 2018年 29.3%

一方、1990年代から増加傾向にあるものはほとんどありません。顕著なものは外国人との結婚についてくらいでした。国内外で外国人と接する機会が増えたり、身近な知人の国際結婚を見聞きする機会が増えたりしたことなどが、緩やかなスコアの上昇に寄与しているのではと考えられます。

変わらなかった項目はちぐはぐな印象


■1990年代からあまり変化がなかったもの(一部を紹介)

「女性に結婚適齢期はあると思う」
1992年 68.9% → 2018年 66.7%
「男女のつきあいで女性がリードするのもいいと思う」
1994年 42.4% → 2018年 48.2%
「デートの時の勘定は男が払うべきだと思う」
1994年 27.8% → 2018年 24.7%
「人前でキスすることに抵抗はない」
1998年 8.6% → 2018年 6.8%

1990年代からあまり変わらなかった項目は、なかなか特徴的でした。

平成初期と比べて女性の生き方の多様化や男女の平等化は着実に進んでいるように思われますが、それでも「女性に結婚適齢期はあると思う」や「男女のつきあいで女性がリードするのもいいと思う」など交際時の男女のふるまい意識には、それほど大きな変化がありません。それだけこの意識が強固ということとも考えられ、興味深い結果となっています。

こうした変化について、今の若者たちはどう感じるでしょうか?

平成生まれの男女はどう見る?

そこで、平成元年以降に生まれた4人の男女にグループインタビューを行いました。20代の彼らにとってはまだ物心つく前である平成初期の考え方は、いったいどう映るのでしょうか。

「生活定点」の恋愛・結婚データを眺めてもらったうえで、その中から「気になったデータ」をピックアップしてもらい、選んだ理由などについて自由に話してもらいました。

※インタビュー対象者は機縁法で選定(研究者の知人のつながりを介した被験者リクルーティング)

生活定点のデータから気になるものを選んでもらいました(筆者撮影)

……というわけで、平成生まれの男女がとくに気になったデータを彼らのコメントと合わせてご紹介します。


気になるデータ①(4人中、4人が「気になる」とピックアップ)

「いくつになっても恋愛していたい」
1998年 49.9% → 2018年 29.3%

筆者:20年間で全体も下がっていますが、とくに若い層の落ち方が急激なデータですね。どこが気になりましたか?

Kさん(女性/20代後半/化粧品メーカー/交際期間4カ月の彼氏あり):「いくつになっても恋愛していたい」ということについて、20代の下げ幅がすごいのが気になりました。こうしてみると、昔の若者より自分たちはまじめになっているのかもと思います。

Hさん(男性/20代後半/金融/交際期間約2年の彼女あり):今は「恋愛より生活」というか、好きな人と一緒に過ごすことよりも、まずはきちんと生活を送ることのほうに意識がいくというか。
以前はきっと経済的余裕がすごくあったんだろうなって思います。

筆者:1998年の20代はちょうど今の40代。これまでずっと数値が20代>40代だったのが、2018年に初めて40代>20代になっている。つまり、今の20代より40代のほうが「いくつになっても恋愛していたい」と回答しているということになります。

Oさん(男性/20代後半/サービス/交際期間4カ月の彼女あり):会社の40代くらいの上司を見ていると、「すげー元気だなあ」と。いくつになっても恋愛したいオーラが出ている感じがイメージできる(笑)。

Sさん(女性/20代後半/サービス/交際期間5年以上の彼氏あり):恋愛にエンタメっぽさを求める感覚が、昔と今とでは違うような気がします。

今の若者は将来のこととか、先々を逆算して考えながら交際するかどうかを決めていたり、あまり浮ついた感じで恋愛していない人が多いんじゃないかと思います。

筆者:生活や恋愛に対して、現実的に向き合う意識が強くなっているんですね。

→続きは東洋経済オンラインのページからご覧ください。

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