私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

–日経クロストレンド㊼連載–

「消齢化」の次は「消性化」?
食で縮まる男女の違い、20代で顕著

生活総研 主席研究員

夏山 明美

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

食分野で、性別による価値観や意識の違いが縮小傾向にある。博報堂生活総合研究所が長期時系列調査「生活定点」の食分野における20年間のデータを分析したところ、こんな現実が見えてきたという。さらにその変化を世代別に見るとある事実も浮上してきた。「食のジェンダーレス」について、データを基に切り込む。

今回は、食にまつわる男女の意識の変化に注目(写真/まだら雪/stock.adobe.com)

2024年は家庭科の男女共修が始まって約30年(1993年中学、94年高校で開始)。昨今では、男性向けのレシピ本が出版され、男性の料理研究家が活躍し、男性が料理番組やドラマの中で料理をする、なんてことも当たり前。かつてあった料理は女性がするものというイメージは、今や変わりつつあるように思えます。

実際のところ、食の意識・行動における男女の違いはどれくらい小さくなったのでしょうか。それを明らかにするため、博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」で食分野における20年間(2002年・12年・22年)のデータを分析したところ、男女差が縮小する項目が拡大する項目を明らかに上回っていました。

博報堂生活総合研究所では、年齢による価値観や嗜好の違いが小さくなる現象を「消齢化」と名付けましたが、食分野においては男女による違いが小さくなる、いわば「消性化」も見られたというわけです。

▼消齢化に関する記事はこちら
30年データで突き止めた新ワード「消齢化」 消えゆく年代の壁

さらに、直近の22年データで年代別分析をしたところ、男女差が最も小さい項目の数は20代が突出して多いことも分かりました。「20代でジェンダーレスが顕著なのは、家庭科の男女共修のおかげか?」と思いきや、その内容を詳しく見ると、20代男女はともに家庭料理離れに向かっていたのです……。

というわけで、今回のテーマは「食のジェンダーレス」。「生活定点」調査からの発見を順に解説していきます。

食分野における男女差は「縮小」が「拡大」の2倍以上

最初に、02年から22年まで聴取し続ける食分野の項目を、男女差の縮小/拡大で分類した結果をご紹介しましょう。

例えば、好きな料理で見ると、「みそ汁が好き」の男女差は02年5.8pt(男性68.7%、女性62.9%)から12年3.1pt(男性62.4%、女性59.3%)に、さらに22年には1.2pt(男性60.2%、女性59.0%)に縮小しました。

一方、「漬物が好き」だと、02年の男女差は0.8pt(男性59.7%、女性58.9%)に過ぎませんでしたが、12年2.3pt(男性48.7%、女性51.0%)、22年4.7pt(男性41.6%、女性46.3%)へとじわじわと拡大しています。

「みそ汁が好き」「漬物が好き」の回答率推移

このように02年から12年、さらに12年から22年にかけて連続で男女差が縮小、あるいは増加している食分野の項目を分類すると、男女差が縮小したものが35項目で、拡大した16項目を2倍以上も上回る結果になりました。

20年間で男女差が縮小/拡大した項目数

男性は「お酒離れ」で、女性は「料理離れ」で近づいていく

この20年間の分析から、男女の違いが小さくなる食のジェンダーレス化が明らかになったわけですが……。次に気になり始めたのが、男女差は男性が女性に近づいて縮まったのか、逆に女性が男性に近づいて縮まったのか、どっちなのか、ということ。

例えば、「お酒を飲む」を見ると、20年間を通して女性の回答率は60%前後でほとんど変化が見られませんが、男性は6.3pt(02年81.8%→22年75.5%)も減少。その結果、男女差は02年20.3ptから22年15.6ptに縮小しました。お酒を飲む人が減ったことで、男性は女性に近づいたのです。

「お酒を飲む」の回答率推移

この「お酒を飲む」と対照をなすように、女性は「料理離れ」で男性に近づきました。データで見ると、「料理を作ることが好きな方だ」という男性は、20年の間、27%台でほぼ横ばいです。しかし、女性は10.7pt(02年 46.1%→22年 35.4%)もスコアを落とし、02年・12年と2桁だった男女差は22年には7.6ptにまで縮まったのです。

「料理を作ることが好きな方だ」の回答率推移

 

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

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