私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

第4回

”科学技術が進歩しすぎて不安である”という設問を”科学技術の進歩”を用いて解析

博報堂DYメディアパートナーズ

篠田裕之

エレベータで知り合いと一緒になったときに、思わず目を伏せて無言でやり過ごしたり、マンションの廊下に人の気配を感じて、家を出るタイミングをずらしたり、遺伝子レベルで自分を嫌いになること、私だけではなく、みなさんも多々あるかと思います。

現代では自分の遺伝子の特徴を簡単に調べる事ができる様々な遺伝子検査サービスが登場してきており、科学技術の進歩には驚かされます。(むしろ、このアクロバティックすぎる文章展開に驚かれたかもしれませんが)

科学技術の進歩といえば、他にも3Dプリンタ、ドローン、ウェアラブルセンサが身近になり、3Dホログラムやブレインマシンインタフェースなどの研究もますます盛んになっています。

生活定点には「現代の科学技術は進歩しすぎていて、不安に思う」という項目があります。この項目、1998年の23.9%から年々下がっており、2012年には7.9%まで下がりましたが、2014年には、やや上昇しており9.1%となっております。

この傾向(年々下がっていたが、2014年に微増)は全世代、性別、地域で同じようです。

PDF

https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/1356.htmlPDF

さて、「科学技術が進歩しすぎた不安」、とは一体何なのでしょうか。

生活定点サイトでは、上記の設問と同じような時系列推移を辿っている”似てるかもグラフ”を見ることができます。女性30代では「情報を活用した生活をしていない」という項目、男性30代では「日本人は個人生活の充実にもっと目を向けるべき」という項目が上記設問と同じような推移を辿っております。

PDF

https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/1356-201-10.htmlPDF

PDF

https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/1356-1372-5.htmlPDF

ということは「科学技術が進歩しすぎた不安」とは、女性30代にとっては「情報爆発によって、情報活用が追いついていない不安」であり、男性30代にとっては「(システマティックな技術、仕組みに対するアンチとしての)個人生活の充実に対する飢餓感としての不安」ということでしょうか。
気になるのは、上記2つの設問もやはりここ2年では数値が上昇してしまっていることです。

さて、ここでせっかく項目が「科学技術の進歩」、ですので、テクノロジーを駆使して、さらに深堀してみましょう。

具体的には「科学技術が進歩しすぎて不安である」という文言に似たものを含む記事をウェブ上からクローリングしてきて、それらに含まれている単語を解析することで、具体的には何が気になっているのか見てみます。

すると、例えばクローリングされた記事のうち、男性30代が閲覧していると統計的に推計される記事には、「遺伝子」「クローン」「バイオテクノロジー」、といったワードが含まれているようです。

一方、女性30代が閲覧していると思われる記事には、「スマホ」「クーポン」「編集」などが含まれておりました。さらに、上記でクローリングされた記事を閲覧している人が普段どのようなサイトを閲覧しているのか、を「DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)※」を用いて分析してみます。

このようにして得られた結果を3次元にビジュアライズしてみましょう。「科学技術の進歩に不安」という項目の年代ごとの推移が、縦に連なるレイヤーとして表されております。

また、一番上のレイヤーは現時点の詳細を表しており、「科学技術の進歩に不安」という記事に含まれているワードを性年代ごとに解析したワードを色違いの円、そのような記事を閲覧している人の普段の閲覧サイトを長方形で表しています。

いかがでしょうか。

個人ではなく、性年代ごととはいえウェブ上の閲覧傾向が、このように時系列データと現在のデータをつなげて立体的にビジュアライズされるということ、みなさんは、”不安”でしょうか。
それともこういった技術・分析からあらたに生まれてくるサービスを通して”情報を活用”、”生活を充実”していけると思うでしょうか。

※DMPとは「http://www.hakuhodody-media.co.jp/column_topics/glossary/20130820_7495.htmlPDF

※このコラムは生活定点2014年度版のデータに基いています。

この記事をシェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加
私の生活定点

“40代おじさん”は「イヤな人」から「取っつきづらい人」へ  最新調査で判明

博報堂 テーマビジネスデザイン局
前沢 裕文
2025.03.05
私の生活定点

「調理定年」は何歳?調査で分かった「大盛り寿命」「焼き肉寿命」

生活総研 上級研究員
夏山 明美
2024.11.25
私の生活定点

ポパイ・JJ世代が時代の節目?日本人の価値観変化をデータで検証

生活総研 上席研究員
酒井 崇匡
2024.09.03
私の生活定点

家の食卓を「写真」で大調査
生活者の「3つの意外な真実」とは

2024.07.23
私の生活定点

「人前でのキスに抵抗はない」は6% 調査で見えた若者の実像

2024.05.17
私の生活定点

「消齢化」の次は「消性化」?
食で縮まる男女の違い、20代で顕著

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2024.04.04
私の生活定点

“生写真”が浮かび上がらせる
日本の食卓 自由化する食生活の実態
–日経クロストレンド 連載㊸–

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2023.11.07
私の生活定点

「調理済み食品を使う料理」に
賛成9割。内食と中食の中間に勝機
–日経クロストレンド 連載㊶–

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2023.08.29
私の生活定点

リビングでブームの「ヌック」とは
調査で判明、住空間の新潮流
–日経クロストレンド 連載㊴–

生活総研 上席研究員
佐藤 るみこ
2023.04.14
私の生活定点

「若者をなめていない」 ピース又吉さんに見る新・40代おじさん像
–日経クロストレンド 連載㊳–

生活総研 上席研究員/コピーライター
前沢 裕文
2023.03.09
私の生活定点

30年データで突き止めた新ワード「消齢化」消えゆく年代の壁
–日経クロストレンド 連載㊲–

生活総研 上席研究員
近藤 裕香
2023.02.22
私の生活定点

データで見る「好きな料理」30年史
ラーメンが“食った”料理は?
–日経クロストレンド 連載㊱–

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2023.02.15

もっと読み込む

その他の研究をキーワードから探す