私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

研究タグ
2015.07.27

第7回

「生活定点」は「日本人の心のガイドブック」

博報堂生活者アカデミー

松井一哲

22年分1500項目のオリジナル生活者データを公開している「生活定点」特設サイト(https://seikatsusoken.jp/teiten2014/PDF)。このサイトではデータの集計表(エクセル形式)が無償でダウンロードできることを知っていますか?(PCからのみ)しかも、日本語版だけでなく、英語版の集計表もあって、無償でダウンロードできるのです。

最近、英語版のダウンロードも増えているとのこと。いったい、どんな人がどんな目的でこのデータを活用しているのか?

「おそらく海外のマーケッターが、日本市場を分析するために使っているのだろう」
そんなふうに考えていましたが、わたしの鎖国脳、島国脳を、海外に遣わし、外国人に憑依し、彼等の目線から改めて日本の「生活定点英語版」を眺めてみました。
すると、もしかしたら、「生活定点英語版」は、日本について知りたい外国人の「ガイドブック」になっているのではないか?という気がしてきたのです。

通常の「日本のガイドブック」にはいろいろな情報が載っています。観光地、グルメ、ショッピング・・・。でも、「日本人の心のガイドブック」というものは、そもそもあまり見かけないように思います。
たとえば、海外旅行に行く場合を想像してください。
「そこに住まう人たちの心のガイド」が分かっていたら、より海外旅行(日本旅行)を楽しめますよね。
しかも、「生活定点」のデータは22年分です。
「過去から現在まで日本人の心の変化がわかるガイドブック」として「生活定点英語版」は活用されているのではないか、と思ったのです。

「生活定点」では日本人の心が丸裸になっています。
「心配しないでください。パンツ履いてますよ」とも言えないほど丸裸です。

たとえば、こんな項目。

「人前でキスをすることに抵抗はない」は全体で7.9%。

PDF

 https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/909.htmlPDF

「ココロ重視派vsモノ重視派」では、ココロ重視派が、ずーっと圧倒的多数。

PDF

 https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/71.htmlPDF

「日本の国や国民について、誇りに思うことは何ですか?」という質問に対して「治安の良さ」が生活者の実感値のレベルでV字回復。

PDF

https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/1425.htmlPDF

「外国人と結婚することに抵抗はない」のデータを性年代別に詳しく見ると、20代女性の回答率が右肩あがり。

PDF

 (画像は、年代別・女性・20代の時系列グラフのみを表示させた状態)

 https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/900.htmlPDF

 20代女性の結婚観が変わってきていることがよくわかります。(外国からの観光の目的が、富士山でも寺社仏閣でもなく日本人と知り合うことになる?)

生活定点はその時を生きた生活者の意識の記録です。タイムマシーンでも持っていない限り、誰も、過去の生活者に対して調査はできません。世界最大級のIT会社も、22年前からの詳細な生活者データは持っていないでしょう。

SNS上では「生活定点」の無償公開について「博報堂太っ腹」という声もいただいていますが、太っ腹ということではなく、これぞ「生活者発想」だとわたしは思っています。

世の中にとって有益なことを社内だけで留めておくのではなく、一人でも多くの生活者に活用してもらい、そこから、社内だけでは生まれなかった発想やプロダクト、サービスが派生したら、未来はもっと楽しくなる。そのキッカケづくりの装置が「生活定点」特設サイトであり、「生活定点英語版」なのです。

最後に、この項目をご覧ください。

PDF

  https://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/1441.htmlPDF

「今後、日本と外国の交流が進むと、どうなると思いますか?」という質問に対して「日本の文化が失われると思う」と回答した人はどんどん少なくなっています。

これから「生活定点英語版」はより重要度を増していきます。

2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、多くの外国人観光客が「日本はどんなトコロ?」を知りたくなるでしょうし、同時に「日本人はどんなココロ?」が気になるはず。「生活定点」は日本人の心のガイドブックとなり、日本と外国の交流の一助になるでしょう。そして、世界中の生活者が発想や気づきのタネを得て、それぞれの良い文化を伸ばしあう未来がやって来るに違いありません。わたしは「生活定点」を見ながら、ワクワクしています。

※このコラムは生活定点2014年度版のデータに基いています。

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