『生活者の平成30年史』連載 第4回
平成で進んだ「家族のユニット化」、妻が夫を「名前+ちゃん」で呼ぶ
こちらは「日経BizGate」からの転載記事です。
第4回のテーマは、「家族のユニット化」です。人口の激減、急速に進んだ少子高齢化、最多となるひとり暮らし――『生活者の平成30年史』(博報堂生活総合研究所 著)の抜粋によって、平成30年間の生活者の意識や行動、価値観の変化を振り返ります。
「家族」という存在は、それ自体がひとつの単位として扱われる対象ですが、当然ながら、それは「個人」というさらに小さな単位によって成り立っています。
一員である前に一個人
はじめにご紹介するデータは、「家庭内での夫や妻の呼び方」です。ささいなことと感じるかもしれませんが、こうした細部に家族や夫婦の関係性は表れるものです。
まず、妻が夫を呼ぶ時(図表4―1)、「パパ、お父さん、お父ちゃん」という家族内の役割名が30年間で大きく減りました。代わりに「名前(+ちゃん、くん、さん)」が増えています。
夫が妻を呼ぶとき(図表4―2)でも、役割名を個人の名前が逆転しました。いずれも、夫や妻が、家族の一員としての役割よりも前に、一個人として認識されるように変化したことを示しています。
また、消費面や就労面でも「家族」と「個人」の関係は変化しています。日常のお金の使い方をとっても関係の変化をみてとることができます。例えば、「外出着代の支払い方」(図表4―3)では、「夫の服代を家計費から支払う」が減り、「夫の服代を夫のこづかいから支払う」が増加しています。
妻の服代についても家計費から本人のこづかいへのシフトが起こっています。
また、「妻が働きに出ることの最終決定者」(図表4―4)では、今では信じがたいことですが30年前は夫が妻よりも高かったのです。妻が自分よりも家族としての決定を優先する意識が高かったことがわかります。この数値はその後、夫・妻で逆転し、直近では76.5%が妻自身で決定しています。