消費対流 「決めない」という新・合理

生活者インタビュー

欲しいものは全部買い、
合わなければすぐに売る

酒井藍さん(28歳女性・東京都)

不動産関連会社勤務。フリマアプリのヘビーユーザーで、これまでに5,000件超の購入・販売を経験。作家物の陶磁器などを集めるのが趣味。なお副業として、アプリ開発・運用や不動産投資も行っている。

フリマアプリの
取引件数は5,000件超。
あらゆるものを
売り買いする

小学生の頃から、ダンボールに祖母の古着を詰めてリサイクルショップに送り、お小遣い稼ぎをしていました。そうした背景もあって、フリマアプリはサービスが出て間もない頃から使っています。最初は大学生だったので、受験勉強で使った赤本や参考書、高校の時の制服など、家にある不要品を片っ端から売っていましたね。今は本や使わなくなった家具、買ってみて「合わないな」と思ったものを出品し、売れなければ寄付サイトでまとめて寄付するようにしています。ラクマやメルカリの複数アカウントを合計すると、取引件数は5,000件を超えています。
また、フリマアプリでは購入もします。よく買うのは、定価より安く売られている新品の化粧品や水着などです。セーブデータの残っている中古のゲームをあえて買って、時短でゲームプレイをしたこともあります。また、結婚式のときのドレスやベールも買いました。式で着るドレスは新品で買いましたが、撮影用のドレスとベールは中古でいいと思って。新品だと3~4万円するベールも2,000円程度で買えるので、とてもコスパがいいんです。

メルカリでは本や家電など、様々なものを出品

フリマアプリの
買い物は「生感」がある

ネットショッピングも利用しますが、フリマアプリで買うほうが楽しいです。フリマアプリだと「意外と見た目より重たい」といった生の情報や、出品者の人となりやセンスがわかるからです。説明欄に書かれたエピソードや、それまでにどんなものを出品しているかを見ていると、自分に似た感性の人が見つかることもあります。ときには「外商から購入した」というシャネルのグッズばかり出品しているような人もいて、どんな暮らしをしている人なんだろう、と妄想するのも楽しいです。
また、フリマアプリには一点物の作品を出品している作家さんもいます。私は器(うつわ)が好きなのですが、特に好きな陶磁器の作家さんが2人いて、何度も買わせてもらっています。この方々とはメッセージのやりとりもよくしていて、作品についていろいろと教えてくれたり、 「こんなものがあったらいいな」という意見を反映した新作を作ってくれることもあって、とても楽しいです。

作家さんから買ったお気に入りの陶磁器

買い物が「これでいい」から「これがいい」に

フリマアプリを使うようになってから、好きなことに関してかなり詳しくなったと思います。特に器はそうです。例えば「作家物 陶器」で検索していろいろなものを見たり買ったりしているうち、自分の好きなものが何かがわかってきて、さらに知りたくなって本を買います。そうすると、自分のなかのキーワードが増えていって、検索できる情報がさらに多くなります。そうして商品の知識も、自分の世界も広がっていったんです。
また、好きなことに詳しくなったことで、以前とは行く店も変わりました。服の素材の良し悪しなど、ものの品質がわかるようになったからです。「これでいい」と妥協せずに百貨店などに行き、高くても「これがいい」と考えて質の良いものを買うようになりました。そのせいか、以前よりものを大切にしています。特に作家物の陶器は、「世界でひとつしかないこの器でご飯を食べよう」という気持ちで、壊れても修理をしながら大切に使っています。

器が増えてスペースが足りないため、リフォームで棚を増設予定

自分はミニマリストではなく
「マキシマミスト」

フリマアプリであらゆるものを売っているので、ミニマリストだと思われることがあります。でも私自身は、むしろ煩悩の塊、いわば「マキシマミスト」だと思っているんです。もともと買い物は大好きですし、陶器に詳しくなってからは月に10万円以上買っていることもあるので……。欲しいものは全部買って、合わなかったもの、いらなくなったものはすべて処分しているというだけです。
私は生きる上で「哲学を持つこと」が大切だと思っているのですが、必要なのは執着をなくすことではなくて、自分が何に執着しているかを知ることだと思います。人生100年時代といわれる長い人生のなかで、若くいられる期間はほんの少し。我慢するのではなく、楽しく買い物をし続けるにはどうするかを考えていきたいです。

家具の多くはリサイクルショップで購入した掘り出し物

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