消費対流 「決めない」という新・合理

有識者インタビュー

生活者に広がる
「ものづまり」とその背景

整理収納アドバイザー

中西 やえか

「まだ使えるのにもったいない」――そんな気持ちからものを捨てられず、溜め込んでしまう「ものづまり」が問題化しています。ものづまりに悩む生活者の実態とその背景について、整理収納コンサルタントである中西やえかさんに話をうかがいました。

片付けたくても、
どうしたらいいかわからない人が多い

片付け相談に来る方は女性が多く、中でも働きながら子育てをしている40代くらいの方からの相談が目立ちます。子どもが生まれてものが増えたうえ、忙しくて片付ける時間がないのだと思います。また、子どもが独立した50~60代の方も多いですね。「夫婦二人になったのでマンションに引っ越したいけれど、子どものものがたくさんあって片付かない」といった方もいらっしゃいました。

相談に来る方の多くは、「とにかくすっきりさせたいんです!」とおっしゃいます。今が理想の状態ではないことはわかっていても、具体的にどうしたらいいかはわからないという方がほとんどです。ものの捨て方は誰からも教わらないので、片付け本を読んでもどう手をつけていいかわからず、アドバイザーに相談されるのではないでしょうか。

ものづまりの原因は
「捨てることへの罪悪感」

ものを溜め込んでしまう理由は色々ありますが、ものを捨てることに対して罪悪感を覚える人が多いと感じています。特に、まだ使えるものを捨てることはハードルが高いです。「将来また使えるかも」と考えたり、お金を捨てているようでもったいないと考えたりして、ついつい溜め込んでしまう人が少なくありません。
また、家具などの大きいものは捨てるのに時間や手間、コストもかかります。高齢の方は体力的にも大変ですし、「ものは大切にしなければいけない」という価値観で育った人が多いこともあって、なかなかものが捨てられないようです。

なお、溜め込みがちなものとしてよく挙がるのは洋服。洋服は安くて気軽に買えてしまう一方で、意外と長くもつので、もう着ないと思っていても捨てにくいんですよね。ほかにも、本や子どものものが溢れているという方も多いです。共働きで忙しく、読む時間がないまま本がたまってしまったり、ECが発達したことでその場の思いつきで買いやすくなったことも、ものづまりの原因のひとつかもしれません。

「自分で捨てなくてすむ」ことの価値

リサイクル費や捨てるコストは今後さらに上がっていくと思われますし、ものをたくさん持っていると保管のコストもかかるので、買うものを厳選する人は今後より増えていくでしょう。
ただ、「捨てる」ことは難しくても、人にあげる、リサイクルショップに引き取ってもらうという方法であれば心理的なハードルは下がるので、「今持っているものを誰かがもらってくれるなら、新しいものを買いたい」という人は少なくないのではないでしょうか。家具の引き取りサービスやフリマアプリのように、自分で捨てることなくものを手放せるサービスが増えていることは、ものの出入りが活発化するためのプラス要因になると思います。

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