トキ消費

その時・その場でしか味わえない
盛り上がりを楽しむ消費

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2019.12.15

「消費潮流の最前線」第1回

モノ、コトの次の潮流【トキ消費】とは

こちらは、東京商工会議所 東商新聞2019年11月15日号からの転載記事です。
夏山研究員による寄稿です。

今回から全6回で博報堂生活総合研究所が提唱する【トキ消費】について解説します。
当研究所では、【トキ消費】を「同じ志向を持つ人たちと一緒に、その時(トキ)、その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」と定義付けしています。

例えば、ハロウィン。仮装した人が集まり、見知らぬ者同士でも一緒に記念撮影などをして盛り上がりを共創します。フェスやライブでは、おそろいのグッズを身に着けた観客同士が歌い、踊り、会場の熱量を上げていく光景が見られます。他にも、好きなアイドルなどの人気を上げるための○○総選挙や、新商品開発などを賛同者の寄付で実現に導くクラウドファンディングなども注目を集めています。これらは、いずれも【トキ消費】の具体事象といえます。

なぜ、今【トキ消費】なのか。消費潮流の変遷を振り返ってみましょう。

1970〜80年代、人々の関心は、新しいものや珍しいものの所有(HAVE)に向かっていました。「モノ消費」の時代です。生活を利便化し豊かに彩る新商品などのモノを紹介する雑誌の創刊が相次いだのもこの頃です。

その後、90年代に入り、モノがひと通り行き渡ると人々は所有だけでは欲求を満たせなくなります。そして、当時の「モノより思い出」という広告コピーに象徴されるように、「心に残る体験をしたい」という新たな欲求が芽生えます。所有が目的だったモノは、体験の手段としてのモノへと、その意味合いを変えました。人々の関心は体験(DO)に価値を置く「コト消費」へと移ったのです。

さらに2010年代、ソーシャルメディアが浸透すると、様々な体験がインターネット上で受発信可能に。誰かの体験でも、まるで自分の体験のように見聞きできる環境が生まれました。しかし、その体験は疑似的なものに過ぎません。リアルを求める人々は、誰かと一緒に盛り上がる、その時その場に存在(BE)することに新たな価値を見出します。こうして【トキ消費】は誕生したのです。

 

<東商新聞「消費潮流の最前線」連載一覧>
第2回 事例編――様々な分野に広がる【トキ消費】の共通要素
第3回 背景編――生活者が【トキ消費】に向かう理由とは
第4回 データ編――生活者調査でみる【トキ消費】
第5回 ビジネス編①――【トキ消費】を生むヒント①
第6回 ビジネス編②――【トキ消費】を生むヒント②

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