普段、私たちが接する記事や報道では“今の若者の特徴”として様々な言説が語られています。しかしそのなかには、現在の若者の姿を正確にはとらえられていないものや、冷静に考えると今の若者だけの意識とはいえないものも含まれています。今回実施した若者調査では、世に知られた言説に疑義を投げかけるようなデータが多数見つかりました。時系列データだからこそ明らかになった若者の実態をみてみましょう。
変わらない若者像
今も昔も変わらない、“普遍的な若者の特徴”
変化のパターン
ここでご紹介する項目は、2024年調査での若者(19~22歳)の値が30年前とあまり変化しておらず、かつ上の年代(49~52歳)の値とは開きがみられるものです。 “今の若者の特徴”というよりも“今も昔も変わらない若者の特徴”ととらえるべき性質が示唆されています。
興味のおもむくまま、
今を楽しむ
いろいろと手を出したり、衝動買いをしたり、直感を信じたり、若者が興味のおもむくまま今をエンジョイするスタンスは昔も今も変わらないようです。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
流行や見栄えは
やっぱり気になる
物事やことばの流行に敏感だったり、買い物では品質だけでなく外観やデザインにこだわったりするところも30年前の若者と変わりませんでした。それだけに友人や同世代が選んでいるものもやっぱり気になるようです。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
ファッション、美容、
音楽に高感度
新しい情報に高感度なジャンルがファッション、美容、音楽そして遊びだということも変わりません。これらの分野への強い関心は若者にとってごく自然なことなのでしょう。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
誰かと一緒につるみたい
交友関係の敷居が低く、ひとりでいるより仲間とつるんでいたい、という気持ちも今と昔で変わりませんでした。ただし、そのつるみ方の中身をみてみると、だいぶ大きな変化もあるようです。その詳細はPart2でご紹介します。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
だけじゃない若者像
若者だけじゃない、“上の年代も含めた今の時代の特徴”
変化のパターン
ここでご紹介する項目は、2024年調査での若者(19~22歳)の値が30年前から大きく変化し、かつ当時若者だった上の年代(49~52歳)も現在の若者に近い値を示しているものです。“若者だけが変化した”というより“上の年代も含めた今の時代の特徴”であることが示唆されています。
摩擦や悪目立ちは
避けたい
意見の対立を避け、協調を重んじる摩擦回避の傾向は30年前の調査レポートでも示されていましたが、若者でも上の年代でも多数派になったようです。ファッションでも、個性的でいるより悪目立ちを避けたい、という意識が高まっています。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
人生なるようにしか
ならない
変化の激しい時代のなかで、大きな目標や夢を抱くというよりも「人生なるようにしかならない」という考え方が若者でも上の年代でも広がっているようです。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
肩ひじ張らずに働きたい
責任を抱えるより気楽な地位でいたい、可能性を試すよりできそうなことができればよい、そんな肩ひじ張らない働き方を志向する人は、若者だけでなく上の年代でも多いようです。仕事に対してやりがいやおもしろさは以前ほど求められなくなりました。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
男女の“らしさ”に
こだわらない
男だから、女だからという理由で我慢を強いられる人は若者でも上の年代でも減りつつあります。恋愛においてもほとんどの人が女性がリードしても良い、と考えるようになりました。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
正しくない若者像
世の言説にみられる、“正確とはいえない若者の特徴”
ここでご紹介する項目は若者(19~22歳)の調査結果が、世の中でよく語られている“今の若者の特徴”とは相反する変化を示しているものです。これらのデータは既存の言説が本当の若者の姿を正確にはとらえられていないのではないか、という疑義を呈しています。
社会意識が高い?
むしろ低下傾向
SDGsという言葉の浸透もあり、最近の若者は地球環境やサステナビリティに関して意識が高いといわれています。しかし、地球環境のためなら割高な商品を買ったり、不便な生活を受け入れる、あるいは人間全体の繁栄を犠牲にするといった意識は30年前に比べむしろ低下しています。一方で、国や社会のことより個人生活の充実を重視すべき、という意識は上昇しました。
若者にとっても地球環境や社会の課題解決は大事ではあるにせよ、それは今の自分の生活を犠牲にしない範囲で、という前提がつくようです。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
自己肯定感が低い?
むしろありのままの
自分を受容
最近の若者は自己肯定感が低い、という言説があります。一方で、他人の生活にうらやましさを覚える人は30年間でむしろ微減していました。自分らしさは自分で持ってさえいればアピールする必要はない、という考え方も広がっているようです。
また「自分の限界というものを知っている」「自分のことが、好きだ」という項目が共に増加している、という興味深い変化もみられました。今の若者はSNSでの他者比較を経験しつつも、完璧でないありのままの自分を受け入れ、愛そうとしているようです。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
人間関係が希薄?
むしろ濃密
最近の若者はひとりの時間を大事にしていて人間関係は希薄、というイメージはないでしょうか。確かに「ひとり」好きになっていることを示すデータもあるものの、それだけで決めつけるのは早計です。「群れて行動するのが嫌いだ」という人は30年前に比べ減少する一方で、「人付き合いが濃密な方」だという人は大きく増加しているのです。
ちなみに、「社員旅行にはできれば行きたくない」若者の比率は増えましたが、49~52歳の比率はさらにその上です。人間関係が希薄なのはむしろ中高年なのかもしれません。
:19~22歳
:49~52歳(1994年当時19~22歳)
ベンチャー志向が強い?
むしろ大企業志向が上昇
働き方では、最近の若者は裁量や自由度の高いベンチャー企業やフリーランス志向が高まっていると報道がされることもあります。しかし、実際にはむしろ大企業志向が強まり、学歴への信頼度も高まっていることがわかりました。
現在の19~22歳は就職氷河期や失われた30年を経験した世代を親に持っており、そのことも経済的な安定を手堅く得やすい進路を志向するキャリア観の背景にありそうです。
今の20代の親は、失われた30年の影響を受けた50代。頑張っても評価されない、落ちたら這い上がれない、という厳しい現実を知っている。 親が苦労してきた姿をみて育った、もしくは親が子に自分と同じような境遇にさせまいと教育をしたことも影響しているのでは。
金沢大学融合研究域 融合科学系教授、
東京大学未来ビジョン研究センター
客員教授
金間大介氏
低成長の時代でかわいそう?
むしろ生活の充実感は上昇
最近の若者は低成長の時代に生まれてかわいそう、という印象を抱く人も多いのではないでしょうか。過去の好景気を謳歌した若者に比べると、低成長が続く世の中に生まれ育った若者はかわいそうな気がしてしまいますが、実態はそうでもないようです。
生活に対して「十分満足」「非常に幸せ」「非常に楽しい」と感じている若者の比率がそれぞれ大きく上昇しているのです。前述の通り、変化の激しい時代のなかで大きな目標や夢を抱く人は減っているものの、今ここにある一日一日を楽しく過ごせているか、という点では、彼らは彼らなりの充実した毎日を送っているようです。
「生活定点」調査からの補足データ
今の若者に元気がないと感じてしまうとしたら、その背景には、若者がスポーツやアウトドアのレジャーを以前ほどはしなくなり、活発に行動する姿がみえにくくなったことも一因かもしれません。若者のインドア志向が高まっており、「生活定点」調査で聴取している「よくする趣味」の上位もほとんどが自宅内や屋内の施設で楽しめるものになっています。
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「母」と「同性」
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