Part.1 [みんな]を巡る問い

いったい、[みんな]の何が変わった? 戻る

信用を生むものは熱量

かつて、[みんな]の参照先としての大きな存在は、テレビや新聞、雑誌やラジオといった、
いわゆるマスメディアだけでした。しかし、SNSが普及した今は、個人もマスになります。
なぜ、ひとりでも[みんな]から参考にされる存在になれるのでしょうか?
その鍵を解くため、若い女性を中心に大勢の[みんな]にフォローされる、
ゆうこすさんにお話を訊きました。

共感こそ拡散の原動力

物心ついたときからSNSが身近にある世代にとって、SNSでの投稿は長年かけてつくっている自分のプロフィール帳みたいなものなんです。身近な友達にも見られる場所なので、「本当はこう思ってるけど言えない」ようなことがたくさんあります。なので、その気持ちを代弁してくれる投稿は共感を生み、すごくシェアされます。共感が拡散の原動力になるのです。

モテたい女の子の代弁者

私の場合は、「モテるために生きてる」と公言して、誰に共感して欲しいかを明確にしました。私にとって“モテる”とは、男女関係なく愛される女性になることです。「モテたい」「かわいくなりたい」と思っている女の子の代弁者になって、女性たちが共感してくれることを発信するようにしています。
フォロワーに共感してもらうために、モテたい女の子のアカウントをざっくり1000人以上見るようにしています。いわゆるインフルエンサーだけじゃなく、アカウント数が50~100人くらいの人も含めて。また、その人の友達も見ていきます。なぜなら、シェアするときには、自分のフォロワーに見せて恥ずかしくないものでないといけないからです。

本音で「エモい」言葉

共感を得るために、自分の言葉で本音を伝えることを大事にしています。ただ、本当に自分の本音(感想)を言っただけでは、プライベートアカウントにしかなれません。届けるターゲットが今、何を考えているかを常に意識して投稿しています。
ポイントは“エモい”こと。“エモい”とは心がグッと揺さぶられるような感じのことで、「誰も言ってくれなかったけど、言ってくれてありがとう、グッときたよ」という意味で使っています。上っ面の言葉では意味がなく、本音が漏れちゃったような言葉で綴るようにしています。

デート前にはゆうこすのアカウントを見る

本音に加えて、自分にしか書けない「モテフィルター」をかけています。モテたい女の子の共感を得るために、どんなものごともモテるかどうかという視点からみる、つまり「モテフィルター」をかけて発信するようにします。
今は情報過多な時代なので、何もフィルターがないとどれをみても同じってなっちゃうと思うんです。私の場合は、モテたい女の子が「デート前にメイクしたいとき」や「好きな人に会う前」はとりあえずゆうこすのアカウントを開く、という習慣がつけられたのかなと。SNSで届ける層は小さく縮めたほうが、そこでの熱量が上がって、その人たちが拡散してくれると思っています。

応援しなきゃという雰囲気づくり

私のように個人で発信している人は、何か夢を振りかざして、一緒に応援したいと思わせないといけないと思います。「私たちが応援しなきゃ」「いいねだけじゃなくてコメントしなきゃ」という雰囲気をつくらないといけない。実際にコメントやいいねでエンゲージメントが高まることで、自分の夢が叶えられていくわけですし。自分のコメントが反映されるという空気感は、絶対に大事だと思っています。コメントしても何も反映されないような状況にしちゃうと、ファンの熱量が下がっていってしまうと思います。

ブランドをつくるときなども、ユーザーの声を反映してつくっています。生配信や投稿で、最後を必ず疑問形にするんです。だいたいAorBのようにしていて、そうするとガチなファンじゃなくてもコメントしやすくなります。

“普通”のトップになろうと思った

SNSを始めたときに、“普通”のトップになろうと思ったんです。ファッションのトップやメイクのトップにはなれないけれど、モテという世界のなかで、自分もなれるかもしれないと思える“普通”の人のトップって、まだいなかったなと思って。
遠い存在の人が何かをすすめても、自分が使うところを想像できないけれど、私は生配信やイベントをやったりしていて距離感が近いおかげで、ゆうこすという存在が身近で想像しやすい。そうすると、自分がメイクをしたり、服を着たりするときも想像しやすい。そこがほかのインフルエンサーとの差別化になっているかなとは思います。

失敗も成功も、熱量が信用になる

最近、好きなブランドのお店に行くと、「ゆうこすのSNSの投稿を見て買いに来てくれるファンの子が多い」と言われるようになりました。私が紹介したから買いたいと思ってくれたのは、私が発信する情報を信用してくれたからです。本音で伝えることを大事にしていますが、それだけでは信用につながりません。信用を高めるために、失敗も成功も発信して熱量を上げることを意識しています。

つい先日、自分のスキンケアブランドを発売したのですが、2年前からずっとつくっている過程を発信してきました。発注ミスなどの失敗もあったのですが、隠さず伝えました。発売まで2年かかったのは長かったなと感じるのですが、こういう思いでつくりましたという本音だけじゃなく、ストーリーもないといけないと思うんです。その2年間で熱量が届いて、それがあとあと信用になっていくのかなと思います。失敗も成功も熱量なので、すべて発信するようにしています。

丸く尖る

SNSの世界で何か突き抜けるためには、尖っていないといけないと思います。個性がないと、気づいてもくれないので、もちろんファンは生まれない。けれど逆にいうと、尖っていればアンチも生まれます。そのなかで私は、丸く尖るというのを大事にしています。丸く尖るというのは、尖りつつもアンチを攻撃しない。つまり、モテるかどうかの視点から見るという自分ならではの尖りはあるけれど、いろんな立場の人のことを考えて発信しています。

みんなが生きやすい小さい世界

これからは、みんなが知っているわけではないけれど、小さい世界ではトップになれるような人がどんどん生まれてくると思います。私の「モテクリエイター」もそうです。
私が生配信をすると人が集まるのですが、私を見るためだけでなく、そこに集まった人同士でも会話が生まれるんです。居心地がいいみたいで、お家に帰ってきた感覚というか。もちろん、それがどんな場になるかは発信者側の力量にかかっています。生配信を始めた当初は、自分のファンの女の子と、もともとそのサービスを使っている男性たちがぎくしゃくしていたので、すぐにそれぞれに役割を与えました。ファンの女の子はゆうこすの良さを、男性たちはこのサービスの使い方を、お互いに教えあってあげてくださいと。そうすることで、どちらも生きやすい世界になったんです。

小さな世界があって、そこで会話がしやすいっていうのが大事で。たとえ狭くても、何か共通して集まれる、そういう温かい空間が、今求められているんじゃないかなと思います。

ゆうこす(菅本裕子)氏

モテクリエイター、SNSアドバイザー、インフルエンサー

2012年にアイドルグループを脱退後、タレント活動に挫折し
ニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始。
自身の肩書を「モテクリエイター」と称して
“モテる”メイクやファッション情報をSNSで発信。
SNSのフォロワー累計150万人。(2018年12月時点)

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