みらいのめ

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2019.03.01

第26回

東北にラグビーワールドカップが来る!

from 岩手県

生活総研 客員研究員
東北博報堂

種市 良嗣

2019年9月、日本で初めてのラグビーワールドカップが開催される。4年に一度の開催、それもラグビー伝統国以外では初めての開催という事で世界からも注目が集まっている。

しかし、である。その様な意味のある大会なのに、あまり盛り上がってないのではないだろうか。それもその筈で、日本は1991年のJリーグ設立までの長い間、プロスポーツといえば「野球」だったので圧倒的に競技人口が少ないのだ。

ざっと調べたところ、日本の野球人口は580万人、サッカー人口は480万人なのに対し、ラグビー人口は27万人弱と少なく、“日本では”周辺でやっている人が圧倒的に少ないのである。

が、“日本では”と書いたのには理由がある。世界に目を向けてみると俄然様子が変わり、サッカーをやっている国は211カ国、野球は77カ国。ラグビーはというと、121ヶ国、競技人口は、910万人(内女性240万人)と、サッカーには及ばないものの、世界では野球よりもはるかに多い国で行われている競技なのである。

そのラグビーワールドカップが、日本国内12都市12会場。48試合。この内2試合が東北の岩手県釜石市で開催される。

これは大きなニュースだ!自分が何かできる事は無いか!という事で、「なぜ釜石市でラグビーワールドカップを開催?」も含め、今回書いてみたい。

鉄と魚とラグビーの街

実は、釜石市と言えば、「鉄と魚とラグビーの街」である。2015年に橋野鉄鉱山が「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として世界遺産に認定されるほど、古くから近代鉄鋼業の街であり、三陸沿岸という事で、豊富な漁場が目の前にある。

では、ラグビーは?というと、知る人ぞ知る、新日鉄釜石ラグビー部が1979~1985年、ラグビー日本選手権で史上初めて7連覇をし「北の鉄人」と呼ばれていたのだ。一時期低迷した時もあったが、2001年に地域型クラブチーム「釜石シーウェーブスRFC」として再出発した。

こういった背景を考えても、東北でやるなら、釜石しかないというのも納得できる。しかし、招致を決めた時期は、まさに震災直後の2011年12月。最初は地域の皆が賛同したわけではなかったそうで、市民の有志が、復興の一助にしたいと声を上げ、官民合同で地道にタウンミーティングを重ねて徐々に賛同を得て決定に至ったのだそうだ。

ラグビーワールドカップの会場は、「釜石鵜住居復興スタジアム」。名前からも想像できるように、まさにこの地区は、東日本大震災の津波の影響で、旧鵜住居小学校と釜石東中学校が甚大な被害にあい、その跡地を5メートルかさ上げして運動公園として整備した土地に新設したスタジアムなのだ。

こういった背景のあるスタジアムだが、この場所には大変意味がある。前述した、津波の被害にあった小学校と中学校の生徒が率先して高台に避難し、多くの命が助かった。この事例が、防災を象徴する場として広く世界に紹介され、防災教育の意味でもとても価値のある場所である。ラグビーワールドカップは、震災の津波の際に世界中から頂いた支援への感謝を伝え、復興の姿を発信する絶好の機会となる。また、今回創造される多様なレガシーを次世代の子供達へ継承し、地域の一層の発展へとつなげていく大きな役割も担っている。

世界中から注目されているラグビーワールドカップ2019は、もちろん経済波及効果も高い。新聞の報道を調べてみると、スタジアム建設も含めて釜石市での経済波及効果は83億2,000万円。来場者の消費額だけでも21億を超える見込みだという。まさに、レガシーを次世代へつなげる大きなきっかけとなりそうだ。

滞在中の楽しみ方も整備中

せっかく来てくれるお客様に是非とも釜石を楽しんでもらうため、市は「釜石フィールド・ミュージアム構想」を掲げている。これは「エリア全体を屋根のない博物館と見立てる」という意味で、施設(ハード)としての博物館ではなく、その地域に固有の自然・歴史・文化等を野外で直接体験や学習できる仕組みのことを指す。その中心的存在となる「かまいしDMC」は、総合的な観光事業を官民一体で進めるため、宿泊や飲食といった市内全域の観光関連業者の調整役を担い、観光地域づくり、市民の郷土愛の醸成や観光人材の育成にも着手している。

「フィールド・ミュージアム構想」の実現に向け持続可能な観光の仕組みづくりも始めている。国際的な認証機関の一つである、オランダのGreen Destinationsのプログラムを取り入れ、釜石市ができる持続可能な観光地を目指して活動中でもある。

地域創生と言われて久しい。復興もまだ途中ではあるが、釜石市は古くからある文化とラグビーワールドカップという大きなチャンスを活用し、継続可能な計画・実施する体制・それを支援する市民が一体になっている大変興味深い街である。

ラグビーワールドカップ、世界遺産、三陸の幸、多様なアクティビティーを整備して、訪れたお客様をわくわくさせる準備をしている釜石市に、是非足を運んでみては如何だろうか?

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