みらいのめ

さまざまな視点で研究員が「みらい」について発信します

2016.09.02

第11回

縄文からみえる豊かな女性多数派社会?

from 北海道

生活総研 客員研究員
北海道博報堂

山岸 浩之

北海道へ東京から家族5人で移住して3年近く経ちました。3人の子供達も北の大地でのびのびと暮らしていて、すっかりどさんこになっています。
ところで、札幌生活を始めたころにちょっと驚いたことがありました。長女は札幌市内の小学校へ転校したのですが、クラスの名簿を見ると、男女の人数差があまりに違っていたのです。クラス32名のうち、男子13名に対して女子がなんと19名!女子が圧倒的に多いのでした。これは、学年全体・学校全体ではこれほどではないにしても同じ傾向のようです。

確かに北海道は、進学や就職の際に道外へ出て行く男性の若者が多いようです。人口の流入数より流出数の方が多い「社会減」と言われる状況です。こうした地域にとっては、大きな課題となっていますし、UIJターンの促進にさまざまな形で取り組んでいます。
それにしても、こうした社会減の若者より、更に若い小学生からして女子の比率が高いとは。長女の学校では、極端な例だと思いますが、あらためて男女数の差という視点から少し調べてみました。

日本全体の人口性比で見ると、女性100に対して男性94.2と女性多数。実に男性より女性が348万人ほど多くなっていました(平成26年10月時点)。女性の平均寿命が長いことも影響しているかと思います。であれば、今後も女性比率が高まるのでは。そして北海道では、女性100に対して男性89.1と更に女性が多数な地域でした。これは、女性多数派社会の先進地域(?)とでもいえるのではないでしょうか。果たして女性が多数になるとどんな世の中になるのか?ぜひ想像してみて頂ければと思います。

さてさて、唐突ですが話は約1万5,000年前の縄文時代まで遡ります。
北海道は、その縄文時代が長かったことで知られています。本州が弥生時代や奈良時代に入っても、北海道では続・縄文時代として続いていました。縄文時代というと、やはり竪穴式住居と土器が思い浮かびます。それまでの旧石器時代は、獲物を求めて洞窟などを移動しながらで暮らしていましたが、ようやく定住の地を見つけました。つまり、マイホームを手に入れて、キッチン用品を充実させ、いろんなアイデアで料理する、それが縄文ライフスタイルというわけです。
自然の恵みを取り過ぎないようバランスのとれた生活を心がけ、小さなムラをつくって隣近所と助け合いながら次の世代、次の世代へとつないでいく。これが実に1万年以上も続いていたというのは驚きです。
実は、女性中心の大家族と平等主義な社会であったことが長期安定を支えてきたと言われています。縄文のビーナスという土偶に象徴されるような、まさに女性が活躍していた時代だったのでは。ただ、縄文人の平均寿命は31才程度で、過酷な生活環境だったという研究結果もあります。その分、自然と同じように女性と子供、生命をコミュニティ全体で尊重し、大切にしていたようです。厳しいながらも、この時代ならではの豊かさがあったのではないでしょうか。

また、縄文時代の初めから北海道と北東北は、津軽海峡文化圏と呼ばれる共通の文化基盤を持っていました。17箇所に及ぶ北海道・北東北の縄文遺跡群は圧巻です。そして今年、北海道と本州を結ぶ北海道新幹線が開業しました。時代を超えて新たな青函経済圏として活性化が期待されています。
人口減少の波の中では、交流人口の増加こそが大事。これまでのハード・インフラの開拓を、ソフト・コミュニティの開拓へとつなげていかなければなりません。そこは、なんといっても女性の方が長けているはず。

縄文時代には、みらいの女性多数派社会を豊かにするヒントがあるかもしれません。とても大きな研究テーマ。まずは縄文文化に触れてみないといけません。
というわけで、冒頭の写真は、縄文時代の国宝土偶「カックウ」の顔のミニチュア(函館市縄文文化交流センター提供)。文様づけの体験が手軽にできるそうなので、今度家族で函館に行こうと思っています。レジャーではありません、研究です笑

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