–日経クロストレンド(63)連載–
ソト機能のイエナカ化、隙間テレワーク…生活者の部屋を写真でのぞき見
こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。
実際に生活している部屋の写真からは、生活者の本当の暮らしとその背景にある欲求が見えてくる。博報堂生活総合研究所は、衣・食・住などをテーマに、多数の生活者の写真を収集・分析。今回は、「住」にまつわる1375枚の写真から、5つの気になる生活者の変化について分析していく。
博報堂生活総合研究所は、「生活者をまるごと見る」という基本スタンスで、生活者研究を行っています。その研究の一つに、生活者自身が撮影した写真を収集・分析する「生活写真調査」があります。
ここで収集した写真をデータベースとしてまとめたサイト「生活図鑑」では、<食><衣>に続いて第3弾<住>を2024年に公開しました。
今回は、「生活図鑑」<住>に収録されている1375枚の部屋の写真から、SNSでは見られないようなリアルな生活者の実態から考えられる、マーケティングのヒントを5つ紹介します。
(1)生活に溶け込むフリマライフ
リアルな場からデジタル化して久しいフリマ(フリーマーケット)。不要なものが出てきたときや大掃除のときだけでなく、日常の当たり前の行動に入り込んでいる様子が見られました。
具体的には、梱包材など出品物以外のフリマ用品の置き場に困る人や、専用整理棚をつくっている人がいました(写真1)。
なお、生活総研の時系列データ「生活定点」で見ると、「ネットオークション・フリマアプリを利用している」人の割合は、聴取を始めた06年と比べて2倍に高まって、4割程度はいることが確認できます(図1)。
常時フリマを利用しているけれど、関連用品の管理の煩雑さを感じているユーザーが今後も含めて広がっていく可能性がある。そう考えると、フリマ専用収納ケースといった関連用品に加え、収納の工夫といったノウハウもニッチそうに見えてニーズが高いのかもしれません。
また、フリマもしくは中古市場が当たり前化している時代、リセールを前提とした消費サイクルでのブランディングやファンのつくり方も考える時代であると感じます。新たな購入の場という生活者との接点としても、“セカンドユーザー”がいるという視点も、改めて考える必要がありそうです。
(2)ソト機能のイエナカ化
次にご紹介するのは、本来は家の外にある機能を持ち込んで、“イエナカ(家の中)”を充実させている様子です。
コロナ禍が本格化して3年後の調査でしたので、長らく外出しづらかった影響が表れているのかもしれません。領域としては、BBQやピクニック、キャンプなどのアウトドア機能、ジムやダンススタジオのようなリフレッシュできる場としての機能を家の中に持ち込んでいる様子が見られます(写真2)。
ここで気になるのが、今後生活者はどのような機能を家(の中)に付加したいと思うのか、そして実際に付加できるのか、です。
例えば、料理や飲み物、テーブルコーディネートを工夫することで、家に飲食店の機能を持ち込むといったこと。「おうち居酒屋」や「おうちカフェ」を楽しむ生活者は現在もいるでしょうし、さらに本格化していくかもしれません。
楽器演奏をする人が、自作の防音部屋をつくっている事例もありました(写真3)。
防音できれば、カラオケルームもつくれそうですし、ゲームセンター、サウナなど、人気のエンタメ・リフレッシュ機能をイエナカ化させる商品やサービスの展開も広がっていく可能性があります。
行きたいけれど、恥ずかしかったり、子育てや介護などがあって一人で行けない事情を抱えていたり、外のサービスを利用できない状況の人も少なくありません。そんな生活者に対しても、思い切ってソト機能をイエに持ち込むという選択肢を提供できるといいのではないかと思います。
→続きは「日経クロストレンド」のページからご覧ください。
<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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