–日経クロストレンド㊹連載–
広告から見た「消齢化」の現実と疑問
気鋭コピーライターの視点

執筆者:生活総研 上席研究員 植村 桃子
こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。
広告から見た「消齢化」とは。生活者の年齢による意識や価値観・嗜好の違いが消えていく現象「消齢化」について、コピーライター/クリエイティブディレクターで、Tangの尾形真理子氏はどう考えるのか。博報堂生活総合研究所の研究員で、自らもコピーライターでもある植村桃子が疑問をぶつけ、消齢化に広告関係者、マーケターはどう向き合うべきかヒントを探った。

広告面から生活者の変化を追うコピーライター/クリエイティブディレクターの尾形真理子氏は、「消齢化」をどう見ているのか
年齢や性別などのデモグラフィック属性を基に対象を設定し、メッセージや表現を制作することが多いといわれる広告クリエイティブ。その最先端で活躍しつづけている尾形さんは、消齢化をどのように捉えるのでしょうか?
改めてのご紹介になりますが、消齢化とは「年代/年齢による価値観や嗜好の違いが小さくなる」現象を指します。今回は、尾形さんの広告表現に対する向き合い方や世の中を見つめる視点から、消齢化社会をどう見るべきか、どう理解すべきか、ヒントを探っていきたいと思います。(消齢化の詳しい解説は、「消齢化ラボ」ならびに過去の記事をご覧ください)
▼参考記事
30年データで突き止めた新ワード「消齢化」 消えゆく年代の壁
▼参考リンク
消齢化ラボ
大切なのは、年齢そのものよりも「リアリティー」
博報堂生活総合研究所 植村桃子(以下、植村):
まずは、広告と年齢の関係についてお聞きしたいと思います。尾形さんはこれまで、広告の企画やコピーを考える際に、対象の年齢をどれくらい意識してきましたか?
尾形真理子氏(以下、尾形):
「年齢を意識せずにコピーを書いてきました」と言えたら格好いいんですけど、やっぱり対象によって表現は変えてきました。広告って、「自分に向けたメッセージ」だと思ってもらわないと成立しないですよね。プロの広告制作者である以上、想像力なりデータなりを武器に、対象が誰であってもメッセージを書き分けられるというのは、できて当然のスキルだと思います。
とはいえ、以前、小説(『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』[幻冬舎文庫])で「感情は、歳をとらないのかもしれない」と書いたこともあります。対処の仕方が拙いところから老練になることはあっても、うれしいとか、寂しいとか思う感情自体に、年齢はあまり関係ないんじゃないかなって思ったんです。
その意味では、「18歳だから」みたいに年齢を枕詞(まくらことば)に思考するということはない、と言えます。年齢を意識しているというよりは、「この表現は、対象に対して本当にリアリティーがあるのか」ということがいつも課題としてありますね。
広告制作の現場で感じる「消齢化」とは
植村:広告制作者としての尾形さんは、属性よりも「個」に向き合おうとしてきたんですね。一方で尾形さんにコピーを依頼する企業側は、対象を年齢や性別のような属性で捉えようとしてきたと思います。最近、企業側に消齢化による変化を感じることはあるのでしょうか?
→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。
プロフィール

尾形 真理子(Tang)
コピーライター/クリエイティブディレクター1978年東京都生まれ。2001年博報堂に入社し、18年Tangを設立。LUMINEをはじめ、資生堂、Tiffany&Co.、キリンビール、Netflix、FUJITSUなど、多くの企業広告を手掛ける。朝日広告賞グランプリ、ACC賞ゴールド、TCC賞など受賞多数。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎文庫)で小説デビューし、20年に『隣人の愛を知れ』(幻冬舎文庫)を出版。歌詞の提供やコラムの執筆など活躍の場を広げる