–日経クロストレンド㊻連載–

消費・市場を変える新キーワード
「ひとりマグマ」のポテンシャル

執筆者:生活総研 上席研究員 近藤 裕香

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

日本社会は「総ひとり好き」に向かっている。博報堂生活総合研究所の30年前と今の生活者調査からは、そんな変化が見えてきた。調査結果の詳細を解説した前編に続き、後編では「ひとり」を追い求める生活者が社会や消費に与える影響、そのエネルギーのポテンシャルについて深掘りする。

「ひとり」を追い求める人が持つ新たな消費インパクトとは(画像:kieferpix/stock.adobe.com)

<前編はこちら>

1993年と2023年の生活者調査から、年齢や性別、未既婚といった属性に関わらず「ひとり」を志向する生活者が増えていることを前編で解説しました。さらに、人とつかず離れずのよい距離感を持ち、状況や気分に応じて「今はひとりがいい」「今は人といっしょがいい」と、自分で切り替えながら日常を過ごしていることも明らかになりました。

「ひとり」をめぐる認識は、未婚や独居といった固定的な「属性」ではなく、その時々でフレキシブルに選べる「モード」へと変わってきているようです。

後編では、「総ひとり好き社会」に向かう日本における「ひとり」に関する実態やその新しい価値について、生活者調査やインタビューからさらに深掘りしていきます。そして、「ひとり」を希求する熱いエネルギーが、社会や経済を活性化させる可能性について考えてみたいと思います。

「ひとり」行動を阻むハードルの存在

調査結果から生活者の多くは「ひとり」が好き、ということは分かりました。しかし、実際に「ひとり」の時間を確保し、満足のいく「ひとり」行動ができているのでしょうか。

かくいう筆者も「ひとり」が大好きな人間ですが、日常の多くの時間を家事育児に追われ、「ひとり」を満喫できているかといわれると残念ながらほど遠いのが実情です。

そこで、「ひとり」に関する実態をつまびらかにすべく改めて調査を実施しました。その結果、「ひとり」時間は誰もが欲しているが、そういった欲求を抱えつつも、それを実現できずにいる生活者が数多く存在することが分かったのです。

「ひとり」時間は、誰もが欲しい

まずは、「平日に欲しい『ひとり』でいる時間」の結果をご紹介しましょう。

0時間、つまり「ひとり」でいる時間は欲しくないと答えた人は、全体で僅かに2.2%でした。これは年代別で見ても、未既婚別で見ても、ほぼ違いはありません。

一方、「ひとり」でいる時間が3時間以上欲しいという、やや長めの時間の回答を合算すると、全体で65.6%を占めます。相対的に「ひとり」になりにくいと思われる既婚者で見ても59.6%に達しました。時間の多寡はあれど、「ひとり」時間は誰もが欲しているものであることが分かります(図1)。

図1:【平日に欲しい「ひとりでいる」時間】

実は7割の人が感じている! 「ひとり」行動を妨げるハードル

では、その実態はどうでしょうか。

「ひとり」行動をする際のハードル(妨げ)があるかを聞いたところ、実に7割の人が「ひとり」行動のハードルを何かしら抱えていることが分かりました。

性別では男性より女性の方が高く、年代別では20~30代の若年層が全体より高い数値になっています。また、子どもの有無でもハードルの有無に大きな違いがあります。全層で「ひとり」行動を妨げるハードルを感じている人は多数派ですが、なかでも子育て世代の多い20~30代や女性でハードルを感じている人が特に多いようです(図2)。

図2:【「ひとり」行動へのハードルの有無】

「ひとり」行動を妨げる4つのハードル

それでは、「ひとり」行動を妨げるハードルは具体的にどういったものなのでしょうか。自由回答で聞いたところ、様々なエピソードが出てきました(図3)。

図3:【「ひとり」のハードルについての自由回答抜粋】

ここからは、生活者の生声から見えてきた、4つのハードルをご紹介します。

ハードル(1) 資源が足りない

まず、「ひとりで遊びたいがお金がもったいない」「仕事が忙しく、時間があってもやりたいことをやる気力がない」など、お金や時間といった「ひとり」行動をするための資源が足りないというのが、最も多く登場するハードルでした。

ハードル(2) 環境が許さない

そして、「留守中の家事をすべて配偶者に負担させてしまう」「子どもがまだ小さいのでほっとけない」「田舎なのでひとりで楽しめるものが近くにない」といった、家族や居住地など、自分の都合以外の生活環境をハードルと感じている人も多くいました。

ハードル(3) 自意識が邪魔をする

「義両親に子どもがかわいそうと思われたくない」「周りは恋人と楽しそうにしているなか自分だけがひとり行動しているのは恥ずかしい」など、「ひとり」行動をしている自分が他者からどう見られるかを気にする自意識もハードルとしてあるようです。これは他者の目を意識する日本人らしいものかもしれませんね。

ハードル(4) 対応力に自信がない

最後は、「何か起こったときにひとりで対処できる自信がない」「ナンパなどが怖い」といった、不測の事態が起こった際の責任や対処を全て自分で負うことへの自信の無さをハードルとして挙げる人もいました。

このように、様々なハードルの存在で「ひとり」行動をしたくてもできていない人、あるいは「ひとり」行動をしてはいるが、思い通りにはできていない人が7割も存在している。この事実は見逃すことができないものです。

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

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