「みんながやっているから」「みんなが良いと言っているから」 私たちはそんな理由からモノやサービスを選ぶことがあります。[みんな]を気にするこうした行動が積み重なった結果生まれるのが、流行やヒット。では実際、どれくらいの人たちが、[みんな]を意識した行動をしているのでしょう? そんな疑問から、生活総研ではこんな質問をしてみました。
「みんなについていけない」と思っている人は70%以上
回答してくれた首都圏・阪神圏・名古屋圏の20〜69歳の男女1500人のうち、なんと7割もの人が「みんなについていけない」と感じたことがあるようです。さらに「そう思った理由」から主な回答をみてみると……
そもそも流行に興味がない。(39歳男性)
そもそもついていく気も乗る気もない。みんながいいと思うものが必ずしも自分にとっていいとは限らない。大抵はどうでもいいもの。(47歳女性)
自分自身の意志があるので真似しようとも思わない。(34歳男性)
「みんな」という基準を押しつけられることが好きではないので、こうしたアンケートで「みんな」の基準を求められることでついていけないと感じる。(39歳女性)
ご覧の通り、ここに挙げさせてもらった人たちは、「みんなについていけない」からといって、ことさら自分を卑下していません。むしろ周りをちょっと小馬鹿にしている雰囲気すら感じさせます。もちろん、「自分の感性が古くて……」「時代の流れが早すぎる……」といった趣旨のことを書いてくれた人が大多数ではありました。しかし、[みんな]や流行を下に見るがゆえに、あえて「ついていけない・乗れていない」と回答する人は予想外に多かったのも事実。その数、実に25%に及びます。
[みんな] とあえて違う道を行く人たち。この人たちは、なぜ、そんなに自分を強く、確かに持てるのでしょうか?
「自分はみんなと違うぞ」と誇らしい気持ちになったことがある人は30%
もうひとつ、 こんな質問もしてみました。
先ほどの質問を裏返し、直接的に問いかけてみました。「誇らしい気持ちになったことがある」と答えた人は1500人のうち3割ほど。少数派ではありますが、一定数は存在するようです。こうした〝独自路線派〟の人たちは、自分は[みんな]より何らかの部分で優れていて、[みんな]は自分より下に位置すると思ったことがあるとも捉えられます。では、どんな理由で「誇らしい」と答えているのでしょうか。
自分を誇る理由は 【成果型】【自然型】の
2パターン
回答を集計・分類し、トップ10にまとめると、図表のようになりました。
このうち緑で塗った分類は、自分の行動の積み重ねによって[みんな]より高い地位や能力を得たという【成果型】。こう回答した人たちが自分を誇る背景には、意識的に[みんな]より頑張って成果を得たという事実があるということです。
むしろ、今回の分析で生活総研のメンバーが驚いたのは、赤で塗った部分です。こちらの分類は極めて主観的な判断で、「自分でそう思うから」以上の根拠が存在しません。「ありのままの自分」をそのまま誇って生きている、いわば【自然型】。そして、トップ10のほとんどがこの【自然型】なのです。この人たちにとって、自分を誇るのに[みんな]基準の根拠は不要です。[みんな]が認める成果を上げる必要もありません。なぜなら、もともと自分は[みんな]と違って特別だと思っているようです。 このように考える人たちの強さを支えているのは、自分の「良さ」を自分ひとりで信じながら、大なり小なり誇りを持って生きていく、完全なる「自力」といえるのではないでしょうか。 [みんな]に対して無駄に卑下することもなければ、[みんな]の最後尾から追随することもない。今回の調査結果からは、そんな健全で自由な、生活者の心理もみえてきました。
出典: 博報堂生活総合研究所 [みんな]に関する[みんな]の意識調査(東名阪) [第1回]
「[みんな]を巡る問い」 に戻る