Part.1 [みんな]を巡る問い

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世論の人数イメージ調査

多くなくても世論、AIも世論になる未来へ

マインドスコア法でイメージを測る

生活総研には、普段、生活者が何気なく交わす言葉に含まれる漠然としたイメージを、数字で可視化するオリジナル調査手法があります。私たちは、この「マインドスコア」という手法を使って、これまで様々な言葉の調査を行ってきました。
例えば、「オジサン」。「オジサンって、何歳からですか?」と質問すれば、人びとが感じている漠然としたオジサン像を年齢という数値で捉えることができます。ちなみに、2017年5月、東名阪の20〜69歳の男女1500人に実施した調査によると、オジサンは40〜44歳という回答が最も多く40%、次いで50〜54歳が22%。この2つの山で6割にもなります。また、平均値は最多回答内の43歳でした。このようにマインドスコア法は、人の心にある、ものごとの認識を「ぼんやり」から「くっきり」へと変えることができる手法のひとつなのです。

「世論って何人以上?」 丘陵型に広がる認識

そして今回、私たちは、マインドスコア法を使って「世論」の人数イメージを測りました。2018年8月の調査で、東名阪の20〜69歳の男女1500人に投げ掛けた質問はこちらです。「日本の人口は現在、約1億3千万人です。このうち、何人以上の意見であれば、世論といえると思いますか?」みなさんなら、どれぐらいの数値を思い浮かべるでしょうか……。
早速、結果をご紹介しましょう。平均値は4342万人でした。しかし、回答分布のグラフを見ると、5千人未満から1億人以上まで広範囲に広がり、オジサンの年齢グラフのような山がありません。どこかに回答が集中することがなく、最も多く分布する7千万人以上~8千万人未満でも12%程度にすぎません。「世論って何人以上?」に対する生活者の認識は丘陵型に広がっていました。

世論を測るには「質の尺度」も必要

なぜ、このように世論の認識はばらつくのでしょうか? 調査対象者に世論の人数イメージとあわせて聴取した回答理由のなかに、その謎を解明するヒントがないかを探索。そうすると、次に挙げるような意見が目に留まりました。
※( )内の人数は、それぞれの調査対象者がイメージした世論の人数イメージ。

「大多数ではなくても、声の大きい人、影響力のある人の意見が大多数であるかのように言われてしまっていると感じる」(5人・46歳女性)
「世論は多数決ではなく、声の大きさやアピール力で決まる。影響力のある人が2千人も集まれば十分世論を代表する」(2千人・59歳男性)
「世論を形成する上で、1割変われば変わり始めるように思う」(2千人・48歳男性)
「5万人も集まって共鳴すれば、変化を起こせそう」(5万人・44歳男性)
「大きな声で言えば、何人でも世論になる」(百万人・69歳女性)
「これだけの人の意見が一致すれば世の中を動かせそう」(1千万人・59歳男性)
「1千万人ぐらいいれば、説得力があるから」(1千万人・30歳男性)
「過半数の人が同じ意見であれば、その意見に影響されてくる人も多いと思うから」(7千万人・27歳女性)

お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでご紹介した調査対象者の方々の脳裏にある世論の人数イメージは、5人から7千万人と相当な幅があります。さらに、これらの回答理由に共通するのは、人数にかかわらず、人びとや世の中への影響力を挙げていらっしゃることです。 今は日本人の生き方・暮らし方、価値観が、人それぞれの個の時代。だからこそ、世論は単に人数という「量の尺度」だけではなく、個、もしくは個の集合体である世の中に対する声の大きさやアピール力という「質の尺度」も含めないと、測れなくなっているのかもしれません。

人間による世論と、人工知能によるAI論

世論にまったく影響されない個は、そうはいません。加えて、個が影響を受けるのは世論だけではなくなってきています。例えば、テクノロジーの進化によるAI(人工知能)は[みんな]の未来を考える上で、意識すべきではないでしょうか。
AIは、ビッグデータから解析する世の中の標準や、一人ひとりの行動履歴や嗜好に基づき、それぞれの個にとっての最適をおすすめしてきます。私たちが、そうしたおすすめを参考にしながら、情報や商品を選ぶことも日常的になっています。

先日、ある研究員が中国人の友達から教えてもらったそうですが、こうしたAIによるレコメンドは中国でも盛り上がっているそうですが、代表例としてその友達が挙げたのが、マイクロソフト中国が開発した対話型AIチャットボット「シャオアイス(小冰)」。いったい、どんなおすすめをしてくるのでしょうか。その友達から送られてきたというシャオアイスとの対話画面をご紹介しましょう。

ビッグデータに基づくレコメンドをするAIでありながらも、「私が聴いてる」とか、「私はポップスが好き」と、あくまでも私のお気に入りとしておすすめしてくるところが、人間同士のやりとりに近くて微笑ましいです。このように、AIが人間っぽい表現をするようになると、人間のほうもAIに対して実際の人間とやりとりしているような錯覚をするようになっていくかもしれません。

人数という量だけではなく、声の大きさやアピール力といった質で影響を及ぼす「世論」、その人にぴったりをおすすめしてくる「AI論」。世の中には多くの論や情報が溢れています。しかし、生活総研が実施する「生活定点」調査では、「情報は多ければ多いほどいいと思う」人は20年で半減しました(1998年25%→2018年12%)。未来には、IoTの浸透などもあり、情報はさらに増えるでしょう。そうなると、「世論」と「AI論」のどちらを参考にすればいいのか、と悩む生活者なども登場しそうです。

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