私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」

シュフからシェフに!
オンラインで「我が家の食卓」が変わる
–日経クロストレンド 連載④–

生活総研 主席研究員

夏山 明美

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

「内食志向」から「中食志向」へ。コロナでこの流れがさらに加速したことで、私たちの食卓はどう変わるのか。「お店の味」が家庭で味わえるようになり、「シュフ(主婦/主夫)」だけでなく「シェフ」がおうちごはんの担い手に。こんなサービスも生まれ始めている。調査を踏まえて、「食の未来」を予想していく。

前編はこちら

前半では、内食志向から中食志向への変化などについてお話ししてきました。この背景には、これもまたコロナ禍の影響があるといえるでしょう。

外出自粛や時短営業といった厳しい状況を乗り切るために多くの飲食店がテイクアウトやデリバリー(以下、デリバリーも含めてテイクアウトと表記)を開始。そのおかげで、飲食店でしか味わえなかった外食の味を家で味わえるようになりました。この動き、一気に広がりましたよね。

大手外食チェーンも個人店も、高級レストランも庶民派居酒屋も、これまでテイクアウトはやっていなかったところも新たに採用。イートインとテイクアウトの二足のわらじを履く飲食店が相当増えました。先日気づいて少しびっくりしましたが、Googleで飲食店を検索すると、そのお店がイートインやテイクアウトに対応しているかどうかがわかるようにもなっているほどです。

これまでは中食といえば、冷凍食品やレトルトなどの加工食品、スーパーマーケットやデパートのお総菜、コンビニ弁当、ファストフードのテイクアウトなどが主流でしたが、コロナ禍によって飲食店のシェフの手作りを家で味わえるようになりました。これは、これからの食と生活を考える上で大きな変化なのではないか…と思います。なぜなら、この変化によって、家庭で食べる食事を手作りするのがシュフ(主婦/主夫)だけでなく、飲食店のシェフにもなり得るというように、担い手の選択肢が広がったといえるからです。

手料理をシェフから学ぶこともできる「ズムメシ」

シェフの味が家庭にやってくる…ということで、私が注目している事例があります。昨年から始まった、オンラインで人と食をつなげるという新たな取り組み「ズムメシ」です。飲食店と生産者が用意した特別なメニューや食材を参加者があらかじめお取り寄せしておき、決まった日時にZoomでつながって食事会をするというもの。いうなれば、全国どこからでも、その時々のシェフの味を楽しめる新しいテイクアウトの仕組みです。

関連リンク(クリックで別ページへ):
・「ズムメシ

さらにおもしろいのは、この食事会には料理人や生産者もこの集いに登場して、料理や食材などについて話をしてくれるという点。オンラインの利点を生かして、消費者も、料理人も、生産者もそれぞれの居場所からアクセスして、特別な時間を共有。時には、食材だけを事前に取り寄せておいて、シェフから学びながら、みんなで一緒に料理を作って食べることも可能です。

ある時、「ズムメシ」で「天ぷらレッスン」が企画され、私の男友達(38歳・2児の父・料理上手な奥さんがいるので普段の食事作りは奥さん任せ)が参加しました。大阪の割烹(かっぽう)亭主から直々に下ごしらえから揚げ方に至るまで、おいしい天ぷら作りの秘伝を教わったそうです。彼曰く、「エビの背わたを取ったり、隠し包丁を入れたりするのが実験みたいで楽しい」とのこと。そして、これを機に「休みの日の初日の夕食は家族のために揚げることにしている」んだそうです。

料理上手な人であっても、天ぷらを家庭で上手に揚げるのは至難の業ですが、シェフ(割烹亭主)から学び、シュフ(主夫)の味として体得した、いい話だと思います。彼の場合は料理レッスンで学んでいますが、シュフ(主婦/主夫)がテイクアウトのシェフの味をまねしたり、シェフのレシピ本を生かして料理を作ったりすれば、おうちの食卓が豊かになり、家庭円満になっていくかもしれませんね。

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
第1回ーー「43歳からおじさん」が調査で判明! 「7つの特徴」を大分析
第2回ーー足りないのはお金より時間 40代おじさんの幸せは“時産”にあり
第3回ーーたこ焼きが1位? 和食が消えた? 好きな料理ランキング大激変

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