「ひとり」行動のハードルを抱えた 研究員コラム
「おっさんレンタル」やってみた
私、研究員植村(30歳女性)は、長年「デパートの大理石の化石探し」をやってみたいと思っていました。でも、「ひとり」でやるのはさすがに人目が気になる。でも友だちをつきあわせるのは申し訳ない……。そんなこんなで寝かせ続けてきた欲求を、この度「おっさんレンタル」というサービスを活用して解放してみました。
「おっさんレンタル」とは?
2010年に、スタイリストとしても活躍する西本貴信さんが創業。女子高生が電車で「おっさんきもい」みたいな話をしていたのを聞いて、マイナスイメージのある「おっさん」が「ありがとう」とお礼を言われる機会をつくったら、「おっさん」っていいものだぞ、みたいなアピールができるかなと思い立ち上げた。おっさんとして登録するには、代表の西本さんとの面談が必要。
レンタルしたおっさん:インドで悟ったおっさん@2年目
親切そうなアイコンが逆に怪しいものの、インドで悟ったなら悪いことはしないだろう……とコンタクト。顔出しはNGのためアイコンですが、かなりさっぱりとした普通の男性でした。悟ってなんて全然ないが、ほかのおっさんとの差別化のためにこんな名前にしているとのこと。名前が長いので以下「おっさん」。
おっさんプロフィール
・40歳。結婚願望なし
・おっさんレンタル登録歴:2年目
・レンタル総数:100件/年(電話相談含む)
・職業:FXトレーダー
・趣味:ピアノ、哲学など考えること
・レンタル料:1時間1000円+交通費
(山手線内交通費無料)
依頼は推し活から恋の悩み相談まで
化石探しは初めての依頼だったそうですが、楽しくつきあってくれました。ほかにどんな依頼があるのか聞いてみたところ、「推しが人気に見えるように、推しの握手会の列に並んでほしい」や、「昔の恋人が結婚する相手を遠目に見たいから、一緒についてきてほしい」などなど……確かに、知りあいにこそ頼みづらいけど、ひとりではできない。「ひとり」欲求を抱えた生活者のやってみたいことに、密やかに寄り添ってきたサービスなのかもしれません。
おっさんレンタル=日本から消えゆく 「おせっかい」文化?
おっさん曰く、「固有の誰か(親友のAさんや、専門職カウンセラーのBさん、など)である必要はないが、他人に手伝ってもらうこと(=愚痴や相談)で一歩前に進めることって結構あると思ってまして(一年半おっさんをやってみた実感含む)、 何でもないおっさんとたまたまタイミングが合ったときに話をする機会、みたいなのが昔の長屋文化ではあったんじゃないかなーという想像です。今社会問題になってる孤独孤立に対してのアプローチのひとつとしても面白い試みだと思ってます」 とのこと。
感想
はじめのハードルは高いが、 「ひとり」欲求の解放にもってこい
「こんな変わったサービスをやるくらいだから、かなり癖のあるおっさんなんだろうな……」と思っていたのですが、現れたのは普段接する人のなかでもかなり柔和で接しやすい方でした。ささやかながらお金をお支払いすることで、罪悪感ゼロでとことん自分のやりたいことにつきあってもらえました。憧れだった化石探しを満喫できたことはもちろん、せっかくなので恋愛相談や愚痴を聞いてもらったところ、とにかくよく聞いてくれるし、聞けばしっかり自分の意見を言ってくれるし、押しつけがましくもなく……とても良い相談&雑談相手で、大満足の2時間でした。
「レンタルされる側」も魅力的
レンタルする需要もありつつ、おっさんの話を聞いていると、レンタルされる側が楽しそう。不測の出会い、不測の出来事、他人の日常に、無責任に片足つっこんでみたい……。これだけいろんな娯楽があるなかで、「その人の周りの誰にも話せない話を聞き、頼めないことをやる」こと、「感謝される」こと、「受け身(登録して待つだけ)で新しい体験や価値観に触れられる」こと、「自分の人間性にお金をもらう」こと。時間的・経済的な余裕があってこそだと思いますが、新しい人生の楽しみ方な気がします。
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