私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

第16回

生活定点から見えてくる、「新しい大人の関係性消費」

博報堂 新しい大人文化研究所

安並まりや

新しい大人文化研究所(新大人研)は、博報堂内にある、40代以降の「大人世代」を対象としたリサーチとマーケティングを専門とするシンクタンクです。

現代、特に60代以上の方について、今までの「シニア・老人」という概念とは一線を画す「新しい大人」が台頭しています。彼らは、前向きでチャレンジ精神が旺盛、さらに生活をエンジョイしたい気持ちのある人達で、団塊世代からそのボリュームは多くなっています。私たちの役割はその新しい大人の価値観や意識を可視化し、マーケティング業務に活かしていくことです。詳しくは新大人研のHP(http://www.h-hope.net/)をご覧ください。今回は私たちが研究しているテーマのひとつを生活定点のデータを使いながらご紹介させて頂きたいと思います。

私たちが最近注目しているテーマの1つが、「関係性消費」です。ちょっと耳慣れない言葉かと思いますが、一言で言えば口コミ・推奨がきっかけの消費行動で、人から聞いて購入したものや、ギフト等も含まれます。若者世代においてはSNSでの行動や意識調査で動向が見えやすいのですが、大人世代は調査パネルも少なく、デジタル行動も活発でないため可視化しにくいのが現状です。この生活定点は、60代までのデータが長期に渡って俯瞰で見られる点において、昔と今の大人世代を分析するのにうってつけのデータです。早速大人世代における関係性と消費の潮流をみていきましょう。

既成の団体に所属する「シニア・高齢者」から、自分で複数の関係性を運営していく「新しい大人」へ

リタイアしたら既成のグループ・団体である町内会や老人会に入るもの、というのが今までのシニア・高齢者でしたが、新しい大人世代は個人の自由意思で新しい関係性を築き始めています。「参加しているグループ・団体がある」と答えている60代は1992年で67.7%なのに対し、2016年では48.6%と5割を切っています。

01https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/991.html

しかし、団体に所属しない新しい大人世代はもっと能動的に人づきあいを行っているようです。例えばこんなデータ。「友達でも、間柄によって連絡方法を意識して区別する方だ」と答えている60代は1998年には10.2%だったのに対し、2016年では19.8%と、18年間で倍増しています。最近新大人研で行った関係性消費に関する定性調査でも、ご近所友達だけでなく、ジム友、趣味友、同窓生仲間等、数多くの関係性を持っていることが分かっています。

さらにSNS等のデジタルデバイスを活用し、効率的にコミュニケーションを取っているという側面も。「メールやSNSでやり取りする友人がいる」と答えている60代は、2年前と比べ伸びています。既成の団体に所属し、みんなと等しく付き合うという関係性から、自ら取捨選択し、複数の関係性を効率的に運営していく方向にシフトしている姿が伺えます。

02https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/972.html

03https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/987.html

関係性消費は、既存の慣習優先の「シニア・高齢者」から、個人を祝うためのギフトを送る「新しい大人」へ

そんな新しい大人の関係性から、推奨・贈答等の関係性消費のかたちにどのような変化が表れているのでしょうか?大人世代の贈答・ギフトについてのデータで面白いものがありました。「お歳暮を毎年欠かさず送っている」60代は1994年に75.2%だったのに対し、2016年では55.6%にまで低下。お中元でも同じような傾向です。

04https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/1009.html

逆に「お誕生日」に贈り物をする大人世代が増えているようです。60代を見ると1998年は48.6%から、2016年には64.4%と約16ポイントも増加。お歳暮などの慣例的な贈答が、「シニア・高齢者」における関係性消費に対し、「新しい大人」はお誕生日等個人を祝うためにギフトを送る。関係性を形づくる消費のあり方も変化を遂げていることがわかります。

05https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/1017.html

「新しい大人」にとっての関係性はインフラ、消費は関係性を維持・確認するための潤滑油

ここまで生活定点を中心に大人世代の関係性と消費の今昔を見てきましたが、なぜこのような変化が起きたのか、新大人研の仮説を提示してコラムを終えたいと思います。一昔前のシニア・高齢者は、「隠居」という言葉の通り、家族や地域という盤石なインフラがあり、悠々自適な余生を送るということが当たり前でしたが、「新しい大人世代」は、下流老人や独居老人等、インフラが必ずしも保証されない、むしろ自分で築き守り続けるという課題に直面しています。生活の質を高め合う、そして支え合う友達を、生活総合研究所では「インフラ友達」と定義しています。今台頭している新しい大人世代がつくる新たな関係性は、まさにこのインフラ作りに近いのではないかと考えます。

さらにギフト等の消費はこのインフラ的な関係性を確認・維持するための潤滑油としての役割が強まるのではないでしょうか?だからこそ慣習としての贈答ではなく、個人を祝うことで関係性を確認しあうバースデーギフトが、新しい大人の環境やニーズにより適しているのだと思います。

一般的に、今の大人世代は昔と比べインフラが保証されない、という不安定でネガティブな側面が見えがちです。しかし、逆の視点でみると、大人世代は子育てや会社人生を終えて自由になるタイミング。また、特定の団体に縛られて余生を送るのはちょっと息苦しい感じがします。自分の意思で付き合う人を決めて、共通の話題で盛り上がったり、商品やサービスをお勧めしあったり、お祝いしあう方が楽しそうだし、真に人生を謳歌しているような気がしてならないのです。

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