コロナ禍と生活者

コロナ禍における生活者の暮らしや価値観の変化をお伝えします。

テーマ3 コロナ禍を通して新たに気づいたり、発見したこと

自分や周囲への「解像度」の高まり

生活総研 上席研究員

佐香 孝

生活総研ではコロナ禍生活における工夫や新たな気づきを、生活者に写真でレポートしてもらいました。その数は1800枚にも及びます。それらはデータベース化して公開していますので、暮らしの変化を発見するツールとしてぜひご活用ください。
テーマ3 コロナ禍を通して新たに気づいたり、発見したこと

ここでは、生活者写真レポートのテーマの3つめ「コロナ禍を通して新たに気づいたり、発見したこと」から、私の視点で読み取ったことをお伝えします。みえてきたのは、自分や周囲への「解像度」の高まりです。
「自分」への視線。
自分と向き合う、自分自身についての新発見と期待「周り」への視線。
家族、エッセンシャルワーカーなど、自分を支えてくれる存在の再発見と感謝、「外界」への視線。
自分の住む生活圏への気づきや、生活時間への身体感覚を発揮した発見。

コロナ禍が、自分自身への発見機会となり、その視線を周囲にも向けていく生活者の姿が浮かび上がってきました。

「自分」への視線① 嗜好の新発見

ひょんなことから、自分自身を対象として向き合う機会も多かったことがうかがえます。コロナ禍前は、4Lのペットボトルウイスキーをこんなの誰が買うのだろうか?と思っていたら、実は自分だった、という写真が象徴的。実は自分はコレクターだった、実は旅行というより写真が好きだったなど、思わぬ刺激を自分自身から得られた、という気づきです。

「4リットル入りのウイスキー」  (44才 / 男性 / 東京都)
元々(コロナ前)お酒は自宅では飲まず、会社の飲み会程度しか飲まなかったのですが、コロナ禍に入り外で飲む機会が完全にゼロになってしまったことを機に自宅でハイボールを作って飲むようになりました。最初は700mlのビンを買っていたのですが想定外に早く無くなってしまうことに気づいて、ついに4リットルボトルを買ってしまいました……。スーパーで見る度に「誰がこんな大きいウイスキー買うのだろうか?」といつも思っていたものを自ら買うとは考えもしませんでした。笑

「マスクコレクション」   (49才 / 男性 / 熊本県)
コロナ禍で様々なマスクが出回っていますが、気が付けば不織布・ウレタン・布製問わず、気に入ったマスクを揃えるようになっていました。写真は極々一部で、コレクションは数十種類に及びます。自分にモノを集める気質があると初めて気づきました。

「コーヒー」   (22才 / 女性 / 熊本県)
コロナ渦で家にいることが増え、家にあるもので生活する中、ずっと飲めないと思っていたコーヒーが飲めるようになっていて、好きになったこと。

「写真」  (39才 / 女性 / 静岡県)
当たり前に旅行に行けていたときには、本当にすぐにカメラロールいっぱいになるぐらい夢中で撮りつづけていた写真。旅行にもいけなくなり、自分が改めて旅行が好きだった理由に気づくことができました。写真を撮ること、これが自分の趣味だったんだなと再確認できました。

「自分」への視線② 能力の新発見

やったことがなかったが、やってみたら意外にできた、できないと思っていたがやりおおせた……。コロナ禍での生活は、自分の知らなかった能力の「駆動機会」にもなっています。料理、自炊、DIYといった生活技術的な領域、数千本の映像ソフトの整理や筋トレといった継続作業系、手芸や金継ぎなどの技術習得や上達の領域など、「あたらしい自分」が気づきとして報告されています。

「料理」  (21才 / 女性 / 東京都)
今までご飯を全く自分で作らなかったのですが、就活の気分転換で料理を始めたところ、料理を作るのも楽しくなりました。また久しぶりに外食をしたときにとてもしょっぱく感じたのも気づきです。

「よみがえった玄関先」  (62才 / 女性 / 岩手県)
玄関ドアを取り替えたくて調べたら,コロナで収入減の我が家では無理無理! 思い切って玄関先にレンガを敷いて、敷石まいてドアを黒くペイントしたら,なかなかやるではないかと新たな自分を発見できた。これから先、きっと自分でできることが増えると自分に期待が持てた嬉しい体験だったから。

「3千本以上の映画と落語のCD」  (66才 / 男性 / 埼玉県)
丁度定年退職がコロナ禍と重なり、何をするでもなく無為な日々を送っていたが、録り溜めたブルーレイの映画の一覧表を作成した。4000本に近い映画を邦画と洋画。アイウエオ順にどのファイルに有るか分かるようにした。1000枚のCD も同様に作業。コロナ禍がこれだけ長くなかったら、自分の性格から絶対に無理だったろうと思い、コツコツとやっていく面白さを知ったことでした。

「ハンドメイド作品」  (28才 / 女性 / 京都府)
これまで不器用で何も出来ないと思っていましたが、コロナでのおうち時間を利用してミシンで色々作ってみるようになりました。最初は簡単なものから、上級者向けのものまで作れるようになり、自分の可能性に気がつきました。

「金継ぎ」  (61才 / 女性 / 神奈川県)
自分の趣味の可能性。こんなこともできるんだ、これはこうすればいいんだ、ということがたくさん。そして、物は大切にしたい。

「自分」への視線③ 判断基準の変更・書き換え

コロナ禍生活は、様々な行動変化とともに、価値観や判断基準にも大きな影響を与えています。もともとモノを多くは持たない主義だったが、やはりある程度はストックが必要だと気づいたとか、クルマは維持費のかかるものという認識を改め、安全で便利な手段なのだと気づいた、といった発見です。

「ストック」  (34才 / 女性 / 佐賀県)
ストックしない派でしたが、買い物ができないためストック増えました。

「自家用車」  (29才 / 男性 / 埼玉県)
コロナ以前は単なる移動手段の一つ以上の認識はなく、むしろ維持コスト等を考えると本当に買うべきだったか悩むほどだったのだが、今ではむしろ人との接触を避けて移動できるので、持っていて良かったと認識を改めさせられた。コロナに限らず例年のインフルエンザにしても、感染症拡大防止の観点から自家用車での移動は合理的だと気付かされた。

「テレワーク用のテーブルセット」  (32才 / 男性 / 愛知県)
テレワーク当初はコタツテーブルにあぐらをかいて仕事していましたが、もともと腰痛持ちのため、改めて椅子のありがたさに気づきました(写真のテーブルセットはテレワーク用に新調したものです)。

「イベントの注意点」  (34才 / 女性 / 京都府)
様々なイベントが、感染対策を行いながら実施されている。感染対策をしている旨の文言がある場合とない場合があり、あるところの方が安心できると思った。

「小分け皿」  (60才 / 男性 / 千葉県)
今までの夕飯では大皿での料理が多かったが、コロナ禍以降写真のような一人分が小分けにできるお皿の購入や小皿に分けて出てくることが多くなった。小皿に分けることにより、いろんなものを少しずつ摂れることは身体にもよいとのことで、新たな発見であった。

「自分」への視線④ サービス体験の促進と享受

コロナ禍生活は、新しいサービス体験のトライアル機会にもつながっています。
「家の中で過ごす時間が増えた→SNS視聴が増えた→体験記に触れた→ECでトライ購入→よかった」「おもちゃを自分で買いに行けない→ネット購入は難しいと持っていたが、玩具のサブスクを利用してみたらとても良くて助かった」「節約や家計の見直したくて手始めにふるさと納税をやってみたら、簡単さ、中身のよさ、便利さに気づいた」
まずコロナ禍での不自由さや制約があり、代替手段を検討するうちに、新しいサービスに出会う、試してみたらよかった、という体験の流れになっています。

「初めてのことに挑戦」  (27才 / 女性 / 大阪府)
SNSをよく見るようになり、コロナ禍でネットショッピングをよく使うという内容をみた。その中でおすすめ商品があり、今までは購入しなかったものも購入するようになった。写真も商品は知っていたけど購入する気はなかったものだが、SNSでかなりおすすめされておりつい買ってしまった。でも買って大正解!これからも挑戦しておすすめを買ってみます。

「サブスクデビュー」  (25才 / 女性 / 東京都)
『サブスク』の便利さに気づきました。週一程度で通っていた近所のお花屋さんですが、お花のサブスクを始めたとのこと。3ヶ月3000円で毎日一本のお花をいただけるこのサービスを利用し始めてから、自宅のあらゆるところにお花を飾ることができ、毎日の暮らしに彩りが加わりました♪

「おもちゃのサブスクほか」  (28才 / 女性 / 神奈川県)
おもちゃのサブスク、その他サブスク各種(映像系:Amazon prime、hulu等)。あまりサブスクに興味がなく調べたこともなかったが、おもちゃを自分の目で見て買いに行くことがなかなか出来なくなった。ネット購入には難しさも感じたけれど、子どもの月齢に合わせておもちゃが届くサブスクはとても助かっている!Amazon primeとHuluその他映像系サブスクもとても利用頻度が増えた!導入して正解だったなと思った!

「ふるさと納税の返礼品(野菜)」  (30才 / 女性 / 大阪府)
あらためて節約や家計を見直し、お金のことももっと勉強したいと思い、手始めにふるさと納税を始めました。思っていたよりずっと簡単で、返礼品の良さにもびっくり。まだまだ知らない便利なことやお得なサービスがたくさんあるんだろうなと思いました。

「周り」への視線 家族や周囲の新発見と感謝

視線は自分だけでなく、身近な存在へも注がれています。ふとしたところでお子さんの成長を感じたり、ペットの普段の様子に触れて意外な姿を発見する、という報告です。その延長に、日常を支えてくれる、宅配便のトラックやサービスへの感謝を感じる、という視線も注がれています。

「器用に出来たね」  (46才 / 女性 / 兵庫県)
家でゆっくりする時間がなければ、子供が自分でヘアアレンジをできるようになっていることに気づきませんでした。

「子どもが作ったカルボナーラ」  (42才 / 女性 / 滋賀県)
コロナで学校が休校になり、親子で過ごす時間が増えました。我が家は共働きで今までこんなにたくさん子どもと過ごす事がありませんでした。その時間を有効に使い、子ども達が将来自立できるように料理を教えました。そして、休校が解除され学校が始まったときには自分たちでご飯を作れるようになりました。今までなら週末は昼ごはんを用意して仕事に行っていましたが、今は自分たちで作っています。子ども達は何でもできるのだと知りました。親が手出しし過ぎていたから何にもできない子どもに育つのであって、もっと子どもの持つ力を信じないといけないのだな…と強く思いました。

「息子の料理」  (56才 / 女性 / 埼玉県)
昨年大学生になった息子は、入学早々オンライン授業でずっと家に居ました。2年生になった今年は、一週間交代で登校とオンライン授業。コロナ過でも自宅使くの飲食店でアルバイトを始めました。そのお陰か?自分の食事は自分で作ったりします。色々思う所はあるはずですが、腐ることもなく現実を受け入れ、自分の世界を少しずつ広げようとしているようです。人のために何か(料理とか)をするということを通して、息子の成長を感じています。作ってくれた料理に対して感想を言うとか、作る側の気持ちがわかってきたのかもしれません。色々料理のアイディアも出してくれます。大葉をたくさん頂いた時の肉レシピは、2人で考えました。会話しながら料理出来るって、いいな~と思いました。

「ペットの姿」  (39才 / 男性 / 東京都)
これまでは自宅にいる時間が極めて短く、ペットが日中どのように過ごしているかも知らなかったが、意外な姿などを見かけたことは新たな発見だった。


「ヤマト運輸のトラック」  (33才 / 女性 / 栃木県)
人に会いにくい世の中になったが、宅配便が私たちの気持ちを届けてくれる存在であると気づいた。たくさんのリスクの中、働いてくれて、本当にありがたいことです。

「外界」への視線① ヒトと社会の変容と異様さ

緊急事態の頃の、全く人がいない風景。マイカー通勤が増えて満車の駐車場、ソーシャルディスタンスが日常化した異様さ。逆にその中で繁華街に繰り出す人びと、道端に捨てられるマスクたち……。コロナ禍での変化、人間と社会の変容の異様さを記録していた写真、ストックを投稿してくれた方が多数いらっしゃいました。

「商業施設の地下道」  (56才 / 男性 / 広島県)
こんな写真が撮れるのは 緊急事態宣言下だけ、と思い撮った一枚。いつもならこんな光景が撮れる所ではないのです。 少し驚き、感心し、寂しさも感じ、という気分でした。

「コロナ禍で観光地に人がいない」  (26才 / 女性 / 茨城県)
コロナ以前では人が多い観光地が、コロナ禍によって人がほとんどいなかったから。また、人がいないことにより、いつも見ている景色感が全く違うように見えた。

「満車の駐車場」  (43才 / 男性 / 京都府)
コロナ前はガラガラだった駐車場が、コロナ禍では毎日満車。それだけ電車を敬遠してマイカーを使っている人が多いことを実感します。

「人出」  (33才 / 男性 / 神奈川県)
人はいうことを聞かない。

「捨てられたマスクとそれを拾う私」  (66才 / 女性 / 北海道)
道にこうして、捨てられたマスクがたくさんあります。無造作に捨てられたマスク、何度拾ってゴミに出したことか。とりわけ不織布のマスクは海や川では分解されないとか。責任持ってそれぞれが処分してほしいです。また、道ばたの捨てられたマスクを拾う私です。 

「外界」への視線② 自分の「生活圏」「生活時間」を初体感する

「外界」といっても、自分が住んでいるところの周辺の発見や初体験を挙げる人が目立ちます。素直な驚きと、灯台元暗しでコロナ禍前は/何年も気づかなかったことへの若干のうしろめたい感覚も混じっているようです。
在宅時間が増えたり、時差行動によって、近所の「場所」だけでなく「時間」、つまり「これまで触れてこなかった時間」を感じたり、居合わせる感覚を挙げる生活者もみられます。「日が伸びたなー」と体で感じる感覚を取り戻した、という生活者も。
「散歩中に見つけた場所」  (23才 / 男性 / 東京都)
コロナ禍で行くところもなく、家の周辺を散歩していたときに、4年目にしてこのような広大な自然のある場所を初めて見つけた。

「階段」  (35才 / 男性 / 大阪府)
近場を散策する際に、階段の風合いや佇まいのようなものに注目することが多くなり、撮影することが増えました。なにか動画を撮る時にも使えそうで、撮影のロケハンのように、探すこと自体を楽しむ側面もあります。

「時差出社の電車」  (50才 / 男性 / 福岡県)
時間をずらして出社すれば、電車は空いている。わかってはいたがなかなかできなかったこと。

「家のインターネットの速度」  (55才 / 男性 / 千葉県)
コロナ前は夜にインターネット速度が落ちるのが当たり前だったのですが、コロナ後は夜ではなくて昼に落ちるようになったのが発見です。なんだかんだ言ってもリモートワークが増えているんだなと思います。

「窓からの日差し」  (25才 / 男性 / 神奈川県)
日中も家にいることが増え、日差しで時刻の感覚を覚えていた。日が伸びたなー、とかをもっと気にしだした。

<コロナ禍 1800の暮らし 記事一覧>
テーマ1 「境界の再設計」欲求
テーマ2 “生活の起伏づくり”と“五感マッサージ”

<コロナ禍 1800の暮らし テーマ3>
コロナ禍を通して新たに気づいたり、発見したこと

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