おふくろの味からふくろの味へ

「おふくろの味」から「ふくろの味」へ 食の価値観はどう変わった?  

2026.06.15

2026 6 月号

冷凍餃子は手抜きか、手間抜きか。ポテトサラダは手作りすべきか、お総菜でOKか。料理を取り分けると女子力が高いとされることに抵抗はありか、なしか。こうしたトピックスが世間でたびたび話題になったり、論争になったりするのは、一人ひとりが感じる食の価値観に対する当たり前が食い違うからでしょう。

そこで食の価値観に対する世の中の当たり前を測定すべく、15項目を提示して昔の価値観だと思うか? 今の価値観だと思うか? 支持するか? 支持しないか? を調査しました。(博報堂生活総合研究所 「食の価値観」調査 首都圏・阪神圏・名古屋圏、20~69歳男女、1,500人、2026年3月、インターネット調査)

早速、「昔」と「今」、「支持」と「不支持」、このふたつを掛け合わせた食の価値観4類型(なくしたい、みきわめたい、うけいれたい、のこしたい)を順にご紹介していきましょう。

変わる価値観:昔、おふくろの味。今、ふくろの味

それぞれの価値観について、古い昔の価値観だと思うか、新しい今の価値観だと思うか? を一対形式で質問したところ、昔の価値観の1位は「宴会や会食などで女性が料理を取り分けること」(80.1%)。食事の際に「取り分けてくれる?」なんて、つい女性に頼んでしまうと、5人中4人に「昔人間だなぁ」と思われるので気をつけてくださいね。

他にも昔の価値観で高かったのは、「手料理にこだわること」(76.9%)、「家族や恋人と出かける際に手作り弁当を持っていくこと」(74.1%)、「料理の手間を減らすことを手抜きだと思うこと」(70.1%)で、いずれも7割以上。また、今の価値観の1位には、「レトルトや冷食などを使って料理を作ること」(83.5%)が挙がりました。 かつての「おふくろの味」に象徴されるような手料理をがんばることや、料理の手間減らしを手抜きと思うことは多くの生活者にとって古い昔のことと思われています。そして、イマドキの当たり前は、レトルトや冷食といった「ふくろ」に包まれた調理済み食品を使って料理を作ることに変わってきているのです。

昔の価値観だし、支持もしない 「女性による料理の取り分け」

次は、支持するか、支持しないかを一対形式で質問した結果について。支持の1位は「料理の手間を減らして別のことをする時間を作ること」(81.5%)。次いで、「味付けにメニュー用調味料などを使うこと」(80.6%)、「作るのが面倒な料理をスーパーなどで買うこと」(78.7%)などが高水準。いずれも料理の手間減らしに関する項目です。

一方、不支持の1位は、「宴会や会食などで女性が料理を取り分けること」(70.5%)。これは昔の価値観の1位でもありました。つまり、生活者からは、昔の価値観だし、支持しないと認識されている、「なくしたい」価値観だということ。

このように、今と昔、支持と不支持をスコアの高いもの同士で分類した結果、以下の4類型となりました。順にご紹介しましょう。

“新しい「今」の食事”は「みきわめたい」

ひとつ目は、昔の価値観だし、支持しないという「なくしたい」価値観。先ほどご紹介した「宴会や会食などで女性が料理を取り分けること」と「料理の手間を減らすことを手抜きだと思うこと」も含まれます。冒頭でも触れた食にまつわるジェンダーの思い込みや手抜き論はもう「なくしたい」と考える生活者が多いようです。

おふくろの味からふくろの味へ

ふたつ目は、今の価値観だけど、支持しないという「みきわめたい」価値観。ここに属するのは「栄養食品やお菓子などで食事をすること」で不支持が52.9%。かろうじて過半数といったところで、割合的には支持(47.9%)と拮抗しています。新しい「今」の食事について、生活者はまだ判断しきれないのかもしれません。

料理の手間減らしを「うけいれたい」。でも、手料理も「のこしたい」

3つ目は、今の価値観だし、支持するという「うけいれたい」価値観。「料理の手間を減らして別のことをする時間を作ること」「味付けにメニュー用調味料などを使うこと」「作るのが面倒な料理をスーパーなどで買うこと」など、料理の手間減らしに関するものが目立ちます。

おふくろの味からふくろの味へ

4つ目は、昔の価値観だけど、支持するという「のこしたい」価値観。「誕生日や記念日に家族で食事をすること」「家族や恋人と出かける際に手作り弁当を持っていくこと」「手料理にこだわること」でした。

おふくろの味からふくろの味へ

ひとり暮らしや共働き、高齢者など料理を負担に感じそうな人たちも多い今。便利な調理済み食品やお総菜、お弁当なども溢れています。そんな社会変化も作用して、料理の手間減らしを「うけいれたい」のが今の当たり前になっているのでしょう。その一方で、手料理も「のこしたい」とも感じる背景には「料理は愛」という思いもありそうです。同じ調査の質問で「おいしい料理を作ることは食べる人への愛情表現だ」だと感じる人は73.5%で、約5年前(21年8月 73.3%)とほとんど変わらないですから。料理なんて合理化すればいい、と単純に割り切れないという、この結果、人間っぽくて個人的に好きですが……。

時代はどんどん進んで、価値観も変わっていきます。昔の常識は気づかぬうちに、今の非常識になっているかもしれません。また、自分の当たり前と世の中の当たり前が違っているかもしれません。今回は食の4類型をご紹介しましたが、このフレームは皆さんのお仕事や関心に関わる価値観を測るのにも役立つかもしれません。