「ある種」は伝染る?

「ある種」は伝染る? ビジネス口癖の実態に迫る

2026.08.17

2026 8 月号

動画コメント欄の指摘

だれか、この人が何回「ある種」って言ったか教えてくれないか。
 >>そういうのって気がついちゃうと、気になって話が入ってこなくなるよね(笑)

先日出演した動画に視聴者の方からこんなコメントを頂きました、研究員の酒井です。慌てて動画を見返してみたら、確かに言ってるんです。「これはある種の~~で」「ある種、~~ともいえます」……。だいたい2~3分に1回くらいの頻度。完全に口癖になっていました。以来、極力「ある種」と言わないよう気をつけています。

増えるビジネス口癖

そうしていると他人の口癖も気になってくるもので。YouTubeなどのビジネス系動画に登場する有識者には私と同様、「ある種」が口癖になっている方を結構お見掛けして勝手な親近感が湧きます。実際、「ある種」のGoogleトレンドにおける検索ボリュームは2年ほど前から右肩上がり。気になって検索する人が増えている、ということは、それだけ耳にする機会が増えた、巷に広まりつつある言い回しのようです。

「ある種」は伝染る?

他にも「メニューのほうお持ちしました」などの「~のほう」や、「なんか~~なんですけど」などの「なんか」という言い回しもよく聞きます。また、「逆に言うと、~~~もありますよね!」などと「逆に」を多用する人も。(でも実はたいして反対のこと言っていなかったりします。)老若男女、多くの人が働くようになった昨今では、様々な仕事上の言い回しが多用され、ビジネス口癖と化している人も増殖しているのではないでしょうか。

「それぞれの言い回しを口癖としてよく使う人が思い当たるか」を調査してみると、一番、「自分自身がそうだ」という回答が多かったのは、「なんか」で3割弱、特に20代では45.5%と半数に迫りました。「のほう」が口癖になっている人は店や施設のスタッフで見かける、という意見が突出して高く、「逆に」も自分自身というより周囲やメディア出演者で口癖になっている人を見かける、という意見が多いようです。私の口癖になっていた「ある種」はメディアで見かける、という意見が突出していました。

「ある種」は伝染る?

全部、妖怪の仕業なんじゃないか

「ある種」や「なんか」などの言い回しが口癖になっている人がいると気になってイライラしちゃう、という意見も聞かれます。ただ、本人に悪気がないのもわかっているわけで。いっそのこと全部、妖怪の仕業にしちゃうのはどうでしょう。
私も含め「ある種」を多用する人には、妖怪“ある衆”が取り憑いているのです。同様に「なんか」を多用する人には、妖怪“なんカッパ”が取り憑いているにちがいありません。

「~~のほうお持ちしました」などと「のほう」を多用させるのは妖怪“ノホゥ童子”、「逆に言うと!」と「逆に」を多用させるのはもちろん妖怪“逆にゅうどう”です。他にも妖怪はたくさんいます。「~~といったところで」などと「ところ」を乱発させる妖怪“トコロン”、「~とは思いました」と意見に「とは」を挟み込む“トハの君”……。全部そんな妖怪たちの仕業だと考えると、ちょっと楽しくなってきませんか。(ならないかもしれないけど。)

「ある種」は伝染る?

AIにも妖怪は取り憑くのか

視点を変えると、「無駄な口癖が入っている」ことはひとつの人間らしさでもあるかもしれません。最近はAIがナレーションしているコンテンツも増えてきました。AIの話しぶりには無駄な口癖など入りません。最近の大学の先生は学生のレポートに誤字を見つけると「あ、この生徒はAIに任せずちゃんと書いたんだな」とむしろ好感を抱くこともあるようですが、音声でも同じことは起こり得ます。口癖妖怪に取り憑かれた人の声を聴いて、「ちゃんと人間がしゃべっているんだな」と安心する日もそんなに遠くないかもしれません。あるいは、誤字や口癖のような揺らぎをも、AIはその内側に取り込もうとしているのでしょうか。

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