生活者インタビュー Interview

市川瑛子さん

ランサーズ株式会社
「新しい働き方LAB」代表

30代女性。慶大卒後、マッキンゼーアンドカンパニー入社。2015年、文部科学省のトビタテ!留学JAPANの運営事務局で新規事業担当。2017年、スタンフォード大学で経営学修士(MBA)、教育学修士(MA)取得。2018年ランサーズ株式会社入社。コミュニティ・教育サービス「新しい働き方LAB」を立ち上げ、フリーランスほか様々な働き方の普及活動を行っている。

フリーランス型の生き方や能力発揮は
これからの個人や社会にとって重要になる

私は、これからの時代に、フリーランスなどをはじめとする「個」を軸にした生き方や能力の発揮がとても大事になると思い、フリーランスや副業などの新しい働き方を実践している方たちに向けた教育、コミュニティづくりなどの支援をしています。

その背景には、「良い会社で正社員になる」という選択肢が必ずしも正解ではなくなってきたという社会的な変化があると思っています。ひとつの会社で命令に従っていても、偉くなれる保証はない。逆にA社で出世できなくても、B社やC社でなら活躍できる可能性はある。企業側も、大量採用して長期雇用をする力を失いつつあり、社員に副業を認めたり、スポット的な雇用を組み合わせたりせざるを得ない状況です。

そして今回のコロナ禍がそれを一層加速しています。逆に言えば、個の力を発揮できる場や可能性は広がっている。私は、働き手側が能力を発揮する場を選ぶ力を高めたいのです。

積極的な情報開示が
信頼づくりにつながる

フリーランスのような立場の人たちが信頼や仕事を得るためには、自分の情報を積極的に開示することが早道だと思います。例えば、交流イベントやオンラインサロンの場で、何も自分の情報を出していかない人と、積極的に出していく人とでは、親近感が違いますよね。より積極的に情報を出し、コミュニケーションを取っていく方が早いのではないでしょうか。ランサーズでも、プロフィールの内容が充実している方ほど、仕事の受注率が高い傾向にあります。

一方で、フリーランスの場合、一人で進める自立型の仕事も多いです。一人で仕事をしていると、誰とも話さずに一日が終わることもあります。新たなつながりをつくるためにも、意識して情報を発信するよう動いていくことが大切です。
人間関係を広げるためのコミュニティも重要です。今までならば会社に行けば自然とそこに職場のコミュニティがあったかもしれませんが、これからは、自らつくりに行くことが大切になると思います。

私自身は複数のSNSを使って情報発信をしています。その中で、例えば、自分自身の年間の活動を振り返る「アニュアルレポート」や、かつてスタンフォード大学時代に制作したレポートなども載せてきました。単にその日起こった出来事の投稿だけでなく、自分がこれまでやってきたことや考えてきたことを開示することで、全く知らない方からメッセージを頂いたり、読者やフォロワーの反応も高くなったりと、手応えも大きいです。

また私たち夫婦はプライベートで世界一周旅行をしたりもしています。行く先々で友人ができるのですが、その際の秘訣も、まずこちらから情報を開示することです。「こういう思いで世界一周をしているんです」と。そうすると食いついてくれる人がいて、どんどん仲良くなり、それをきっかけにインタビューをさせてもらったりもしています。まずはこちらから話す、情報を伝える。それが人間関係をつくるときに大きいと思っています。

肩書よりも内面
自分の「WHY」を伝えること

私自身は、例えば「大会社のAさん」という、会社の看板や肩書が重視される社会よりも、「Aさんは大会社でも働いていたし、それ以外にもこんなこと、あんなことをやっている人で……」というように、人が個人軸で語られる世界を広めていきたいです。

フリーランスでいえば、例えば「ライター」という肩書も大事だけれど、それ以上に「2拠点居住しています」とか「半農半X」で生きています、とか。職業よりも、その人がどういう人なのかがわかり、この人面白いね、この人と仕事したいね、という気持ちになる情報に価値がある。より温かい人間的なつながりをつくる方法として、そういう人間性がみえる情報提供はとてもいいと思います。

SNSでは私生活が見えすぎるという声もありますが、逆にそれがないと、人となりや考え方を知る機会もなかったりする。この人は怖そうだと思っていたけど面白そうな考え方をしているとか、子供の話をするとデレデレするのだな、とか(笑)。
プライベートなところが見えるからこそつながりを強化できるのです。

私自身について言えば、会ったことのない人を信頼するためのポイントは、その人の原体験や想いをきくことでしょうか。「なぜ今その会社にいるのか?」「なぜこの仕事をしているのか?」など、その人の「WHY」が見えて、なるほどなあと共感できると、信頼感が高まります。逆にそのあたりが見えてこないと、ただのビジネス上の関係に留まりがちかなと思います。こういう情報まで開示できる人の方が、信頼を築きやすいようにと思います。
私も様々な想いや「WHY」を語って共感を得た経験が多いです。先述のSNS投稿も、自分の深い部分も知ってもらえたらという意図で発信しています。

オンラインだけで信頼を築く時代
だからこそ情報開示が大事

私の所属する「新しい働き方LAB」はコミュニティマネージャーが約30名。北海道から沖縄、コロナ禍の前はタイのバンコクにまでいましたが、リアルの場で全員が一堂に会したことは一度もありません。オンラインで集まって信頼関係をつくっていくのが最初から当たり前でした。
オンラインだけの集まりでも、時に雑談をしたり、お互いの内面まで情報共有したりしながら、信頼をつくってきた経験があります。リアルで、直接対面しなければ、信頼関係はつくれないということはないはずだと思います。

ただ、これまでのオフラインで対面してのコミュニケーションでは、お互いの情報をことさらに出さなくても、「なんとなく信頼がおける」と判断したり、してもらえたりできていたのかもしれません。ですが、コロナ禍を経て、これからはオンラインでのコミュニケーションがさらに重要性を増していくはずです。オフラインの時よりも、お互いの情報を積極的に開示していくことはますます大事になってくると思います。

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